人を見掛けて判断するべきではない
「あん? 馴れ馴れしい下僕だな。部外者が口を挟むな!」
「聞いていれば何が最強? 騎馬にも弱点はあるんだよ?」
「何だと!」
「くはははは! ソードよ、これは何かの見世物か? 我等貴族が誇る大陸最強の騎兵団に弱点などないわ!」
格好が間抜けで案の定相手に笑われた。
馬が嫌がっているので、乗車拒否をしているかのように尻尾がパタパタ当たり、平均台よりバランスがとりづらい。
「……………………………」
恥ずかしくて声にならない声で呻くヴァージニア。
同乗者を尻目に赤面した。
「あんたらがそんなに誇るなら、どんな兵科にも万能はないと教えようか?」
「はん、馬鹿も休み休み言え! 騎兵団に勝つことなど神でも無理だ!」
「槍を構えた騎馬突撃に敵うものか!」
確かにハルトの世界の歴史でも、フン族を初め、ウィリアム征服王やカール大帝など中世ヨーロッパで騎馬兵は無敵の働きを見せた。
中でもかの伝説の十字軍は、必ず初手に騎馬突撃をするこだわりようであり、それは絶対の自信の表れ。
その結果、イスラムを恐怖のドン底へ陥れた。
だが、それでも短所は必ずある。
「鉄床戦術。有名な戦術だよ。重装騎兵に有効な攻略法。単一の兵科なら無敵でも、複数の兵科による複合攻撃には滅法弱いんだよ。足止め部隊と機動力が必要な急襲部隊。昔の西洋の戦争はこのパターンが多かった」
実際、ハンニバルやアレクサンドロス3世が使用した鎚と鉄床戦術。
鉄を押さえてハンマーを打ち付ける様からこう名付けられている。
主に対重装歩兵に使用したが、汎用性が高く、足止め次第では側面に弱い重装騎兵にも応用が効いた。
「そんなの聞いたことがない! デタラメを言うな!」
「騎兵が本領発揮するのは平原のみ。森や荒地などでは意味をなさない。事実、山岳超えに神聖ローマ帝国バルバロッサも苦労したという。更に落とし穴やロープのトラップに引っ掛かったら、そんな重たい鎧を着ていて生き残れる訳がない」
ハルトは向こうの知識を生かし、相手の騎馬突撃至上主義に真っ向から立ち向かう。
「ぐっ! そ、それは…………」
「いや、我等が神が守ってくれる。神に選ばれた血筋が負けるわけがないのだ!」
「耳を貸すな! 聞いたことのない国や名前をだす妄想癖だ」
貴族達はハルトの正論にプライドが邪魔して、冷静に物事を判断出来なくなっていた。




