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乙女なら、拳で語れ【完】  作者: あむあむ
第二章 少女は少女と戦った。
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第五話

「ぬぉぉぉぉぉッ!!!」


 崩れた高層ビルに囲まれた足場の悪い道。

 狭くて窮屈なところを私は全力で走っていた。

 上を見ながら。


「晴海! どうだ!?」


 後方へ視線を移すと、同じようにJKも全力疾走。

 だが、私の方がスピードはやや早く距離は広がるばかり。 


「駄目! 見失わないようにするのが精いっぱい!」

「くっそ……これならどうだ!!」


 右手に持った拳銃『ジャックポット』を上空へ向けると発砲。

 弾丸はビルの隙間を縫うように飛び交う影を追いかけるようにに飛んでいく。

 これで停まってくれればいいのだが……やっぱりダメみたいだ。

 影は空中で体を捻ると、たやすく弾丸を蹴り飛ばし弾く。


「チィッ! もう少し近づかないと無理か……」

「JK、もっと速く走れないの!?」

「お前のと違って、こっちは身体強化ほとんどねぇんだよ!! 仕方ない、なら一気に──」

「あぁ! ハードボイルドは駄目だって!!」

「じゃあどうしろって!!」

「……うう~ん」


 影の正体は、『5』のアクセ・アーマーの所有者。

 第七区にて空を駆ける泥棒が現れたとの噂を聞きつけ、現場に急行し発見した。

 戦闘になるかと思ったのだが、奴は戦う素振りすら見せず逃亡。

 現在は超本気で追いかけているところだ。

 アクセの能力自体は不明だが、明らかなのは脚力がめっちゃ強くなること。

 くっそ速いんだ。

 私も『これ』を発動していなかったら、肉眼で追うことはできないだろう。


「難しいなぁ……ねぇ、どうすればいいと思う?」


 自身の両腕に問いかけると、軽い口調の台詞が返ってくる。


「もっと熱を寄越せよ。そうすりゃぁあんなウサギ、軽く狩ってやる」

「え~でもこれ以上あげちゃうと、私凍傷になっちゃうよ」

「知ったこっちゃねぇ。それに、あのビッチがのろまなのが悪いんだ」

「だれがビッチだってコラぁ!! 晴海、そいつ黙らせろ!」

「HAHAHAHAHA!! ハイヒールでも履いてんのか? 悔しかったら追いついてみろよ!」

「ちょっとハチ! 私のJKを煽らないで!」

「誰がハチだ。俺様の名前は『アハト・レックス』だっつってんだろ!」


 口をパカパカと動かし、視線を主人に向ける恐竜型ガントレット。

 そう、私は今8のアクセ・アーマー『ハチ』を自身の両腕に装着している。

 あの戦いの後、適性があると分かり護身用としてJKから貰ったのだ。

 だけど……なんか私が使うとあれだ。

 人格が芽生えちゃって、しゃべるんだ。何故かは知らないけど、めっちゃ口が動く。

 JKも、これに関しての理由はわかんないって言ってた。

 まぁ、仲間が増える事はいいことだ。


「むむむ……熱かぁ。JK、後どのくらい維持できそう?」

「私はほとんど撃ってないから余裕だが、いかんせん距離を縮めない事には」


 このまま走り続けても、じり貧になるだけだろう。

 標的のアクセ持続時間はわからないが、私たちより短い保証が無い。

 それに、そろそろしんどくなってきた。

 ハチの効果、超身体強化を維持するのに相当な熱を使用している。

 真夏日の筈なのに、体中には鳥肌が……うぅ、寒い。

 これは、彼の提案を受け入れるしかないだろう。


「仕方ない。ハチ、どのくらい欲しい!?」

「たらふく寄越せ」

「……仕方ない! 私の体温で、ホームパーティを開かせてあげる……行くよッ!!」

「ノッてこうぜ! GYAAAAAAッ!!」


 咆哮を共に、深紅の瞳が発光し体温がグッと下がるのを感じた。

 その変わり、全身には今まで以上の力が溢れだす。

 私は、標的がビルとビルの間を飛んでいるタイミングで地面を全力で蹴った。


「お、りゃぁぁああ!!!」


 大きなクレーターができる程強化された脚力は想像を絶するスピードで跳躍させる。

 空中ならば、逃げ場はないだろう。

 そこを捕まえて動きを封じ、JKが止め!

 完璧ぺき子ちゃんな作戦だ……流石は私、容姿もよければ頭もいい。

 距離、30メートル……20メートル……あと、ちょっと!

 右手を伸ばし、服を掴もうとした。


「捕まえ────ッんな!?」


 しかし、その手は空振りに終わり標的との距離は離れていく。

 なんと、奴は空中の何もないところを踏み更に飛んだのだ。二段ジャンプというやつだ。

 一方私は、勢いを失い地面に向かって真っ逆さまに落ちている。くそう。


「ちょっとハチ! ダメじゃん! 全然ダメじゃん!」

「あぁ~そういえば、5の奴は『なんでも蹴れる』能力だったなぁ……」

「先に言ってよ! というか、そんな大事な事忘れないでしょ、普通!」

「何十年前のクラスメイトの特技をお前は覚えてられんのか!?」

「あぁ~……ちょっと、自信無いわ」

「だろ?」


 妙に説得力のある言葉に納得させられてしまった。

 ……って、そんな事言ってる場合じゃない!


「死んじゃうよ!? 地面が、地面がぁぁぁ!」

「落ちつけ。着地分は熱、残してあるからな」

「ホント!? 口調に寄らず、やさしー!」


 けどこのままでは、結局逃げられてしまう。

 一体どうすれば……と、頭を悩ませていたその時。


「晴海ーッ!!!」


 落下地点まで追いついたJKの叫び声が耳を刺した。

 彼女の方に視線を向けると、そこには長方形状の長いコンクリートがある。

 なるほど、そういうことか。


「おっけ! 行くよ、JK!!」

「あぁ、どんと来い!」


 全てを理解した私は、腕をグルグルと回しながら最後の熱を拳に込める。

 そして、落下の勢いを利用して必殺技を放った。


「必殺ッぐるぐるキャノンッ!!」


 コンクリートを隅っこ目掛け、思いっきり拳を叩きつける。

 ガゴンッという爆発音と共に、シーソーのように片方だけ跳ねあがる。

 JKは私が殴った位置とは反対の隅に立っており、跳ねた勢いを利用して高速でジャンプした。

 私のパワー+テコの原理+JKの跳躍力。

 三つの力が一つになれば、少女の力は100万パワーだ。


「うぉぉぉぉッ!!」


 標的と肉薄していくJK。

 奴も接近する美少女に気が付き、更に宙を蹴り上に上に上昇していく。

 けど、もう遅い。 


「へへ、ごきげんよう。初めましてだな、うさぎちゃん」

「な、何だと!?」


 逃げようとする足を掴み、グッと引っ張り顔を合わせるとまずは挨拶。

 うろたえる隙も与えず腹部に『キングランページ』をくっつけた。


「ま、待て! わかった、降参だ! この靴はお前たちにやる!」


 降伏を意を示す5使いの男。しかし、JKは引き金から指を離す気はないようだ。


「残念だが、憂さ晴らしには付き合ってもらうぜ」


 そう言ってからの零距離射撃。

 爆裂音が三度、後荒廃した街に響き渡り男の体は大きく曲がった。勝負あり。

 JKは意識が無くなった男を抱え、ビルの屋上へ着地したようだ。


「……ねぇ、ハチ」

「なんだ、ナルシスト」

「最後にJKが言った憂さ晴らしって……君のせいなんじゃない?」

「……っと、熱量が限界だ。俺は戻るぞ」

「あ、逃げた」


 ハチは光の粒子になり、ブレスレット状になると私の手首にくっついた。

 ともあれ、これで万事解決。5のアクセ・アーマー、ゲットだぜ。

 早くJKと喜びを分かち合いたい……っあれ?

 目の前がグルグルする。景色が歪んで見える。

 体が動かないし……視界が少しずつ……くらく……なって────。


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