エンペラー
「オラァ! 『ライトニング』」
雷魔法で電気を走らせるとゴブリン達に連鎖的に広がっていく。
燃えたゴブリンの塀から中に入る。
「ウオォー! 『ファイアーウォール』!」
この塀を取っ払ってやる。
“キンッ”
「効かねえよ! クソ野郎!」
『グギャ!』
背後から攻撃するゴブリンアサシンを倒して、
「『ライトニング』」
と雷魔法で大勢のゴブリンが動けなくなる。
「ケント様!」
アリアの声がする。
「アリア! なんで来たんだ!」
アリア達が中に入ってくる。
「私達はパーティーですから!」
「逃げられなかったのは俺のミスだ」
巻き込みたく無かったのに、
「助けに来ない理由にはなりません!」
クソ、まだ索敵には何百ものゴブリンがいるんだぞ!
「アリア達は後ろを任せる! 俺は前に出るぞ!」
「「「はい!」」」
『クイック』と3人に時空間魔法の補助をかける。
「おらぁぁ!『テンペスト』」
数百のゴブリンと建物が大嵐に巻き込まれて行く。
レベルが上がるのを確認してる余裕はないが、上がっているのを感じる。
半数以上が普通のゴブリンやホブゴブリンだ。
これなら行けるか!
「なっ!」
これまでに感じたことのない威圧感。
『グォォォォォォ!!』
さっきのゴブリンウォーリアよりも細いが、人間に限りなく近い黒いゴブリン。
王冠を被っており、マントを脱ぐと剣を構える。
「お前がゴブリンエンペラー?」
『ワレガ……ゴブリンノ、オウダ!』
「喋れるのか! チッ!『アクセル』!」
“ギンッ”
と火花が散る。
「こいつ……ついて来れるのか!?」
『ナニヲオソレテル……』
後退して間合いをとる。
「恐れてる? は? お前は俺に倒されるんだよ!」
『ソレハ……ナイ!』
目の前に刃が来るので必死にガードするが、腕を持っていかれる。
「グッギギ!! いづゥゥ……」
焼けるように痛みが走り腕が落ちたことを知る。
『ギャハハ! コイツハ、ホンキダスホドデモナイ』
落ちた腕を拾い腕を引っ付けると、
「グアァァアァ『ハイヒール』!」
「く、はぁ、はぁ、はぁ、」
かろうじて意識があるうちに腕をくっつけて治すと手を動かしくっついた事を確認する。
『ホウ……カイフクカ』
「『グラビティ』! 『アクセル』!」
『ナッ?』
重力魔法で重さを増して、時空間魔法で時間を延ばす。
「おらぁぁ!」
『グッ! グアァァアァ!』
首を狙ったが、腕でガードしたようだが、その腕を斬り裂き、首の頸動脈まで斬れたようで血が吹き出す。
返り血で血塗れになるが、エンペラーから目を離さない。
『グォォォォォォ!』
力を込めて皮膚を締めたようで血が止まると、『ヒール』がどこからか飛んでくる。
『グッ、ナメテイタヨウダ』
「まだまだだ! 『ストーンランス』! 『アイスニードル』!」
氷の礫でガードさせ、ランスで貫く。
『ゴハッ!……ワ、ワレハオウナリ!!』
腕を再生させるとこちらに飛んでくるが、それは一回見たからな!
「『グラビティ』『アクセル』!」
『グッグォォォォォォ!』
「オラァァァァァアァァァァァァ!」
剣を縦に素早く走らせると、ゴブリンエンペラーは真っ二つになり俺の後ろに倒れる。
俺はエンペラーに勝つことができた。
「おっしゃぁぁぁ!!」
あとは掃討するだけだな!
疲れた身体を動かしてまだ動けるうちに掃討する。
「『テンペスト』!」
まだ数百いるゴブリンどもを一斉に倒すのにはいい魔法だな。
「ケント様! 待って下さい!」
「どうした、アリア?」
「捕まっている人間がいるかもしれないので、慎重に行きましょう!」
そこまでは考えていなかったな。
「……分かった、行くぞ!」
「「「はい」」」
それから1時間ほどだろうか、俺たちはゴブリンの集落からゴブリンがいなくなるまで倒して回った。
途中で人間が捉えられてる場所を見つけ、そこはテレサとミントが守り、俺とアリアはゴブリンを狩って回る。
夜になり、火を焚べて周りを警戒する。
捕まっていた人間は食糧やゴブリンの繁殖に使われる予定だったようだ。
ゴブリンの繁殖に使われた女達はもう手遅れで舌を噛んで亡くなっていた。
ここは村だったらしく、本当はもっと前からギルドには連絡していたが、ゴブリンエンペラーが誕生してからは、この村を占拠されていたそうだ。
「な、なぜ! もっと早く!」
「ダンジョンの所為もあるが、ギルドにはそれ相応の対応をしてもらう」
「貴方達がもっと……もっと早くに!」
「分かってる。もっと早く冒険者が来ていればな」
苦衷の末に出た言葉は深く突き刺さる。
俺たちに出来る事はゴブリンの後始末をして行く事くらいだ。
右耳を切り取り、魔石を抜いて、集めて焼く。
それを一晩中やっていたら捕まっていた人間の中にも手伝ってくれる人達がちらほら出てくる。
「助けてもらったのに……すまなかった」
「いや、いい」
「手伝えることはあるか?」
「これを女子供に与えてくれ。それに食い物も近くに出しておくから」
「……ありがとう」
それだけの言葉で少し救われた気がする。
夜が明けるとその惨状は酷く、壊れた建物や、殺された人の骸の数。
どれだけ残虐なことをされていたのかがわかる。
そんなものは無かったことにはできないので、せめて壊して跡形もなく燃やしてやる。
ゴブリン達は光るものを集める習性があるらしく宝石や金貨などが大量に出てきたが、収納に入れて、あとで返すことにする。
ギルド証も何十枚と出てきた。
やはり塩漬けにされるだけある依頼だったようだ。
それらを片付けアリアとテレサに明日朝イチで馬車を迎えに行ってもらう。
この惨状はギルドの責任問題になる。
とりあえず皆が少しでも食べ物を口にしてくれているので助かる。
次の日の昼過ぎにはノセックの街の騎士達が来てこの惨状と、人間の保護に尽力し、馬車でノセックの街に入る。
「やっと、肩の荷が降りたな」




