表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/39

樹神エルフィード

 領域の候補地を探すために出かけていたレイアは慌てた様子で戻って来る。

 そのため、大河たちは優れた候補地が見つからなかったのかと考えたが、そうでは無いようであった。


「領域自体は幾つか良さそうな場所が見つかりましたので、シーラ様に選んでいただければと」

[分かりました、後で選んでおきます。……では他に何か問題があったのですね?]

「……はい。候補地の選定と並行して情報収集も行っていたのですが、樹神エルフィード様の元勇者の一部が女神ウルザ側に隠れ里『ユグド』の存在をリークしたらしく」

[そんな!]


 レイアが語った内容はシーラを驚かせるには十分であった。

 一方横で話を聞いていた大河は首を傾げる。まだこの世界に来てから日が浅い大河からすれば、レイアの表情やシーラの反応から事態が急を要するものであること理解するのが精一杯であった。


「えーと、話の腰を折ってすいません。その隠れ里がリークされると何が問題なんですか?」

「ああ、ごめん。説明する。樹神エルフィード様は主に亜人族のエルフたちを中心に信仰を集めていた神様なの」

「エルフ……なるほど。ですが亜人族の主神って」

「そう。女神ウルザ。だいたい1年ほど前に樹神エルフィード様は女神ウルザに敗北して信仰を奪われたの」

 

 かつてエルフたちの主神であり、現在も生存するエルフたちの半数ほどの信仰は残っている樹神エルフィード。

 人族を信者とする主だった神々を制圧した女神ウルザが、更に勢力を拡大するため目を付けたのが、人族と関わりが深い亜人族たちであった。

 エルフィードの勇者たちは、執拗にウルザの勇者たちに追い回され徐々にポイントを奪われていく。エルフィードは同じく目を付けられたドワーフの主神である鉱神ドワールガなどと協力し抵抗したが、結果は惨敗。

 エルフィードに協力した神々は『神域』を維持できなくなるギリギリまでポイントを奪われた事で次々に降参していってしまった


「エルフィード様は最後まで抵抗した。でもそんな時、ウルザはエルフィード様たちの勇者に囁いた。改宗しエルフたちが自分に信仰するように尽力したらエルフィード様への攻撃を止めると」

「それで信仰を……」

「そう。エルフィード様の勇者たちは降伏し改宗を受け入れた。シーラ様の勇者たちと違って今も生かされているのは信仰を女神ウルザに移す作業を行っているから」

「なるほど。エルフィード様については理解しました。それで隠れ里というのは?」 


 女神ウルザが亜人族の主神となった経緯は分かった。ここからが本番である。


「女神ウルザのやり口は神々の間でも有名。エルフィード様やその勇者たちも当然、それを知っていた。信仰の移行が済めば殺された上で蘇生されない可能性が高い。そうなると信者も勇者も失ったエルフィード様は『神域』の維持どころか領域の維持すら儘ならなくなる。だから再起を図る場所として隠れ里『ユグド』を作り、まだウルザたちに知られていない勇者たちをそこに隠して育てていた」

「なるほど……そんな重要な情報を元勇者の人がウルザ側にバラしたと。マズイですね」


 エルフィード側の作戦は悪く無かった。ウルザの性格上、全面降伏したとしても最終的にシーラの勇者たちと同様のやり口で殺されてしまう可能性が高い。

 それならば一部の勇者たちだけでも隠しておくのは正解である。現にもしシーラにレイアがいなければ今頃、シーラは領域の維持さえできず野に放たれていただろうから、勇者が1人でも残っているというのは重要である。

 しかし残念なことに裏切り者が出てしまった事でその計画は窮地に陥っていた。


「リークしたのは、勇者になったばかりの子で『ユグド』についても存在を知ってるくらいだった。だからウルザ側もまだ『ユグド』の正確な位置は把握できていない。でもそれも時間の問題。既にエルフィード様の主だった勇者たちへの尋問が始まってる」

[フィー…レイア、なんとか助ける方法はないかしら?]

「それは……少し難しいです」


 まだ疑惑の段階ではある。しかしこの世界には嘘を見破るスキルや精神を操るスキルなどが存在する。疑惑が確信に変わるのは時間の問題だろう。

 そのためシーラの問い掛けにレイアは首を横に振る。


 しかし、一連の話を聞いていた大河は別の反応を示す。


「いや、レイアさん。これは…チャンスかもしれません」

「チャンス?」

「はい。ウルザへの嫌がらせのチャンスです」


 目の前に転がってきた絶好の嫌がらせチャンスに、大河の目がキラリと光るのであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ