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見えない本~あなたにはこの本が見えますか?~  作者: CASCADE


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22/31

第22話:検証配信(後編)



『てかそんなおまじないあった?w』

『初耳なんだが』

『タツヤの捏造おまじない乙ww』


画面下のコメント欄には、タツヤの言った「おまじない」に対する冷やかしの書き込みが相次いでいた。ネットで囁かれている都市伝説に、そんな手順など存在しないからだ。適当なガセネタで場を盛り上げようとした――はずだった。


「ふざけんなよ! 捏造じゃねえ! マジでここにあるんだって!!」


タツヤの絶叫が暗い廊下に響き渡る。

画面越しの視聴者から見れば、誰もいない床を指差して急にパニックを起こしているようにしか見えない。


『迫真の演技乙ww』

『仕込みが下手すぎる』

『バンされる前に帰れよ』


「仕込みじゃねえよ! なんで映ってないんだよ!!」


タツヤは狂ったように三脚へ駆け寄ると、スマホをひったくるように持ち上げ、足元の床へと向けた。

だが、スマホの画面に映し出されているのは、虚しく照らされる灰色の床タイルだけだった。


「な……なんで……画面に映らねえ……?」


タツヤの手がガタガタと震え始める。その時だった。


――パラリ。


静まり返った廊下に、紙がめくられる小さな音が響いた。


「ひっ……! め、めくられて……勝手に……!」


タツヤの視線は床に釘付けになったままだ。

カメラには何も映っていない。ただ、タツヤの顔から急速に血の気が引き、瞳孔が限界まで開いていくのが映っていた。


『音は聞こえないけど顔がヤバい』

『急にビビりすぎて草』

『なんか雰囲気がリアルで怖いんだけど……』


「やめろ……書くな……! 俺の名前を書くな!!」


タツヤはスマホを放り出し、後ずさりしながら叫んだ。


「『深夜の学校に侵入した配信者』……『配信画面の前で、逃げ場を失い……』……嫌だ! やめろ! 消せ! その文字を消せええええ!!」


頭を抱えて狂乱するタツヤ。

次の瞬間、彼は廊下の壁に背中を強打した。


「がハッ……!? な、なに……首が……誰かに……!」


タツヤの身体が、まるで目に見えない何かに喉元を強く締め上げられているかのように、ズルズルと壁に沿って持ち上がっていく。

足が床から浮き、爪先が虚空を蹴る。


『え、うそだろ?』

『ワイヤーアクション??』

『タツヤ!? マジでどうなってんの!?』

『誰か警察呼べ!!!』


コメント欄が狂ったような速度で流れていく。

配信画面の真ん中で、タツヤは顔を真っ赤にし、自分の首元を両手で必死に掻きむしっていた。だが、そこには何も掴むべきものがない。


ガシャーン!!


廊下の非常用ライトが怪しく明滅した瞬間、タツヤの目の前に――彼にしか見えない「それ」が完成した。


空気中から唐突に現れた一輪の白菊と、それを生けた白い花瓶。

それが浮遊したまま、タツヤの視界を埋め尽くした。


「あ……あ……っ……」


最後の悲鳴すら出なかった。

目に見えない力で激しく廊下の床へと叩きつけられたタツヤは、そのままピクリとも動かなくなった。不自然な方向に折れ曲がった首から、ゆっくりと黒い血が広がっていく。


『おい死んだ???』

『通報した通報した通報した』

『嘘だと言ってくれ』

『ノートの都市伝説マジだったのかよ……』


画面の向こうで数千人の視聴者が恐怖に凍りつく中、タツヤの死体のすぐ隣――カメラには一切映らないその場所に、一冊の『白いノート』がバタンと静かに閉じた。


そして、画面下のコメント欄には、配信を見ていた全国の無数の人間たちの書き込みが、今この瞬間も溢れ返り続けている。


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