神友を助けるために
大河の発言にまたかという表情を浮かべるレイア。それとは対照的に縋るような声でシーラは大河に問い掛ける。
[タイガさん。何か案があるのですか?]
「案といいますか…先日『自爆』戦法に焦ったウルザがこの森に勇者たちを向かわせると予想ができたように、今回も事前に『ユグド』に進攻するだろうと予想ができるので、やり方次第かなと」
いつ攻められるか分からない状況では罠を張っても不発に終わる事が多いだろう。しかし、『ユグド』の位置が判明すれば即座に進攻してくるだろうという予測が立てられれば話は別であると、大河は考えたのである。
しかし、その考えにレイアは苦言を呈する。
「タイガ、そんな簡単な問題じゃない」
「そうですか?」
「仮に一時的に勇者たちを退かせる事ができても意味は薄い。それに今回はエルフィード様の元勇者っていう人質もいる」
シーラの反応からも分かる通り、エルフィードとシーラは前々から交流があった。そしてなによりウルザの陰謀により勇者やポイントを奪われて以降も何かと気に掛けてくれていた数少ない神友の1人なのだ。レイアとしても、恩神の危機に何とかしたい気持ちはある。
しかし現実はそう簡単ではない。レイアや大河が手を貸せば『ユグド』に進攻してきた勇者を一時的に退ける事はできるかもしれない。しかしその後に起こるのは、女神ウルザの勇者たちによる本気の進攻と、元エルフィードの勇者たちへの粛清である。それを解決しない限りは安易な考えで首を突っ込む事案ではないのだ。
「なるほど」
「シーラ様には申し訳ないけど、今回の件は……」
「つまり、人質とウルザの勇者たちによる進攻を解決できるなら問題ないって事ですね」
「そんなこと! …できるの?」
しかし裏を返せば、それらの問題さえ何とかできるのであれば、レイアもシーラと同様、エルフィードたちの力になりたいと思っているのだ。
そのため、普通であれば正気を疑うような大河の安易な発言にも耳を傾けてしまう。
「既に事は動いていますし状況は最悪に近いので、全ての行動にリスクがある上、被害なしでってのは難しそうですが……レイアさん。エルフィード様の元勇者は何人いますか?」
「ウルザに奪われた勇者は7人、『ユグド』に2人」
「シーラ様、勇者7人、いや裏切り者は除いて6人を改宗させるにはどのくらいのポイントが必要でしょうか?」
[その人たちの強さによっても変動しますが、だいたい1万ポイントくらいでしょうか?]
「意外と多い。まあでも諸々を計算すれば…何とかなるかな?」
大河が思い付いている作戦はかなりリスクが高い。当然である。ほぼ詰みの状態である神を救おうという作戦にリスクが存在しない筈もない。
大河としても、ウルザに嫌がらせをするのであれば別の機会の方が良いだろうと内心思っていたりする。
しかし、目の前で縋るような目をしたシーラと、冷酷にエルフィードを見捨てようと頭では考えているのに、助けたいという内心が表に出てしまっているレイアを放っては置けない。
そのため嫌がらせ欲という口実で大河は必死に頭を巡らせ、できる限りのリスクが少ない方法を考える。
「シーラ様はエルフィード様と連絡を取ることは可能ですか?」
[は、はい! できますよ!]
「ありがとうございます……レイアさんなら尋問されているエルフィード様の元勇者たちと接触、出来ますよね?」
「問題ない。この情報も囚われている勇者の1人と接触して聞いたから」
「流石です……それなら後は」
大河は再度、シーラに向き直る。
「シーラ様。2点、確認させてください」
[は、はい! なんでしょうか?]
「1つはこの作戦を始めた場合、ここ『シイアの大森林』の領域を手放さなくてはならないかもしれません。それは大丈夫でしょうか?」
[はい。それくらいのリスクは覚悟の上です!]
「ではもう1点、エルフィード様に確認を取ってください。隠し里『ユグド』を俺の爆発で吹き飛ばして良いかどうか」
[え!]
自分の領域を犠牲にする覚悟はできていたが、神友にあなたの領域を爆発してもいいと訊ねる覚悟は出来ていなかったシーラは、大河の問い掛けに大いに戸惑うのであった。




