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戰(いくさ)少女と現代少年


 髪に絡んだ葉っぱを取り除きながら、「女の子を放って置けるわけがないじゃないか」然り気無く手を置く。


「ぐすん、私の方が歳上だっちゃ」


 複雑な心境なのか涙もろかった。

 恥ずかしそうに手を払い除ける。


 ハルトはポーチから取り出した水のペットボトルにハンカチを濡らして、少し腫れた血と涙を拭う。

 幸い何故か外傷が少ない。

 何でも鎧に神の加護を付与しているので外傷を軽減しているそうだ。

 騎士たるものいかなる時も、民草に無様な姿を晒してはならないという、師匠であるゴスロ伯爵の教えである。


「それにお前みたいな変態よりはずっと強い」

「たはは、そうだね。面目ないです」


 ヴァージニアは真実を語っているから、男の面目立つ瀬無し。

 しかし、こんなゲーム変態にも五分の魂、譲れないものもある。


(この子、本当に可愛いなぁ)


 こんな絶体絶命の死地で、案外神経が図太いハルト。

 絶望が一時的にも回避したのだ、その余波で気が抜けるのも頷けた。

 

 腰まで続く眩い金色の髪。

 例えるなら光沢のある糸飴の繊細さがここにあった。

 そこに荒々しい性格を協調しているみたいなウェーブが掛かった剛毛が、モンブランのボリュームに跳ね上げている。

 ちなみに土と葉っぱの味はしても栗の味はしない。

 長いまつげ、二重まぶた、切れ長の目、その奥に奉納されているのは深海レベルのサファイア。

 寒天かゼリー程の透明度がある。

 カスタードクリームを彷彿させる柔らかく滑らかな肌。

 鼻は低めで、口元はへの字、歌舞伎役者の如く固く結んでいる。

 背は低い。

 本人が二番目に気にしているぐらい低い。

 彼女の一番の特徴は指摘したらブチキレること間違い無い、万年不作の実らない胸……、ではなく独特の高音ボイス。

 柑橘系の甘酸っぱさとミントのような清涼感を彷彿させる、いわゆるアニメ声であった。

 その威力は声優慣れした玄人のハルトを一瞬に鷲掴みしてしまうほど凄まじい。


 でも、この後どうしようか? 

 自慢だけど、鍛えているのはゲームの腕と断食とハーレム願望からくる妄想力だけ、とてもじゃないが戦場のど真ん中で生き残るサバイバル術は持ち合わせてはいないと、こんな事ならガキの頃ボーイスカウト辞めなければ良かったと今更後悔するハルト。

 人間不適合者までは行かなくても、負け組ルート決定と宣言して良いぐらいの見事な負け犬っぷりだ。


「もう、万策尽きたっちゃ。せめて変態だけでも隠れてやり過ごせだっちゃ」

「僕の名前、変態決定ですかぁ!? せめて名前で」

「あ”!?」


 な、何でもないですと、トーンを落としながらも、生まれた世界からくる感性の違いか、まだヴァージニアほど諦めていなかった。

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