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乙女なら、拳で語れ【完】  作者: あむあむ
第二章 少女は少女と戦った。
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第十話

 JK……JK、はぁ! JK、くんかくんか……あぁ、駄目だよ!

 ……え? きょ、今日はそこまでしちゃうの?

 嫌かって? ……ううん、うれしい。や、ちょっと、大胆!


「あ……GAGAGAGAGAGA!!」

「ついてきてる? ハチ」

「だ、大丈夫だ。早朝にハンバーガー食ってるみたいだぜ……」

「まだまだこれからだよ」

「な……え、ちょっとまて、そっちは生殖行動をする方じゃないだろ!?」


 なるほど。ハチにも私の脳内AVが再生されているわけか。


「絶対JKはこっち弱いから」

「気でもふれたか!?」

「だって強気女子だし。更に……これはどうだ!!!」


 続いてQAの登場だ。

 彼女はもちろん全裸。褐色娘なのだから、当然だろう。

 さぁ、いままで痛めつけられたお返し……たっぷりとしてあげる。

 ははは、よがり狂っちゃって!

 さっきまでの強気な態度はどうしたの? ほら、これはどうかしら。


「……なぜ、QAには首輪をつけている……?」

「絶対に夜はドMだよ。彼女」

「……もう突っ込むのはよそう」

「違う! これから突っ込むところなの!!」

「油をラッパ飲みしているのか、俺様は」

「J、JK!? ち、違うの! これはQAが……え、私の物だって身体に刻み込んでやる……? そ、そんな……ぁぁぁあ゛!」

「完全にトリップしてやがるな。だが、このソウゾウ力、想像以上に強い。これなら、創造できる……ご主人!」

「い……いたいよJK……だけど、ちょっと気持ちいい……かも」

「あぁ、もう知らん。全部丸ごと頂くぜ」


 ガブッ!


「ッえ!?」


 可愛い音が聞こえた瞬間、脳内にあったスケベシーンは一気に消えた。

 真っ暗になったかと思えば、次は真っ白な空間へと放りだされる。

 頭からは一切の邪念が排除され、綺麗さっぱり透明な思考に。

 その中で光り輝く紅点が一つ、私に囁く。


『命短し、恋せよ美少女』


 間違いない。私は確信した。

 この光は応援してくれている。JKを救えと、言っている。

 妄想も、全部全部飲み込んで、好きって感情だ。

 好きって、愛してるってことだ。

 今は独りよがりかもしれない……けど、必ず好き同士になってみせる。

 乙女は愛し、愛され、愛し合う。そういう存在なんだ。 

 心は一片の迷いも消え去り、覚悟を決めた時──視界は戦場へと戻る。


「……これは」


 気が付けば、ハチの形状はガントレットではなくなっていた。

 腕を伝い、鎧のように広がっている。

 お尻には長く太い尻尾、そして背中には翼が……って、あれ?


「これじゃあ恐竜じゃなくてドラゴンじゃん」

(細かいことは気にするな)

「うぉ!? こいつ、直接脳内に……一心同体ってやつだね!」

(あぁ、てめぇが望んだ、てめぇの姿さ。仲間外れのシンデレラが、ドレスを手に入れたんだ。とっとと行こうぜ)

「おっけー! ……Lets Party!!!」


 決め台詞を言い、全力で地面を蹴飛ばすと自分でも追いつけないほど高速で二人の間に急接近した。

 向上した動体視力でも追えないくらいのスピードは、この力の強さと扱いにくさの証明でもある。

 ピーキーな装備か。カッコイイじゃないか。


「JK!!」


 私は叫んだ。彼女の名を。

 だが、振り向く様子はなく殴り合いに夢中みたいだ。

 晴海ちゃん以外に夢中になるなんて許せない。

 直ぐに振り向かせてあげるから……ねッ!!


「グッ、ガァ!!」

「ちょっと待ったぁッ!!」

「……なに?」


 間に割って入り、JKに向かって振り抜かれた渾身の右ストレートを右手で受け止める。

 刹那、間髪入れずに左蹴が襲いかかってきた。


「ふん、ならぁ!!」

「ガ……ギぃ!?」


 左腕で払い除けると、QAの体勢が崩れる。

 彼女の白い髪は自身の出血で所々に赤点ができていた。

 腕、脚の血管は浮き上がり紫色に変色している。

 過剰な強化の反動が目に見えてわかった。

 やっぱりこのままだと自滅しちゃう……はやく動きを止めないと!


「邪魔をするな」


 背後から嫁の恐ろしいほど低い声が耳に入る。

 カチャっと銃を構える音。同時に容赦の無い発砲音。


「ッぁ! そっちこそぉぉお!!」


 私は尻尾を地面に叩き付け、急速上昇。

 弾は甲懸に当たり弾け飛ぶ。身を反転させながら、JKの背後まで飛ぶと両脇を両腕で抱えた。


「ごめん、また後で!」

「何をする。離せ」

「おんどりゃァァァァあ!!!」

「────ッァ!?」


 ジャーマンスープレックスの要領を使い、全力で背後まで投げ飛ばす。

 元々、身体能力強化型のハチの力はドラゴンモードになり更に強化され、結果としてJKは流れ星になった。


「必殺、スープレックスレクス……!」


 空の彼方へ消える嫁……だが、直ぐに戻ってくるだろう。

 攻撃の意思は無かったからか、なんとか反撃することができたけど……戻ってきた時、迎え撃てる自信は無い。

 だから今の内に、QAを落ち着かせなきゃ。


「QA、これで邪魔者はいなくなったぞ! 私の胸に飛び込んで来い!! 私は私の浮気を容認する!!」

「ガガガガガリリァ!!」


 緊急事態なんだから仕方ないよね。と自分の心に納得をつけ、襲いかかってくるボロボロの少女を真っ直ぐに見つめた。

 刀を下段に構え、地面スレスレに刃先をなぞらせながら走ってくる。

 速い……けど、今の私なら対応できないスピードでは無い。


「ガァルァ!!」

「ちょぃ……サァ!」


 下から抉るように顔面へ迫る刃を手甲で弾き、勢いを利用して反転。

 そのまま回し蹴りを返す。

 蹴飛ばすつもりはない。足で巻き込んで地面に倒すつもりだった。

 けど、QAは人外な反応で体勢を低くし躱す。

 ブンッと空気を裂く音の後、小さな金属音が鳴った。

 視界外に消えた彼女と不可解な音。

 私は血の気が一気に引くのを感じ、翼を動かし無理やり後退する。

 そして、次の瞬間────


「ッ、んなぁ!?」


 前髪が少しだけ綺麗にカットされた。

 全く、一切合切見えない一撃。

 超超超超光速の抜刀術。

 悪寒が働かなければ、今頃は頭と身体がさようならしていたかも。ぞぞぞー。


「もう! 暴れないでよ!」

「ギガ、ガガガギギギ」


 歯を食いしばり野獣が如き唸り声を上げる。

 一見、理性のない獣のようだが、その立ち回りには理があった。

 どちらかと言えば、ガムシャラな私の方が獣に近いかもしれない。


「ま、私は肉食系だし。獣で満足だけど……ね!」

「ガァァァァ!!」


 再び接近し、拘束しようと奮闘した。

 しかし、あと一歩、あと一撃のところで上手く躱されてしまう。

 何分あの抜刀を見せられた後だ。

 戦闘の中でQAが納刀する度に一旦距離を置かざる負えない。

 私が決め手にかかろうとすると、キンッと鍔鳴りがする。

 あれは魅せ技……もう放つ力は残されていないかもしれない。

 けど、もし一撃でも撃てるなら……死んでしまうよ。私。


「ックソ! 後何秒!? ハチ!」

(接触時の体温から想定するに……残り20)

「かぁ、時間ねぇ!」

(正に決死だな。しかし、どうするよ、ご主人。正直、相手がここまでやるとは思ってもみなかった。こりゃあ想定外だぜ)

「私は小細工が苦手だ。だから……」


 そう、元より考えて戦うようなタイプでは無い。

 もっとがむしゃらに、ただ願いを、未来を掴むために精一杯の力を出し切る。

 だったら、この方法しかないだろう。


「これが、最後の一手だ!」

「グガァ!!」


 私は、両手を大きく広げQAに迫った。

 隙だらけのお腹。当然、反応する。

 鍔鳴り音が聞こえたと思った時、既に彼女の一撃は放たれていた。


「ッッ……!!」


 激痛が腹部に走る。

 血が透明な刃を濡らし、その姿を鮮明にした。

 胴体目掛け真横に一閃。

 下半身と上半身は一刀両断され……るところだった。

 けれど、刀は脇腹に少し触れただけで振り切れていない。


(無茶な事を……防御全振りでも耐えれなかったらどうするつもりだ)


 考えてないし、考えたくもない。

 部の悪い賭けなのは百問承知。その分、勝った報酬もでかいのさ。


「へへ、捕まえちゃったぞ」

「ガガ!?」


 私は痛い脇腹を我慢しながら一歩前進し、QAの両肩に手を掛ける。

 振りほどこうと暴れるが、最早彼女の力は赤子のようによわよわしい。

 そのまま地面へと押し倒し、ハチの名を叫んだ。

 身体に纏った鎧は、光の粒子に変化し、次はQAの体へと纏わりつく。


「ぐ……ガァ!!」

「あばれるな……おとなしく私に身体を預けろ」

(事案だな……)


 手首、足首にあつまった粒子は再び硬い鎧へと再変化される。

 身を守る為の装備では無く、相手を拘束する為の物へと。

 私の想像力では、少しエッチな雰囲気漂う拘束具にしかできなかった事をここで謝罪したい。

 なにわともあれ、四肢を拘束され身動きの取れなくなった彼女。

 身体強化されていない私でも、もう怖くない。

 これで決着がついた……かに思われたのだが。


「ガッぁ!! ガガガギィ!!」

「……もとに戻らない……このままじゃ、腕を引きちぎっちゃうよ!? どうして!?」

(俺の元所有者と同じさ……熱の過剰供給による暴走)

「ッ!? ってことは」

(あぁ、死ぬまで踊り続けるだろうな)

「どうしたらいいの!? ここまで来て……彼女が死ぬなんて、許せない」

(ここまで進行しちまってたら、俺様も手がつけられねぇ……すまない)

「くぅ……」


 どうする。どうするどうする!?

 目の前で充血する目を見開き、牙をむき出しにしながら苦しむ獣。

 その姿を見ていることしかできないのか?

 美しい乙女の灯火が消えるのを……眺めていることしかできないのか?

 こんなに……こんなにJKに似て美しいのに……。


 ────ッ!?


 そうだ。JKにそっくりな美少女なら……きっとあの方法でなんとかなるはずだ!

 だ、が、だ、が。あーやるしかねぇ。

 不可抗力、これは不可抗力。仕方のないことなんだ。

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