シュレリア男爵は剛毅に対する
「ちっ! 何故止める! シュレリア男爵!」
「お主らいい加減にしたらどうだ。栄えある獅子王騎士団を貶めるつもりかね?」
「父様!」
四十の後半。
一番油の乗っている時期。
男爵は兜のフェイスカバーを上げると、蓄えられたひげと傷だらけの厳つい顔面で貴族の子息達を威圧した。
男爵の装備は他の貴族達と違い質素。
勿論資金がないからということもあるが、大柄なので、先祖から受け継いでいる物は着けられない。
結果、武装は鎖帷子とレザーアーマーとガントレットのみ。
露出部分が多くなってしまったが、持ち前の強靭な肉体でそれをカバーしていた。
「シュレリア男爵! 幾ら歴戦の英雄と言えども上級貴族にその無礼な態度は看過できないぞ!」
「がははは! 笑わせる。それは正式な貴族になってから吠えるがよい。親の威を借る小僧ども! まだただのヒヨコ騎士だわい」
「ぐっ!」
「男爵の分際で!」
貴族の子息達は言い返せなかった。
騎士とはただの戦士の称号で、それ単体では貴族として認められてない。
江戸時代の武士も同じことが言える。
現実も元々は騎士と王家や貴族は別々であった。
キリスト教が大義名分を与えたのが切っ掛けで、王族も貴族も騎士を名乗り出したのだ。
シュレリア男爵。
名をアルベルト・グリズ・ソードと言う。
元々はただの貧乏騎士の一族であったが、若い頃、名誉と名声を手に入れる為、親友のゴスロ伯爵と共に傭兵として戦争に明け暮れていた。
そのかいもあって、シュレリア男爵も含めた複数の男爵位を王より拝命。
その上、人質になっていた王族を救い出した功績により、男爵でありながら貴族入りを果たし今日に至る。
「それに良いのかな。そこの御仁に楯突いて?」
「なんだと?」
「彼は道化師だ。しかも貴族に堂々と意見出来る者など限られていると思うが……」
シュレリア男爵は騙る。
嘘も方便と言うが平然と虚言を言いのける。
「まま、まさか王族お抱えの……」
「確かにその異様な格好に、凡人ではありえぬ知識量。それにどう見ても人を欺く程の間抜けぶり。あながち嘘に聴こえない」
中世の西洋では道化師は王の側近、または相談役として重宝されていた。
彼らは高い教養と博識な事から、中には高い爵位を持つ者もいる。
他の国だと中国の宦官もやっていることは道化師と同じだ。
「この行為が王か王妃の耳に罷り間違って入ったらどうなるのであろうな? 爵位剥奪、家名断絶もあり得るのだぞ。己の行いがそのまま家の行いに繋がる事を肝に命じておいた方がいい」
「くっ! おぼえていろ! 父上に言い付けてやる!」
自身の配置場所へ逃げ戻る貴族の子息達に、男爵は好きにしろと言わんばかりに手であしらう動作をする。




