ラジオ体操
お年玉というと大体ジャリ銭数枚か500円札1枚入ったお年玉袋を貰うものでした。
(もちろん、根こそぎ母親に回収されます)
子供のころは、500円札さえあれば駄菓子屋のお菓子を無限に買えるような気がしていました。
それくらい、500円は結構な金額でした。現在だと500円では大して多くは買えません。
まあ、私は”お小遣い”そのものを貰ったことがないんですけどね。
午前1時くらいになって玲也が頽れたので、彼の母親は息子を抱き上げて当人の部屋まで行き、布団に横たえてタオルケットをかけると自分も床に戻って行った。朝6時過ぎくらいになったころ、玲也はなんとなく起きた。まだ眠たいのだがもうひと眠りする気も起きず、とりあえず床から這い出る。ダイニングキッチンでは母親が忙しげに朝食の支度をしている。だが、居間に父親の姿がない。いつも玲也が起き出す午前7時頃は、彼の父親が居間で新聞を読んでいる頃なのだが、居間には誰もいない。母親に朝の挨拶をした後「父ちゃんは?」と聞くと「トイレ」と返ってくる。普段の玲也は、トイレで長便しながら新聞を読んでいる父親に対して母親がイライラとした感じで怒鳴る声で起きるのだ。玲也がそんなことを思っていると、彼女は思い出したように「ちょっと!あなた!早く出て!!」と怒鳴るのだった。
夫に長便を切り上げる要求を終えた彼女はおもむろに作業の手を止めると、玲也の方に向き直って言う「まだラジオ体操に間に合うんじゃない?」。その言にしばし思案した玲也は「あ~、たまにはいくか・・・って、あれ?スタンプカードは!?」とだらしないことを言うので、「冷蔵庫に貼ってあるでしょ!」と答える母親。「あ、本当だ!」と言いながら冷蔵庫に磁石で張り付けてある、まだ3個しかスタンプが押されていないラジオ体操カードを取ると、「行ってきます」と寝ぼけ眼で出発する。一応、身支度はできているが、傍から見ても呆れるほどに眠そうだ、というか、身だしなみが物凄くだらしなく見えるのだ。まあ、この時間に起きてちゃんとパジャマから普段着に着替えるだけでも玲也としてはエライ方なのだ。スタンプカードのパンチ穴に通された紐を首にかけると、玲也はエレベーターホールに向かった。
御多分に漏れず、玲也のスタンプカードはいつも隙間だらけだ。自治会が就学児童のいる家庭に配るラジオ体操カードには5週間分の出席スタンプを押すための升目があるのだが、しょっちゅう寝坊する玲也のカードの出席スタンプの升目はまばらなのだ。言わずもがな、彼は”行けたら行く”人だからだ。学校が休みの日に”ちゃんとした時間”に起きるのは稀なので、7日も出席すれば良い方なのだ。だが、当然ながらシマオは毎年皆勤である。島野家は正月以外は帰省しないからだ。常に規則正しい生活を送るシマオは、夜は決まった時間に眠り、朝は決まった時間に起きるので遅刻をしたことがない。
ちなみに、皆勤賞は商店会の500円券なので子供にとってはけっこうな小遣いだ。25日以上参加した者には努力賞として1割引商品券が授与される。勿論、宝田団地内商店会に加入しているお店でしか使えない。荒天時は中止となり、中止になった日のスタンプは自動的に押してもらえる。また、8月13日から8月15日はスタンプの升目には取消線がある、帰省する人に配慮したものだ。出席してもしなくても、”参加”とみなされるので、これを使えば皆勤賞を狙えるのだ。
|エレベーターホールから出ると既にラジオ体操のラジオ番組が流されているところだった。このラジオ番組は、毎日、色々な地域を訪問してやっているらしく、体操が始まるまでの間に色々な話が流されているが、玲也はその話に耳を傾けたことが無いので内容を知らない。ただ、遅刻すると、模範演技の人以外の約半数は9号棟の方を向いているので結構恥ずかしいのだ。今回は恥ずかしい思いをせずに参加できたと安堵していると、集団の手前の方に見知った顔を見つける、シマオだ。シマオを見つけた玲也は駆け足で彼の元に向かう。すぐそばまで来てから挨拶を交わす。シマオは「フフッ、今日は来たね」と言うと ちょっと嬉し気な笑みを浮かべた。玲也が「あのさ・・・」と言いかけたところで、ラジオ体操のピアノの伴奏が始まったので、とりあえずラジオ体操を始めるのだった。体を反らす体操の時、9階のベランダに小さな人影が見えたような気がした。
ラジオ体操が終わると子供たちはわらわらと舞台上のラジオ体操当番の人や、その近くにいる他の自治会役員の前に行き列を作る。スタンプカードにスタンプを押してもらうための順番だ。大学生以上の人たちはスタンプカードを貰えないのだが、殆どの人は中学を卒業すると自主的に使わなくなる。スタンプの列に並んでいる間もフジショーの姿は見えない。どうやら帰省したらしい。麻生家も島野家同様、正月以外は帰省しないので、ラジオ体操に参加すれば大体シマオに会える。互いに昨日見たTVのアニメの話などをした後、「昨日の晩は夜更かししなかったんだね?」と聞かれた玲也は、「ううん、結構遅くまで起きてた…と思う」と曖昧な言い方をする。その言い方に引っかかりを覚えたシマオは「なんだよそれ?」と詳細を求める。「えっとね・・・」と玲也は昨夜の晩、ベランダで見た出来事をシマオに話すのだった。
チャッピーコメント
---3回目
以下、誤字を整えた上で、青空文庫形式(全部振り・|付き)でルビを付けました。
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※ 加工文
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**御多分に漏れず → 御多分に漏れず(誤字なし)**
※ 何が言いたかったんだろう?
気になる読み(例えば「御多分」や「升目」などのニュアンス)を変えたい場合は、その部分だけ指定してもらえれば調整できます。
---4回目
誤字は特に見当たらなかったので、そのまま青空文庫形式(|付き・全部振り)でルビを付けました。
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※ 加工文
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気になる読み(例えば「安堵」「模範演技」などのニュアンス)を変えたい場合は、そこだけピンポイントで調整できます。
---5回目
誤字を1か所だけ整えました。
「無限に**変える**」→ 文脈上は「無限に**買える**」が自然です。
青空文庫形式(漢字)でルビを付けます。
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※加工文
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この文章、時代の感覚がすごく伝わってきて良いですね。
500円札の「なんでも買えそう感」、すごくわかります。




