バクリュウキョウの罠
第一回ノベルアッププラス小説大賞第一次選考通過作品
『くそっ! 全てはこの罠に誘い込むための布石だったのか。僕の判断ミスだよ。考えが甘かった』
「バクリュウキョウに弄ばれていただけだったか」
バクリュウキョウのおだてで湧いたハルトの自信が油断を誘い、真空波の攻略法を見誤った。
もう少しで何かを掴めそうというのが相手の罠で、踊らされて自分の驕りだと言うことに漸く気付く。
ハルトは夢中になり過ぎたのだ。
「まだまだ甘いな。過信と驕りは実践経験のない奴はよく陥る。結局生き残るのは血と屍を踏み越えた数よ」
『僕はまんまとリザードマンの口車に乗っかってしまったってわけか』
これも褒めて伸ばすゆとり教育の弱点とも言える。
ヴァージニアは神の祝福を受けた防具を装備しているので、幸いあれだけの攻撃を受けてもまだ若干残っている。
この世界の御加護は馬鹿に出来ないと、ハルトは改めて異世界をファンタジーと感じていた。
ハルトはエンドレスに徘徊する真空波から逃れる為、安全地帯を探し当て射程外へ身を置く。
これ以上身勝手なプライドのせいでヴァージニアの体力を悪戯に減らすわけにはいかなかったからだ。
『このままじゃヴァージニアさんが危ない。降参しようよ?』
「この期に及んで何をいっているんだっちゃ! 危険なのは分かっている。でも、このリザードマンに勝つしか活路が拓けないんだっちゃ」
我に返ったハルトは白旗を上げる事を提案するも、騎士としてのプライドか、ヴァージニアは立ち向かうことを選択する。
だが、戦闘の駆け引きでは相手が一枚上手。
今ごろ気づいたこの圧倒的劣勢に、ハルトは相手に飲まれて匙を投げかける。
ゲームだったらリセット&ロードしている所だ。
「ヴァージニア・ウイル・ソードよ。そろそろとどめだ」
「はぁはぁ、ま、まだまだだっちゃ!」
「いや、もう詰んでいる。見えない断崖絶壁に立たされている事を知れ」
バクリュウキョウは矛先を満身創痍のヴァージニアに向ける。
死と常に隣り合わせの武官とは正反対に、騎士は焦りと共に呼吸を整えるのが難しくなっていく。
ハルトは悟っていた。
周囲に強力な真空波が振り子の様に稼動しているならば、安全地帯もバクリュウキョウが見逃すわけもない。
詰んでいるという言葉も頷けた。
「お前は私に教えを施していたのではないのか?」
その間にも闇に姿が掻き消され、バクリュウキョウの位置が把握できなくなる。




