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ここが正念場


「それよりもだ、兜をかぶらないなんて、余程の自信家だなぁ。シュレリア男爵はそんな基本も教えていなかったのか?」

「女を武器に戦う気だろうよ」

「違いない。同じ人間なら効かないがモンスター相手なら籠絡出来るかもなぁ。ひゃはは!」


 どんな環境でも人間とは優越感に浸る為、強者は弱者を貶める行為をするのが好きだ。

 特に上位階級の貴族にはそのきらいがある。

 それは闘争本能から来ているのか、貴族を誇示したいが為来ているのか、それとも己を優位にたたせたいだけなのか。

 弱肉強食の時代、差別こそ人間の生まれ持った罪である。


「これは私の師匠、ゴスロ伯爵の遺言なのです。貴方は故人を侮辱する気ですか?」

「ふっ! あんな臆病者が伯爵なんて何かの間違いだ。ヴァン公爵様に取り入った太鼓持ちではないか」

「ぐううううう!」


 弟子であるヴァージニアは思わず殴りそうになったが、多くの人間に迷惑がかかるので寸でのところで思い止まった。

 どの世界でも吉良上野介のような上位の身分に歯向かったら、待っているのは浅野内匠頭のような末路のみ。


「それにもう、血も絶えた。次のゴスロ伯爵は我が貰うとしようか」

「やめておけ。我ら選ばれた上級貴族に臆病者の爵位は相応しくない。俺の先祖は黒龍にも挑んだんだぞ」


 だが、不勉強なこの者達はゴスロ伯爵の先祖が黒龍の角を折った事を知らない。

 騎士は師弟関係を大事にする。

 これは騎士の古い風習であり、騎士になる為にしなければならない契りでもあった。


「このボンボンども、言わせておけば………………つけあがりやがってだっちゃ」


 うつ向いたゴスロ伯爵の愛弟子は呪いを掛けるかのように呟く。

 いつ理性のリミッターが外れて殴ってもおかしくはなかった。


 ――そんな時だ。

 今まで沈黙していたハルトが、「あのう、騎士様、質問いいですか?」スマホを弄りながら、一触即発の状況下で空気の読めない一般人を装って割り込んでくる。

 無気力だが勿論、先生に質問するように手を上げる事は忘れない。

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