間話 丸尾、アルファ、スチーム
「丸尾様、神聖国への入国ができませんでした」
「なんでだい?」
「なんでも、王国の勇者は偽物だと言われ、入国拒否しやがったんです!」
と怒っているのはアルファ騎士団長だ。
「と言う事は神聖国にも勇者が?」
「今調べに行かせてます!」
「はぁ。これはやばい気しかしないね」
「そうですね。王国しか勇者召喚は行えないはずなんですが……」
1日待ってみても変わりはなかったが、調べて来た諜報部達に話を聞くと、
「どうやら勇者召喚が行われた様です! しかも4人!」
「は? 4人も?」
「はい、勇者、賢者、聖女、剣聖の4人が召喚されたと言う事らしいです」
と言う事は俺とケント君以外に4人も召喚されたのか!
「どうやら早く魔王国に入らないといけない様だな」
「……ですが、まだ我々は人間の限界を越えられてません」
と肩を落とすアルファとスチーム。
「大丈夫だ! 必ず俺が倒して見せる!」
「丸尾様! 俺らは弱いですが盾くらいにはなれます!」
そんなのは認めない!
「ダメだ! ……仕方ない、もう一度戻って、帝国のダンジョンを攻略しよう!」
そうすれば50階層で限界突破が得られる可能性があるからな!
「分かりました! では!」
「戻るぞ! 帝国に!」
帝国ダンジョンは帝国の首都、『ラブルカ』にある。
なんとか、たどり着いた騎士団達は1日休みを取りダンジョンへと向かう。
「ヒール! 丸尾様、前に出過ぎです」
ヒールをかけてもらい回復する。
「いや、勇者と言う言葉は俺だけで十分だからな。他の人間に殺しをさせるわけには行かない!」
「丸尾様……分かりました! 私達もお供します!」
「分かってる! 行くぞ、アルファ、スチーム!」
「「はい」」
ダンジョン50階層で赤竜と戦い、傷付くのも恐れずに立ち向かう俺に、ついて来てくれるアルファとスチーム。
他の部隊達も置いていかれてもレベル上げを行っている。
『グオォォォォ……』
「よし! やっと倒したな!」
「は、はい……やっとですね」
と倒れるアルファ。
「しっかりしろ! ポーションだ。ゆっくり飲め」
とアルファは傷ついた身体を起こしてポーションを飲み干すと寝かせられる。
スチームもなんとか大丈夫そうだな。
剣を杖代わりになんとか立っている。
赤竜のドロップは魔石にスフィアボールだ。
「よし! やはりこれで間違いなかったな!」
俺はスフィアボールをアルファに持って行く。
「これを破るんだ」
「はい」
力なく返事をするアルファだが、割ると回復もした様だな。
「もしやこれは? あ、あぁ、丸尾様!俺はついに!」
「あぁ!限界を突破したんだよ!」
「……っ」
男泣きするアルファにスチームがポーションを飲んでなんとかやってくる。
「団長! もしや?」
「あぁ、俺も丸尾様と同じく限界を突破した!」
「おめでとうございます!」
「もう一度最初から潜るぞ!」
「「え?!」」
驚く2人に、
「俺たちは仲間だろ? 3人は必要だからな?」
「……は、はい!」
モノリスで外に出ると、もう夜になっていて月が出ている。
「さぁ、他の隊員もまだダンジョンの中だろう。いつ帰ってくる?」
「はい、一週間で一度帰ってくる予定にしていますから、明日には!」
「では、明日、またここに集まりみんなを出迎えよう!」
「「はい!」」
宿に帰ると女将が起きて来て飯を作ってくれる。
「ありがとう、女将」
「いえいえ、勇者様は誰にでも優しいですね」
「そんな事はない。俺は……」
「丸尾様! こっちで飲みましょ!」
とスチームが呼んでいるので女将に金を渡して大テーブルに着く。
マジックバッグからビールを取り出し、3人で乾杯する。
「クハッ!美味いですね!」
「これがビールですか!」
「そうだ、ケント君がこのマジックバッグいっぱいにくれたものだ! 明日はみんなで飲もう!」
「はい!」
3回目のダンジョン攻略を控えているのだが、今だけは忘れて飲んでいいだろ?
俺たち3人が限界を越えれば魔王国に向かう!
魔王だって召喚されたとしたら話し合いになるかもしれない!
そう願ってビールを飲む。
「ハハッ! 流石にこれは美味いな」
だが、まだまだだ。
行くぞ! 最後の時まで!
「よく帰って来たな!」
次の日は朝からモノリスの前に立って皆を迎えている。
「丸尾様、俺たちは40階層まで行きましたよ!」
「おぉ、クラウもそこまでになったか!」
「はい! 頑張りました!」
と労い、肩を叩き仲間として祝福する。
「クッ」
と出て来て倒れる兵士に、
「おい、回復を!」
「はい! 『ヒール』!」
「は、はぁ、はぁ、」
「大丈夫だ、大変だったな!」
「す、すいません、まだ、俺なんか」
「何言ってんだ! ガゼルは頑張った! 俺がみてる!」
「あ、ありがとうございます」
と男泣きするガゼルと言う男は、弱いのに勇者組に入隊してくれた男だ。
誰が責めようとも俺が守ってやる!
「丸尾様! 全員集まりました!」
「そうか、良かった! 全員無事帰還してくれて嬉しく思うよ! さぁ、宿に行って休もう!」
「「はい」」
宿では手の込んだ料理が並んでいる。
1人一本ビールを配り、
「それでは、俺たち仲間に! 乾杯!」
「「「カンパーイ」」」
「美味っ!」
「これがビール!」
「俺なんかが飲んでもいいのか?」
「なら俺がもらうが?」
「だ、ダメだ! これは飲むんだ!」
とはしゃいでいる。
俺はこの世界が好きになった。
だから帰らないと決めた。
帰っても俺に守るものは……
あったはずなのにな。




