決死隊
(でも、だから何なんだ。決め手がなければ総力戦になったら体力の無い僕らが圧倒的に不利だ。確かにこれだけのスキルを活用すれば勝てるかもしれない。でも、こんな戦闘中にやるなんて新たなプログラムを組み上げるみたいなもの。何とかあるものだけで切り抜けないと――)
『あれ、なんだろうこれ?』
ハルトはあることに気付く。
バクリュウキョウの身体の一部が赤く点滅しているのだ。
「これもスキルの恩恵か?」
慌ててやったせいで、隣にあった弱点探索スキルのレベルも一緒に上げてしまった。
全アーケードゲームユーザーなら共有できるタッチパネルの弊害であった。
『ヴァージニアさん聞いて。一つだけ光明がある』
「なんだっちゃ!?」
ハルトが作業している間、体の主導権が戻ったヴァージニアは全方位から攻撃が来るので防御に全神経を集中していた。
『バクリュウキョウの体に弱点を発見した』
「弱点? あんな無敵要塞みたいな奴にそんなものがあるんだっちゃか?」
『ある。詳しくはまだ説明している暇がないけど、この情報は絶対の自信がある』
それだけハルトはヴァニシングライダーというこのゲームに魂を預けていたのだった。
「残りの命を全て賭ける価値がある程か?」
『もし、ヴァージニアさんが本当に死ぬ気で挑む覚悟があるのなら。それにこれしか勝機を得る方法がない』
「変態、その言い方は卑怯だっちゃ」
『どのみちここで防戦するぐらいなら、もうリザードマンに接近戦を挑むしかない。それしか僕達が勝つ方法がないよ』
だが、ブーメラン真空波が次々とヴァージニアを襲う中、避けても避けても戻ってくる厄介な攻撃に、攻略方法が見つからず近付く事さえ不可能だった。
攻撃パターンが変化してからは敵自ら斬り込んでこず、飛び道具に執着する。
ハルトはこれもバクリュウキョウの駆け引きだと思い、中々踏み込む勇気がなかった。
「今のままではとても勝てる気がしないっちゃ」
『そんな事はないよ』
ハルトは子供に言い聞かせるように、静かに優しく、『見た目はどんな蟻の這い出る隙も無くても、必ず途切れ目があるんだよ。僕を信じてくれないかな?』運命共同体を諭す。
レトロ鬼ムズシューティングをワンコインでクリアした彼だから見えている世界がある。
ここは僕の腕の見せ所と、全体マップくまなく方向を確認。
ハルトはランダムに見えて方向に一定の法則を発見する。
「分かった。信じる」
『ありがとう』
「でも早くして。私はもう限界だっちゃよ」
その言葉は真実だった。ゲージが点滅、あと数撃でゲームオーバーを指し示していた。




