扇情的な世界
案内役なのだろうか、執事のような服を着た男に促されて、僕たちは店内に足を踏み入れる。
どこか甘い香の香りが漂い、席に座り酒と、そして、麻薬の類なのだろうか? タバコのようなものを楽しむ人たちもいる。
天蓋で区切られた席などもあり、シルエットだけで中はよく分からないが、僕はなるべく見ないようにしていた、目の毒だ。
リシアとユノは顔色一つ変えていないけど、なんだろう、あまり見せたくない光景だった。
「この店は初めてで?」
男が聞いて、僕は頷いた。
男は簡単に店のシステムを教えてくれた。
店内は基本的に自由恋愛の場であり、店員、客問わず、誰とどのように恋に落ちても、それがいかなる形でも自由。
ラウンジの周りには個室などがあり、ご自由にどうぞと。
宿泊するなら上に部屋があり、泊まることも可能。
二階には大小さまざまな浴場と蒸し風呂があり、それぞれの風呂にはルールがあるので、気になるようならメイド服の女の人に聞くようにと。
知らずに足を踏み入れて何かあっても、こちらでは責任は負いかねますとのことだった。
地下にはVIP専用の施設があるらしく、この楼の女主人、マダム・シュランゲに気に入られると招待されるかもしれません、と男は最後に言った。
僕は刺激が強すぎる空間に、助けを求めるようにリシアを見た。
リシアは察してくれて、
「旦那様は高貴な御方です、このようなところでなく、別室でゆっくりしたいと仰っています」
と男に告げて、何かを握らせる。
男は手の中のものを確認すると、
「こちらにどうぞ」
と、別室に僕たちを通した。
大きなソファのような、ベッドのようなものがある別室は、どこかの宮殿の中のようだった。
「おくつろぎ下さい」
男が部屋を出ていって、僕はようやく息を吐いた。
もう、なんというか、別世界すぎて、息を吸うのも息苦しかった。
「お疲れさまです」
リシアが言って、水を差し出してくれる。
僕はそれを一気に飲み干した。
「ありがとう、二人ともよく平気だね」
苦笑いを浮かべ、僕が言う。
リシアは、まあ、予想通りだけど。
「平気じゃねーよ、鼻がひん曲がりそうだ」
ユノは疲れた様子でベッドに腰を下ろすと、足を組む。
大きく割れたスリットから、普段なら細身のズボンに隠れているユノの生足が見えて。
僕は先ほどまでの光景もあって、慌てて目をそらす。
「お前、どんだけ初心なんだよ」
少し呆れたようにユノが言って、
「ユウは純真な方なのです、ユノア様と違って」
と、リシアがつけ足した。
***
僕がよく知らないだけで、楼自体は他と変わらず、普通のものだとユノは言った。
この街に一人で来ていた時に、何軒か怪しげな店をまわったらしい。
オイレさんの言うように、この店は優良店で、客同士の揉め事もなさそうで、何よりも清潔で、ルールがキッチリしている。
焚かれている香も普通のもので、ひどい店だと依存性のある薬を焚いている事もあったそうだ。
客が吸う分には自己責任で、少なくとも、この楼にそのような意図は見受けられなかった。




