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折檻諫言


「変態! もう何も喋るなだっちゃ! 殺される!」

「もうおそいわ! 許せん! 上級貴族に暴言を吐く下僕などあってはならない!」

「何処の下僕か知らないが、ただでは済まないぞ!」


 貴族の子息達は声を荒げて激昂。

 これだけ騒げば上官が止めに入るものだが、親達の位が辺境伯だったので、他の騎士は咎める事が出来なかった。


 辺境伯とは国境を守護する領主に与えられる称号。

 常に敵国の脅威に晒されている為、領地の広さと財力と雇える兵力が高く、それは王族も警戒する程である。


「この場で殺そう!」

「そうだ、王族に近い我ら上級貴族に逆らう事がどんなに愚かな行為なのか思い知らせるのだ!」

「貴族貴族って、そんなに偉いものなのですか? あんた達を見ている限り、能無しボンクラ集団ではないですか」


 ハルトは言い切った。

 貴族に逆らったらどうなるのか、そんなに歴史に詳しいのなら散々知っているだろうに、なのに躊躇なく言い切った。

 普段は頼りないが、彼は己の命より他人の為に動ける今時の若者にはない希有な存在。

 警戒心の強いヴァージニアが信頼しただけはある。


「もう我慢ならぬ! 死ねぇぇ!」

「やってしまえ!」

「後の始末は父に後ろ楯になってもらうから心配するな!」

「変態、避けろだっちゃあぁぁ!!」


 とうとう、貴族の一人が剣を抜き振り下ろされるが、「そこの者達待てぇぇい!!」手入れの行き届いたショートソードがハルトの鼻先で止まった。

 良く磨かれている剣に映り込む己の姿を確認。

 反逆者若しくは無礼者は流石に思わず唾を飲み込んだ。


 後方から頑丈そうな芦毛の馬が駆け寄ってくる。

 毎日の手入れと蹄鉄をしっかり打っているお陰で、大型ながら他の馬とは違い走りが安定していた。


「ちっ! 何故止める! シュレリア男爵!」

「お主らいい加減にしたらどうだ。栄えある獅子王騎士団を貶めるつもりかね?」


 四十の後半。

 一番油の乗っている時期。

 男爵は兜のフェイスカバーを上に上げると、蓄えられたひげと傷だらけの厳つい顔面で貴族の子息達を威圧した。

 

 男爵の装備は他の貴族達と違い質素。

 勿論資金がないからということもあるが、大柄なので、先祖から受け継いでいる物は着けられない。

 結果、武装は鎖帷子とレザーアーマーとガントレットのみ。  

 露出部分が多くなってしまったが、持ち前の強靭な肉体でそれをカバーしていた。

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