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九死に一生、スキル発動する


「変態何とかしろだっちゃああ!」

『無理無理! まずい、やられる!』


 ハルトは考えを巡らせたせいで、一瞬、敵の姿を見落としてしまう。

 足場の悪さを鳥をも掴める跳躍力で補い、急所を捉えた勢いのある一撃。

 しかもバクリュウキョウは鎧の防御が薄い箇所と大剣の可動限界の特性を見抜いていた。

 ハルトはスピードタイプとまで見抜いていたのに、強い奴ほど技に固執してジャンプ攻撃はしてこないとゲーム的固定観念を持っていたのがこの油断の原因だ。


 ヴァージニアは覚悟して、「くっ!」思わず目蓋を閉じフェイドアウト。

 だが、自分の最後を目に焼き付けないのは騎士として失格だが、幾ら待っても衝撃と痛みが感じない。


「……………………あれ? 痛くないだっちゃ」

『良かったゲージが全然減ってないよ!』

「俺が外しただと!?」


 三者三様の反応。

 信じられない少女は、体を入念にまさぐるように確認するが至って普通。

 ディスプレイにはテロップで強運の二文字が流れていった。

 そう、強運のスキルを上げたお陰で、偶然にもヴァージニアが体勢を崩し、戟の攻撃が猫パンチ程度の威力になってしまった。


 ハルトは思わず胸を撫で下ろす。

 もう一度スキルを開くと、『強運』はどういうわけか受理されていた。

 だが、同時にあることに気付き、これはまずいと、口に手を当てる。


『ごめんヴァージニアさん!』

「なんだっちゃっ――――フミュゥゥ!」


 どうしてだか、足下にバナナの皮。

 ヴァージニアは受け身できずに顔面から豪快にずっこけた。


『コケるよ』

「この馬鹿! 言うのが遅いっちゃぁ!」


 ケームでは反映されない運営のくだらない洒落が、現実にヴァージニアを苦しめているとは知るよしもない。


「小娘、良く躱した」

「こんなの自慢にもならないっちゃ!」


 敵の称賛も泥パック状態の顔面をマントで再び拭う少女には寝耳に水。


「いや、謙遜するな運も実力のうちだ。この運が無いお陰で多くの実力のある武人達が命を落とした」

『そうだね。終始優勢に攻めても、ちょっとした油断で、ハメ技食らって負けたことなんてざらだよ』


 戦いの世界を生き続けるイクサビトらしい深みのある重い言葉だった。

 対して、ハルトが語ると何故か軽く感じた。


「……」


 ここでヴァージニアにとある疑問が浮かぶ。

 ハルトが予想外の活躍で気にも留めなかったが、あまりにもうまく行き過ぎではなかろうかと。

 昔いた家庭教師のような中身の無い社交辞令と今のバクリュウキョウが被ったのだ。

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