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参道でシマオの危機

階段があるとはいえ、かなりの斜面なので、3人はおっかなびっくり上り始めた。フジショーが先頭でレイヤが殿しんがりだ。こういうシーンではシマオが転落するリスクが非常に高いため、3人で冒険をするときは、大体、自然とこのフォーメーションになる。


「なあ、やっぱり、明日にしねーか?」と少し血の気が引いたような顔でフジショーが言う。この少年、堂々としているように見えるが、実は、怪談などの怖い話がものすごく苦手なのだ。喧嘩では怖いもの知らずの無頼漢でも、物理が通用しない相手は怖いようだ。

「へっ!怖いのかよっ!」とレイヤは盛大に笑い飛ばしたが、 実は、玲也自身も内心めちゃくちゃビビっているのだった。「お前、人のこと言えんのかよ!」とちょっと調子を取り戻したフジショーに返り討ちにされていたが、苦笑いしかでない。


そんなビビリー達のバカなやり取りに水を差すように「も、、、もう無理」とシマオが声を絞り出す。シマオの体力はもう限界に来ていたのに、階段を上ることで限界に達したのか、ふくらはぎが痙攣し始めていたのだ。フジショーが「何震えてるんだよぉ」と笑い出したが、脂汗を垂らしながらしゃがみ始めたシマオをレイヤが受け止める。それと同時にシマオの脚がこむら返りし始める。「藤田!本当にダメだ!」とレイヤは思わずフジショーを本名で呼ぶ。


その様子に、フジショーの顔から笑いが消える。「おいっ!大丈夫かよっ!」と言いつつ、そろりそろりと階段を下りる、この古くて勾配がきつい階段は、登りよりも下りの方が危険なのだ。その間もシマオは「いだい!いだい!」とうめきのような絞り出すような声で痛みを訴える。二人の友人が両脇からシマオを支えてそれぞれがそれぞれの側の脚をさする。


嘘のようにカチカチに硬くなったシマオの両脚の筋肉。時々痙攣もする。「水飲んだら?」とレイヤが勧めるとシマオは緊張に震える手で氷が打ち合う音がする水筒を取り出し、コップ代わりのキャップで3杯ほど麦茶を飲んだ。


しばらくしてシマオの脚のひきつけが収まり、今は不規則にけいれんが起こるくらいだ。それから、もういっぱい麦茶を飲むと、シマオは深い溜息を吐いた後「ありがとう、もう大丈夫」と言った。


階段の上に座ると、両脇の茂みのおかげで日陰になり、少し涼しい。なにより、階段そのものがよく冷えているので、炎天下を歩いてきて火照った体がよく冷えるのだ。3人の少年はそんな原理についてはよくわかってはいなかったものの、シマオに命の危険がないことを確認し、ほっと胸をなでおろした。シマオを無事に連れて帰れなくなったら、この3人の友情は終わりだとフジショーもレイヤも心の中でわかっている

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