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腐った権威

 

 行軍はその指揮する者の人望と采配で、遅いか早いか乱れているか揃っているか決まる。

 ならばこの一団はどうなのであろうか。


 傭兵と貴族で構成されているが、この大陸の風習で王族貴族達はそんなに私兵を持ち合わせていなかった。

 まして太平の世で軍など無用の長物。

 結果、よそ者の傭兵に委ねる不名誉なしきたりが常。

 王国の誉れにして大陸最強騎士団も、訓練もろくにやってない権威と見栄だけの集団に成り下がっていた。


 そして人望だが、ホーキンス侯爵に勿論そんなものはない。

 金で雇っていた傭兵でさえ、半数は見限って戦場より撤退した。

 なので、私語は行き交い、従者でさえ酒を飲む者もいる。

 貴族の勝手で最後尾には婦女や嗜好品を売る商人も同伴を許していた有り様だ。

 これはもう軍ではなくただのパレードである。


 そして、ヴァージニアの周りも例外ではない。


「貴様、ただの下級騎士の分際で俺より前に出ようとするな!」

「本当に何でこんなのと同じクラスメートなんだ? 俺の実力まで疑われてしまうじゃないか」

「おいソード、田舎者は田舎者らしく肥溜め担いでいればいいのだ!」

「違いない!」


 上級貴族の子息達はヴァージニアを嘲笑う。

 片手には酒や干し肉が握られていた。


 貴族の一人が無理矢理割り込み、「邪魔だ!」ナポレオンを蹴る。

 よろめくが幸い何とか態勢を保った。


「ルブラン卿、危ないじゃないですか!」


 卿とは騎士階級を持つ者の呼称。

 国に認められた者がこの栄誉を許される。

 サーとも使うがここは卿で統一。


「お前は昔から目立つんだよ! 腹立たしい」


 同じ貴族学校に通っていたので、お互い顔見知りだった。

 だが、それだけの関係。

 貴族でも位が違うもの同士で友情が生まれる事などあり得ない。


「皆様方、今はお役目中ですぞ。ご自分の隊列に戻り、私語は慎むべきかと」


 ヴァージニアは感情を殺し敬意を払い、ゴスロ伯爵仕込みの敬語で話す。


「お前みたいな臆病者とは違う! 我らは神に選ばれし存在だ!」

「俺は昨日一匹スライムを仕留めたんだぞ!」

「私はゴブリンに挑んで一太刀浴びせたんだ!」

「ははは、貴様ではそんな高等芸など出来まい!」


 あまりの程度の低い自慢話にヴァージニアも呆れた。

 挑んだというのも虚言で、腰が抜けて剣を振ったのがたまたま当たったというのが正解だろうと、尻に付いた泥を見てほくそ笑む。

 その証拠に上級貴族には屈強なボディーガードが周りを固めている。

 あながち予想は外れていない。


 死地を経験した事で、彼らの程度の低さに自身も驚く。

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