つわもの共の宴
だが、相方に問いただす前に、
「さて、そろそろ頃合いか。ヴァージニア・ウイル・ソードに敬意を表して、俺の本気を御披露目するとしようか」
そう独りごちると、宣言した言葉を実行に移すかのように太い尻尾で地面を一叩き。
全身から腕に集束し念が、戟に籠り青白き輝きを発する。
「ふん!」
これ見よがしに戟の刃から放たれた視認不可能な衝撃波が大地を走った。
草木を寸断しながら、空気を斬りながら、シャープなサウンドを掻き鳴らし、目標の巨木を真っ二つに両断。
鈍い音と共に左右に別れて倒壊した。
「来た、師匠を殺した見えない一撃だっちゃ。馬鹿にして……。今までもったいつけていたのか?」
『ゲーム的にはラスボスの第二形態って所か』
勝負を付けにきたか、相手にゆとりが無くなってきたか、それとも別に意図があるのか、それはバクリュウキョウしか分からない。
「でも、あれは一体なんなんだちゃ?」
『居合斬りのようなものなのかな。ゲームの世界ではこの手の気合系飛び道具は良くあるが、原理は良くわかっていないんだ。ただ、今確信した。ソンゲンはこの一撃で首を落とされたんだ』
現実で一番近いものは発勁や気功術や抜刀術が存在するが、どちらも日常茶飯事に使いこなせるものでもない。
「ふん! お前はこれに耐えられるのか!?」
「変態、どうするんだっちゃ!?」
剣速に乗り、ヴァージニア目掛けて縦横無尽に切り刻んでいく様はまさにカマイタチ。
だが、少女本人とは対照的に慌てる事もなく体が数歩右にずれると、その横を突風が通りすぎ、終着地を粉々に破壊する。
そう、ハルトは目では捉えられない攻撃にフィールドの変化と音を頼って避けたのだ。
またも幼少からやり込んだゲーム経験値がハルトを助けた。
「これを初見で避けただと!?」
一撃必殺を見抜かれ武人は驚きを隠せない。
確かに五感を働かせれば対処出来ないこともないのだがしかし……と、前回とは別人みたいな相手の適応能力の高さに戸惑いと疑問を抱いた。
「はははっ、凄い!」
『ち、ちょっとヴァージニアさん黙ってて、音が拾えないよ』
ゴスロ伯でも見切れなかった技をいとも容易く見抜いた運命共同体に、ヴァージニアは一筋の可能性を抱いた。
同時におとぎ話の救世主が万が一でも真実なら、このように奇跡の連続なんだろうかと頭を過る。
間髪いれず矢継ぎ早に武人が放つ渾身の一撃を、ギリギリまで粘り騎士に紙一重で避けさせ続けるハルト。
端から観賞すると、まるでストリートダンスを披露しているように、リズムに乗って綺麗に決める。
心なしか広場が一回り広く感じるのは、その跡に残るのは薪になるしか活用方法がない無数の伐採された樹木が横たわっているからだ。
バクリュウキョウがいれば、開拓者と木こりは転職しか道はないかもしれない。




