7. 帰還報告
深夜、玉座の間。
「戻ったか…。無事なようで何よりだ」
玉座から明らかにホッとした様子でユリウスに声をかけるのはユリウスの父、大公アウグスト=イエール=ビアスだ。
「はっ、父上。只今戻りました」
「うむ、話は聞いているぞ。なんでも強力な新種の魔獣が現れたとか」
アウグストは深刻そうな表情でユリウスを見つめている。
「はい。視認しただけでほとんどの兵が戦闘不能に陥り、生半可な剣では傷さえ与えられない。…恐ろしい相手でした」
ユリウスは悔しさを滲ませる。
「勝因はやはり…」
「『国落とし』、ナイア。彼女の助力が無ければ全滅していました」
アウグストは大きくため息をつく。
「ドラゴンすら軽く下す魔獣を凌駕する『国落とし』…か。歴代最速での白金級昇格で実力に疑問は無かったが、いよいよ国を単独で落とした話もあながち虚構の話でもない、か…」
「大公、やはりここは『国落とし』に貴族位など与えた上で国に取り込まれては?」
玉座横に侍っていた宰相ヴァルターが口を挟む。
「それはだめだ!彼女は地位や名誉を望んでいないし、無理をすればかの滅びた公国のようになりかねない!」
「ではどうすると?他国に取り込まれかねない根無しの大戦力。強大な魔獣が出現した現在においてもっとも避けるべきは『国落とし』の離反です」
深い皺の刻まれた顔。
冷徹な眼がユリウスを見つめる。
「それは!…私に任せてほしい。この国で友として彼女にもっとも近い位置にいるのは私だ。ユリウス=イエール=ビアスの名に誓って、彼女の離反は防ぐと約束する」
アウグストがおもむろに手を挙げ白熱しそうな議論を打ち止める。
「ヴァールよ、ひとまずはユリウスに任せようではないか。今、我が国としても彼女からの反感は致命傷になりうる」
ヴァールはまだ納得のいかない表情を見せるが一礼して後ろに下がる。
「ユリウスよ。『国落とし』の件はお前に任せる。今後必要なものがあれば言うがよい。そして、新種の魔獣についての詳細な情報や被害報告も後程提出するように」
「はっ」
「何より、よく無事で帰ってきたな。今日はゆっくり休め。以上だ」
「お心遣い感謝致します」
ユリウスの返答にアウグストは満足そうに頷いた。
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