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城塞都市コンボ

 城塞都市『コンボ』。エルフたちが住まう国『イグドラシル』と隣接するその都市は、1年ほど前までは、エルフたち亜人族との戦争の拠点として活用された。

 戦争が終わり、エルフたちの主神であった樹神エルフィードが己の過ちに気付き、女神ウルザの軍門に下ったとの神託が人族及びエルフたちに伝えられて以降、『コンボ』は表面上は人族とエルフが交流する都市として知られるようになった。

 しかし『神々の聖戦(サンクトゥス)』について多少なりとも知っている者からすればこの都市は人族とエルフの交流拠点ではなく、女神ウルザ陣営がエルフたちを監視するための塔であり、管理するための檻なのは明白であった。

 誰しもが知っているのだ。女神ウルザが軍門に下った程度で敵対した者を許す筈など無いということを。


 樹神エルフィードの勇者のまとめ役であったハイエルフのオリーバは、現在城塞都市『コンボ』において罪人たちを閉じ込めておくための地下牢に投獄され尋問を受けていた。

 

「おい! どうなんだ!」

「……何がだね?」

「何度も言わせるな! お前たちの元主神の勇者がいる隠れ里の場所についてだ。さっさと言え!」

「私は知らないな。同志たちも私と同じように尋問しているのだろう? そちらに聞いてみてくれ。まあ、彼らも知らないだろうがね」

「だまれ!」


 エルフィードの勇者たちが全て改宗することで終戦した人族とエルフの戦争。しかしエルフィードの勇者が残っており、隠れ里で密かに生活をしているとの情報が入ってきたことで尋問を受けることとなったオリーバ。

 最初は彼のみが囚われていたが、彼が口を割らないため他の元勇者たちも1人を除き捕らえられ尋問を受けることとなった。

 しかし元勇者たちはオリーバと同様に1人として口を割らなかった。そのため優位に立っている筈の尋問官たちの方が焦っている様子であった。 


「情報は入っているんだ!」

「それを言ったのは勇者となって日が浅い…モギくんだろう? 彼はこことは違う別の世界からやって来た勇者だからね。我々エルフに幻想を抱いている節があった。隠れ里というのも妄想の類いなんじゃないかい?」

「そんな筈は無いだろう! もういい! 今日は終わりだ」

「ああそうかい。さようなら」


 こうして尋問官たちは今日も、オリーバの軽口に翻弄されるまま尋問を終了するのであった。


 尋問官が退出していった部屋に1人取り残されたオリーバは、先程までの表情とは異なり深刻そうな表情を浮かべる。

 都市に常駐されている尋問官程度であれば言葉巧みに追求をかわすことは出来る。しかし既に『ユグド』の存在がバレてから日数が経過してしまっている。そろそろ女神ウルザが痺れを切らして精神操作系のユニークスキルを持つ勇者を派遣してくる頃だろう。

 人がいる前では余裕そうに見せているオリーバであるが、内心はかなり焦燥していた。


「これはそろそろ、強引にでもここから脱出する必要が……誰ですか!?」


 そのためオリーバが今後の動き方について考えていると、背筋に悪寒が走るような感覚に襲われる。

 驚いたオリーバが振り向くと、そこには見知った顔の女性が立っていた。


「……レイア様!」

「ごめん。『孤独の呪い』だけ掛けさせて貰った。後で解呪する」

「いえ、突然で驚いただけです。むしろあの愚劣な神の監視から逃れられるのであれば、このまま呪いを掛けておいて欲しいくらいですよ」 


 悪寒の正体は、レイアがオリーバに話し掛ける前に掛けた『孤独の呪い』であった。

 本来、主神との繋がりを絶つこの呪いは、主神を敬愛する勇者から最も嫌われる呪いの1つである。しかし望まぬ改宗をさせられたオリーバにとってはこれはむしろ祝福である。


「それに関しては問題ない」

「問題ないですか? それはどういう。というよりも『ユグド』は! エルフィード様はどうなりましたか!?」

「……落ち着いて。それについても説明する。けどその前に受け入れて欲しい事がある」

「受け入れて欲しいですか?」

「うん。改宗」


 しかしそれ以上の祝福がオリーバに訪れようとしていた。女神ウルザの呪縛から完全に脱却することが出来る提案であった。


「え! ですが私を改宗するとなるとかなりのポイントが」

「ポイントに関しては大丈夫。今のシーラ様は裕福だから。囚われている他の勇者たちも改宗させられる」

「なんと! 何があったのですか!?」

「詳しい話は全員の改宗が終わってからするけど、うちの新しく入った子が……優秀なの。女神ウルザを手玉に取るくらいに」


 レイアから告げられた事実が信じられず絶句するオリーバ。自分たちが完敗した相手である女神ウルザを新人が翻弄するというのもそうだが、何よりレイアがその新人を語る表情の柔らかさに驚きを隠せない。

 

「なに?」

「い、いえ。レイア様がそこまで褒めるということは相当なのですね」

「うん。今回の救出作戦もその子が立ててくれたけど、作戦が全て上手くいけば、貴方たちやエルフィード様だけじゃなくて、エルフも女神ウルザの支配下から脱却できるから」

「ほ、本当ですか!?」

「うん。だから取り敢えず、改宗を受け入れて」

「は、はい! お願いします!」


 女神ウルザ勢力の強大さを知っている者からすれば到底信じられない戯言である。しかしその強大さを一番知っているレイアが放った言葉には信じさせてくれる力があった。

 そのためオリーバは喜んで改宗を受け入れるのであった。

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