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作戦始動

 隠れ里『ユグド』を爆発で吹き飛ばす許可は無事に降りた。

 エルフィードも元勇者の1人が情報を流し、『ユグド』の場所がバレてしまったという情報は寝耳に水だったようで大いに驚いていたが、それ以上に唐突に神友から爆破予告の許可を求められたことに戸惑っていた。

 とはいえエルフィードとしても領域よりもそこに残った者たちや、『ユグド』を存続させるために自ら犠牲になってくれた勇者たちの方が大切である事は明白。直ぐに動揺を鎮め許可を出してくれた。


 そうして作戦を始めるために一番大切な、当事者からの許可を取り付けた大河たちは、早速動き出す。

 いつ尋問中のエルフィードの元勇者たちから『ユグド』の場所がバレ、進攻を開始させられるか分からないためできる限りの迅速かつ効率的に動く必要がある。


「まずは元勇者たちを改宗させ人質を解放します。その説得役はレイアさんにお願いしてよろしいですか」

「うん。任せて」


 まず第一にやらなくてはならないのが、エルフィードにとっての人質である元勇者たちの解放である。これの問題は元勇者たちの生殺与奪がウルザに握られている点である。

 現在はエルフたちの信仰をエルフィードからウルザに移すために必要なため、殺害した後蘇生しないという手法は使われていないが、この作戦が動き出せばウルザもエルフたちの信仰を諦めてしまいかねない。そのため迅速に元勇者たちに接触しウルザからシーラに改宗をさせる必要がある。 

 改宗さえ済ませてしまえば、仮に殺害をされたとしても魂はシーラの元に還るため、蘇生させないというウルザの常套手段は使えない。

 そんな大役はレイアが担ってくれる。移動速度や囚われている勇者たちの元にたどり着けるのがレイアしかいないというのもそうだが、元勇者たちと初対面の大河が、今すぐ改宗をしようと囁いても相手にされないだろう。そのためこの役はレイアにしか出来ない。


「もし勇者たちを改宗する前に『ユグド』の場所がバレてしまったら、シーラ様に連絡をしてください。そうなった場合、改宗と同時並行でこっちの作戦も進めますので」

「分かった。ここから別行動なら、先に呪いだけ掛けておく。主神からの干渉を防ぐ『孤独の呪い』と他の呪いが解呪されそうになった場合、先にこれが解呪される『身代りの呪い』。あと……アレは?」

「……すみません。お願いします」

「うん。気を付けてね。じゃあ行ってくる」


 レイアは大河に幾つかの呪いを掛けた後、元勇者たちが囚われている場所に向かって出発していった。

 レイアが習得している『呪術師』は、一度に掛けておける呪いに制限がある。そのため大河に事前に複数の呪いを掛けておく行為は、敵地に乗り込むレイアの手札を減らす事に繋がるため避けたかったのだが、ここはレイアが譲らなかった。

 倒されてもシーラの元に戻れるという保険のある自分よりも、『不死の呪い』が無くなってしまえば終わりである大河の方が危険であると。


 そのため送り出した大河の表情は暗かった。それを慰めるようにシーラが声を掛けてくれる。


[大丈夫ですよ。レイアは強いですから]

「はい。ありがとうございます」

[そういえば、先程レイアと話していたアレとは何なのでしょうか]

「ああ。今回の作戦の肝である『ユグド』爆発に必要な呪いですよ。えーと確か…そうそう。『誘爆の呪い』です」

[『誘爆の呪い』!?] 


 シーラの素朴な疑問に対して大河は、聞いただけで酷さが分かる呪い名で返答したため、シーラはすっとんきょうな声を上げてしまうのであった。


 こうして大河考案の救出作戦『ユグド大爆破作戦』という、助けようとしているのか害を与えようとしているのか分からない作戦が始動するのであった。

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