第十七話
「おぉ、いいじゃねーか。ソウゾウ力がグイグイ来てるぜ」
「ありがとう……ハチ。本当に感謝してる」
「……これで少しは、逃げたことへの懺悔になったかな」
少し、女性っぽいほうへ声色が寄った。
その声には後悔が混ざっているように感じる。
「その性格だと純さんが理由も無しに逃げるなんて考えにくいけど……どうしちゃったんだろね?」
「俺様も美少女だぞ? 愛した男と幸せになりたかったんだよ」
「ぅえ!? それが理由!?」
「……恥ずかしながら、な。キルシュヴァオムって名前も、その男から取ってるくらいには女の子なんだ、私……」
「……幸せになってくれてたらいいね」
「もう生きちゃいないだろうがな……けど、本体はしっかりとやる事はやって生涯を終えたみたいだぜ?」
「……? どうしてわかるの?」
「ひ・み・つ、だ。……それより、いつもの調子が戻ってきたじゃないか」
「うん、もう大丈夫! 元気バリバリのバリ子ちゃん」
「よし、なら愛する人を取り戻してこい……『命短し 恋せよ美少女』、真っ直ぐ、全力で打つかってこい!!」
「応ッッ!!!」
私の雄叫びと同時に、ハチは光り輝く粒子となった。
全身に纏わりつき、再び龍のような鎧の形状へと姿を変える。
もう迷わない。
JKも、クロちゃんも、ラブちゃんも……そして、お義父さんも。
みんな、みんなを幸せにする。
「JK、私を見ろ!!!!」
上空で交差する光に対し叫ぶも返事が無い。
やっぱり彼女は照れ屋さんのようだ。
だからと言って、おめおめ引き下がるような晴海ちゃんではないぞ。
見てくれないなら、見てもらえるようにするだけだ。
ソウゾウ力を全開にし、足に集中させる。
そして、抉るように地面を蹴り飛ばし光に向かって超加速で接近した。
「ッ……ぁぁあああ゛ッ!!」
二人の間に割って入り、クロちゃんに向かって放たれた弾丸を左手の甲で弾き飛ばしJKと空中で対峙する。
さっきの弾……私の頭を撃った時よりも、威力があがっているように感じた。
つまり少しずつ、彼女のJKとしての意識は薄れていっているのか?
「は、晴海ちゃん……待ちくたびれたわよ」
「クロちゃん、お待たせ! ここからは、私の番ね!」
「……その様子だと、見つけたみたいね。自分の答え」
頷き答えると、ゆっくり地上へと降り膝をつく。そしてそのまま、眠るように倒れこんだ。
分かっている。私がウジウジしてる間、こんな強い相手と互角に渡り合ってたんだ。それも、ラブちゃんとの戦闘後直ぐに。
ダメージは相当残っている筈だ。だから、後はゆっくり休んで欲しい。
「ありがとう、クロちゃん。愛してるよ」
私はお礼の言葉を述べた後、再びJKの方を向き叫ぶ。
「JK! 私の嫁なら、記憶くらい元に戻せるだろ!!」
「Delete」
「────ッぅ!? それしか言えないのか、この単細胞!!」
まるで耳に入っちゃいない様子で、ガンガンっと二発の弾丸を飛ばしてきた。
空中で回転し、それを躱す。が、正面を向くと彼女は目と鼻の先まで接近してきていた。速いッ。
「ッ、ぐぉ!?」
「……」
下から顎に向けて放たれるサマーソルトキック。前に翼を羽ばたかせ、体を後ろにやると同時にJKを風圧で少し後退させた。
だが、つま先はおでこを掠め、めちゃくちゃ痛い。私のおでこは呪われていたのだ。
「話を聞けッ、この超絶美少女可愛い私の嫁!!」
躱し仰け反った体勢を利用し、その場で後ろに一回転。斜め下から勢いをつけた右回し蹴りを脇腹に向け振り抜く。
ガッ。
しかし、いとも容易く左腕で受け止められた。更には、膝を掴まれ回転。グルグルグルグル。
竜巻が起こりそうな、いや起こる程強烈なトルネードスローだ。
「ぬぁぁあぅぅぁぁうあうあぁぁ!」
「Delete」
「ッ────なんのぉ! これしきじゃぁ!」
投げ飛ばされ、壁に激突ギリギリで踏ん張りを効かせ停止。
「あぁ、もう! これじゃあ埒があかない!」
(しかし、こっちの出力も限界だぜ?)
「ならさっさとするしかないね」
(なにを?)
「あれだよ、あれ」
「Delete」
「あ、っぶねぇ!!!」
ちくしょう。雑談をする暇もありゃしない。美少女はお喋り大好きだってのに。
上下右右左上下斜右ぃ! 怒涛の連撃が襲いかかった。
「ッ、あ、い、あ、う!」
「Delete、Delete、Delete」
クッソ、きっツゥ。一撃が重すぎる。
拳は受けて、蹴りも受けて、銃弾は躱す! ほっほっはッ!
「はーッはっはぁー、どうした桜 晴海ぃ!! 威勢良く出てきた割には、防戦一方じゃないか!」
お義父さんの声が耳に響く。うるせぇ、こっちだって必死なんだよ。
「儂の愛を否定したいか? 答えが出たか? だが、これが現実だ。貴様は間違っている……浅く、狭い愛だ。世界を愛し、彼女を愛した儂の愛の方が上……故に、Jokerには勝てない」
「そうかもしれない!!」
「……なに? 否定しないのか?」
「あぁ、正直凄いよ、お義父さんは!!」
「認めたか、自身の愚かさを。儂の愛の深さを!」
あぁ、凄い。凄すぎる。
たった一人の女性の為に、人間を捨て世界を変えるだなんて。
しろ、と言われてできることではないし、常識を遥かに凌駕している。
「貴方の凄味は認める……けれど、私の信じる愛と、お義父さんが唱える愛は別物だッ」
「ほざけ! 根拠の無い言葉など、最早聞く気にならんわ!! Joker!!」
「Delete」
「ッ────ぐぉ!?」
JKの攻撃の威力が一段階上がった。速さも、そして狙ってくる箇所も急所に近づいてくる。
つまり、クロちゃんの言っていた「覚醒」に近付いているということ。
「JK、待ってて……すぐに貴女が戦わなくても済むようにしてあげるから!!」
「馬鹿め! 力の差は歴然、たかが人間が唯一愛した女性達に敵うわけがなかろうて」
時間が経つにつれ、彼女に押されている。
私はアクセで繋がっているギリギリの命。
二つ同時解放を常時行なっている為、いつも以上に体が悲鳴を上げている。
「たかが人間……」
けどね。諦めるわけにはいかない。
私はハチの使い手。
川上 純さんが一番最初に作って、自分の心を埋めたアクセ・アーマー。
そこに込められた願い……『未来をソウゾウする力』。
「残念だったな……」
クロちゃんは言った。
私の思いは、彼女の中で生きていると。
ハチは言った。
愛とは繋がり、だと。
「私はぁ!! 超超超超超超馬鹿で! 天真爛漫!! 猪突猛進のォ!! 美少女大好きな美少女なんだァ!!」
「それをただの人間と言うのだ!!」
「だったら見せてやるッ! ただの人間が、お義父さんの愛の結晶である唯一愛したい女性達を、嫁に……姉に迎えるところをなぁ!!」
「精神汚染されたシリーズは、貴様を倒した後じっくりと修正してやる!」
「無駄だ、お義父さんの愛には足りないものがある!!」
「そんなもの、存在せんわ!」
「ならば、とくとご覧あれ!! JKぇぇ!!」
私の答え。全力でぶつけてやる。
ソウゾウ力を沸騰させ、残りの力を防御力に全振り。生命維持に当てていたSweet Queenも使って堅く、硬くする。
息が苦しい。死に近付いている感覚がする。
けど、私は桜家の人間。
『命短し恋せよ美少女 あかき唇あせぬ間に 熱き血潮の冷えぬ間に』
今、この瞬間の恋に、愛に、全てを掛ける女だ。
「Delete」
「きっ、くッ、かぁ!!!」
「ッ!?」
脇腹に左脚がめり込む────が、効かん!
(ご主人!? それは不味いぜ!)
「黙ってて! オラァ、こいよオラァ!」
「……Delete」
「げふぅッ、ま、だ、ま、だぁ!」
銃の底がコメカミに。右足が鳩尾に。銃弾が額に。
だが、効かない。痛いけど、効いてない。
「Delete……Delete、Delete」
「ぅ、ぐぉあ!」
(使いすぎだ! 温存しねぇと、Qがッ! 聞いてんのか!? おぃ、ご主人!!)
前進、前進、前進前進前進。
JKの猛攻を受けながらも引くことなく、その場に留まった。
そして遂に────
「De……Deleteッ」
一瞬だけ彼女の瞳に昔の色が戻る。この時を待っていた。迎えにいけば、絶対に来てくれると信じていたぞ。
「隙ありじゃぁ!!」
「ッぁ!?」
全身を使いタックル。抱きしめたまま地面に押し付ける。
暴れるJKの抑えつけ、刹那の隙を突く。貰ったぜ。
「これが、私の、愛の答えだぁ!!」
(な、えッ!? ご主人様、それが!?)
「ば、馬鹿な!? 貴様、なんのつもりじゃ!?」
「更にぃ!!」
(んなぁぁぁぁぁ!?)
「んなぁぁぁぁぁ!?」
私は彼女に────




