神域と領域
それから何度か女神ウルザの勇者はやって来た。先日の3人組の惨敗で『自爆』について教えていないのは失敗であったと学んだのか、その次から来た勇者は大河の『自爆』をしっかりと警戒していた。
とはいえ、『自爆』の爆発に怯んだ所をレイアが奇襲する戦法は磐石であり、それらを前にして皆敗れていった。
ただ勇者が派遣されてくる度に徐々に『自爆』のペースを下げていくと、ウルザが勇者を派遣してくる頻度も徐々に下がっていった。
まさに大河が当初計画していた通りの展開となっていた。
「うーん、ある程度育った勇者を倒す事でウルザに損失を与えつつ、こちらはポイントを稼ぐ。もう少し『自爆』のペースを緩やかに下げれば、もっと搾り取れたかもしれませんね……失敗です」
[いえ、十分過ぎるほどです。それにタイガさんとレイアだからどうにかなっていますが、勇者複数人という戦力の派遣は本来絶望的な状況です]
「まあ確かに。冷静に考えればリスクをウルザに押し付けているだけで、毎回1人犠牲になってる計算ですからね…『自爆』の消費ポイントも合わせると2人か」
思っていたよりも簡単に勇者を返り討ちにできていたため、大河は欲を出してしまう。しかしよくよく考えてみれば余裕どころか大河は毎戦闘ごとに死んでいる。本来ならば支払うべき『自爆』と蘇生のポイントをウルザに負担させる形で勇者を討伐しているのだ。
そう思うとシーラの言う通り欲は出すべきではない。大河は反省する。
「少し調子に乗りすぎましたね。反省します」
[あ、いえ。ですがタイガさんの計画のお陰で大量のポイントを得られた事実ですから。実際、前までの状況であれば領域を増やそうなんて考えもしませんでしたから]
「そう言っていただけると嬉しいです! ……そう言えば今、レイアさんが新しい領域の候補地探しに行ってるんでしたっけ?」
[はい]
大河の『自爆』戦法、そして何度か来訪してくれた勇者から得られたポイント。その半分ほどは大河やレイアの強化に費やしてしまった。
しかしそれ以外のポイントの使い道はシーラの安全面の強化に費やす事に決まっていた。そして安全面の強化というのは、この『シイアの大森林』以外の場所にもシーラの領域を作る事であった。
仮に領域が増えれば、仮に痺れを切らしたウルザが勇者を総動員させて攻め込んできたとしても、シーラを逃がす事が可能となる。
「……でも、本当に安全なのはウルザとかがいるような『神域』なんですよね?」
[そうですね。この世界の土地に結界を張って作る領域と異なり、この世界と独立して存在する『神域』の方が安全ではありますね]
「それならそっちの方が良くありませんか?」
[領域にも利点はあります。こうやってタイガさんとお話できたりするのもそうです]
シーラの安全の事だけを考えると、死亡した勇者など限られた存在以外立ち入る事の出来ない『神域』がベストである。
神製の結界を張り、神から許可された者以外は存在を感知することも出来ない領域であるが、同じく神製の道具やユニークスキルなどで突破されないとも限らない。
ただ主神が地上に降りているという状況にはメリットも存在する。
単純にコストが少ないという点もあるが、本来ポイントを消費して行う神託は授け放題であったり、他の神の勇者である大河に簡単にスキルを授けられたりなど、フットワークの軽さも魅力である。
シーラの性格的に自身がリスクを負うことで勇者たちがメリットを享受できるのであればそちらを選択するのは当然の事である。
「そうですか……それにしても『神域』ってこの世界とは独立して存在するんですね」
[はい。神々の中には、極力他者を自身の領域に入れたくないという者もいますから。その要望にそった領域となっていますね]
「なるほど…つまり俺がウルザを爆発に巻き込むチャンスは、『自爆』を授けられてから捨てられるまでの間だったって事ですね……いや、惜しいことをしました」
[『神域』内で『自爆』……やっていたらこうして私たちが会うことも無かったので、やらなくて良かったです]
もし『神域』の仕様が異なっていれば、ポイントを消費するという間接的な嫌がらせだけではなく、直接的な嫌がらせも可能だったかもしれないと、大河は残念に思うのであった。




