クランリーダーとして出来ること
僕はまったく気づいていなかったが、ユノは少なくとも気づいたうえで、慎重になっていたのだろう。
いろいろな可能性を考えて。
ユノは、もともと直感で動くタイプだ。
それなのに。
だから、リサは怒ったのだ。
僕はこのところ、ふと思う。
ユノは、僕たちを守らなければならないと思うあまり、自由に動けなくなっていやしないだろうか、と。
リサと違って、同格で放っておける存在じゃない僕らは、
なんだかユノの足かせになっているような、そんな気がしていた。
だから――。
「ぼくは、屑星の願いのクランリーダーってことで、いいんだよね?」
我ながら締まらない言い出し方だったけど、
カイル、リシア、そしてユノに向かって尋ねる。
みんな、どうした急に、という顔をしながらも頷いた。
それを見て、僕は続ける。
「クランリーダーとして、今後の方針を決めたいんだ」
一度、言葉を区切る。
「リサが言うなら、僕は紅玉楼を攻めるべきだと思う。
落とすべきは、マダム・シュランゲ」
自分で言っていて、背中が少しむずがゆかった。
僕なんかがその役で良いのか、と。
「やり方は、ユノに任せたい。
リシアは、そのサポートと補助をお願い
気がついたことは逐次……僕で構わないから、言ってほしい」
守られるだけじゃ、だめだ。
やり方は間違っているかもしれない。
でも、それはきっと、みんなが補ってくれる。
そう信じたい。
「カイル。僕を助けてほしい」
視線を向ける。
「カイルの知識と力は、いつも役に立つから」
責任の一端を、少なくとも僕は負わなければいけない。
ユノに任せて、それで終わり、じゃだめなんだ。
僕には力がない。
知識もない。
知恵も、正直あるとは言えない。
あるのは、法王さまから、リシアから任された肩書だけ。
それすら重すぎると、僕は一度、拒否した。
それでも。
仲間の責任すら取らないなら、本当に僕は、勇者どころか何物にもなれない……。
「エリオくん」
少しだけ、声を柔らかくする。
「君は連れていけない。
リサの大切な弟を、雇い主を、危険にさらすわけにはいかないから。
カイルを護衛につける。
吉報を、持ってきてほしい」
一つ一つ、言葉にしていく。
分かってくれるだろう。
理解してくれるだろう。
彼ならこうする。
彼女なら信頼できる。
そうやって投げるだけじゃだめだ。
言葉にすることで、僕が責任を負うのだ。
僕なんかの指示でも、彼らは信じて動いてくれる。
だからこそ――。
「それで……ユノ、リシア。どうしよう?!」
僕は、どこまでも残念だった。
***
「ぷっ!……ははははっ!」
ユノが腹を抱えて笑った。
いつぶりだろう。そういえば、初めて会ったときも、こんなふうに笑っていた気がする。
「クランリーダーとは、責任を負うべき立場であると、リシアは確かに理解しております。
ですが、ユウ一人が、つらい立場になることは――」
リシアが言い切る前に、ユノがその背中を、バチリと叩いた。
「男が啖呵きってんだ。横槍入れんな、魔女!」
ユノは、心底愉快そうに笑って「最後カッコ悪いけどな」ともう一度笑ったあと。
「正面突破だな」
と、言い切った。
「オイレのじーさんが言ってただろ?
俺に守られてると思うなって。
逆に言やぁ、あのじーさんの子飼いどもが、後ろ守ってるってことだろ?」
「なら、俺らは好きにさせてもらおう」
なんだか楽しそうなユノに、僕とカイルは、なんだかワクワクして顔を見合わせた。
「ユウさん。エリオくんのことは大丈夫。
絶対に守るから」
カイルは、迷いなく言った。
置いていくわけじゃない。
この数日、カイルはエリオくんと、とてもいい関係を築いてくれていた。
それは、よく考えなくても、すごいことだ。
なのに、どうしても見落としがちになる。
エリオくんが不用意に紅玉楼に近づかなかったのも、
危ないことをしなかったのも、すべて、カイルがいてくれたからだ。
みんな、足りない部分があって、
それを、それぞれが補っている。
繋がりや信頼。
友人や、仲間。
悪い言い方をすれば、利用なのかもしれない。
そのとき、ふと、オイレさんの言葉を思い出した。
――利用されるのは、悪くない。
――持ちつ持たれつ。結構じゃないか。
――だがな、敬意を払え。
彼は、確かに、そう言っていた。
……まさに、そのとおりだ。
さあ、紅玉楼の攻略に取り掛かろう。
尊敬に足る駒は沢山ある。




