圧倒的実力差
「チビ、次はお前である!」
「くっ」
唯一ゴブリン兵を翻弄しているヴァージニアを目障りに感じ始めたソンゲンは、骸と化した兵士を投げ捨て、一歩一歩勇敢な少女に歩を進める。
ハルトの心が訴えた。
あの子を見捨てるのか?
だが同時に、僕にあの子にして上げられる事なんてない。どうせ、これはゲームだ、現実じゃないと。
臆病の模範的回答も返ってきた。
「うおおおおお!」
雄叫びを上げながら勇敢なる少女は抵抗する、抗う、悪あがきする。
足止めに次々と襲ってくるゴブリンを辛うじて躱しながら、大型の鬼の攻撃ルートを算段。
「無駄である。為す術もない圧倒的な蹂躙が我輩の美学。お前の死によって完遂するのである」
鬼の長いリーチから繰り出した金棒の一撃は計算より射程が長かった。
寸でのところで鼻をカスリながらも間一髪、バックステップで躱す。
生まれて初めて低い鼻に感謝しつつも、この来襲で生まれた僅かな間を活用、懐まで香車を彷彿させる突破力で間合いを詰める。
動きが鈍いオーガ族だから可能だった。
もしあのリザードマンであれば一太刀で屠られていたであろう。
「まだまだだっちゃ!」
下段からオーガの足を狙って一撃。
よろついた隙にその状態からスライディングで股を潜り抜け、蔦を使って傍観者の一本へよじ登り、大型の剣が背後から首を狙う。
打撃に特化しているので切れ味は悪いが、致命傷を与えるには十分だった。
風で流れる長い金色の髪が西日で煌めく様は、さながら閃光。
一本線の残光がハルトの目に焼き付く。
だが、アクションや格ゲーと違い、現実は攻撃モーション中は無敵ではないので、無数の矢が行く手を遮り、その間にソンゲンの大木の如き肘鉄がヴァージニアに直撃。
「ぶっ!」
そのあまりのインパクトでピンポン球のように反動でバウンドし、鎧の一部が衝撃で変形する。
思わず体内の物を戻したが、矢継ぎ早、オーガの動きが遅いのを利用、剣を連結部分目掛けて切りつけた。
しかし反動でヴァージニアの腕が痺れ、「何て硬さだっちゃ!」痛みで顔が歪む。
ソンゲンの体に傷ひとつ刻む事が出来なかった。
「効かないのである」
オーガ族の身体は竜族と同等に頑丈、武術の基本しか出来ない少女には、報いるどころか、歯牙にもかけられなかった。
まるで豆腐で戦車をワンターンキルするミッションに挑むようなもの。
呆然として気が緩んだ瞬間、「しまった!」ソンゲンはヴァージニアの体を鷲掴み、メジャーの一軍ピッチングと同列ぐらいの豪腕で、殺人アンダースロー。
ハルトが隠れている神木の幹に投げつけた。




