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見えない本~あなたにはこの本が見えますか?~  作者: CASCADE


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10/28

第10話:終着駅(後編)



ハッとして目を覚ました。


「はぁ……はぁ……はぁ……っ」


自分の部屋の天井。布団の中だった。

びっしょりと冷や汗をかいており、心臓が激しく脈打っている。


「夢……か……」


あのみんな俯いた四人の男女と、どこまでも止まらない一両だけの電車。

あまりにも生々しい悪夢だった。


時計を見ると、出勤の時間までまだ余裕がある。

だが、あんな不気味な夢を見たせいか、居ても立ってもいられなくなった僕は、早めに身支度を整えて早朝の駅へと向かった。


◇


早朝の駅は、朝霧の中に静まり返っていた。


始発列車が来るまで、まだ一時間以上ある。

鍵を開けて改札をくぐり、昨日『白い本』が置いてあったホームへと足を進めた。


ベンチの上には、もう本はない。

だが、ホームの端まで歩いた時、僕はその場に凍りついた。


ガラガラガラ……。


始発電車が来るはずのない時刻。

誰もいないはずの線路の奥から、乾いた重い走行音が近づいてきたのだ。


朝霧を突き破るようにしてホームに滑り込んできたのは――昨日の夢で見た、あの『一両だけの古い電車』だった。


プシューッ……。


乾いたエアの音とともに、目の前のドアが開く。


車内には、薄暗い蛍光灯の下、四人の男女が並んで座っていた。


私服の男、警備員、女子大生、配送ドライバー。


全員が深く首を垂れ、土のような顔色で微動だにしない。

その膝の上には、それぞれ『真っ白な本』が、抱え込まれるように置かれていた。


「ひっ……!?」


悲鳴を上げて後ずさろうとした。

だが、足が動かない。まるで目に見えない手に足首を掴まれたかのように、身体が勝手に前に傾き、吸い込まれるように車内へと一歩を踏み出してしまう。


プシューッ、ガタトン。


ドアが閉まり、ロックされる。


カタ……カタカタカタ……。


静まり返った車内に、異様な音が響き渡り始めた。


四人の膝の上に置かれた『白い本』が、誰も触れていないのに一斉にページをめくり、白紙の上に黒いインクで文字を刻み込んでいる。


そして、僕の目の前。

空いていた座席の上に、ぽつんと置かれた最後の『白い本』。


その表紙が勝手にめくれ、誰もいない空間でペンが走るような音が鳴り響いた。


『……駅員。終電後のホームで本を拾った。踏切の音が聞こえた。夢の中で一両の電車を見た。朝のホームで、その電車に乗り込んでしまった。今、四人の男女とともに、二度と止まらない電車の中にいる――』


カタカタカタ……。


『――電車はどこへ向かうのか。僕たちを乗せて、どこへ行くのか。次に乗ってくるのは、あなたですか?』


文字が刻み終わった瞬間、四人の男女が一斉に顔を上げた。


生気のない、落ち窪んだ瞳。

その四人の視線が、そして本に書かれた最後の文字が、まっすぐに僕へと――いや、この記録を開いている『誰か』へと向けられていた。


ガタゴト、ガタゴト……。


電車は朝日すら届かない闇の奥へと、永遠に走り続けていく。



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