↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亡国王女のその日暮らし  作者: ルリヲ・ドルバッキー
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/17

3.第三令息ユリウス

翌日、私はメイドさんからしずしずと提供された上等そうな紅茶をズズズと啜っていた。

うーん、美味しい紅茶だ。

品種を聞いて今度モモコに飲ませてやろう。

「お嬢さん、貴女のお名前は?良ければ今度お茶でも」

流れるように退室しようとするメイドさんの手を取り腰を抱く。

お茶の品種は仲よくなってから聞いても遅くないよね。

「いえ、その…困ります…」

あー、かわいいなこのメイドさん。

ちゅーしちゃおうかな。

などと考えているとガツンと頭頂部に凄まじい衝撃が走る。

「おいバカたれ。俺の私的応接室とはいえ王城内でなにをしている!」

妙に軟派そうな顔の良い男、ユリウスが拳を掲げ震えている。

「なにすんのさ殿下!私のプリティで完璧な頭部が歪んだらどうしてくれるの?!」

頭をさすりながらにらむ。

「知るか!あぁ悪かったな、君はもう行っていいぞ」

メイドさんは一礼してスタコラと退室していく。

「あぁ!私のメイドさん!」

「断じてお前のメイドではないし今後王城の人間に粉をかけるのはヤメロ!いいな!?」

「くそぉ!横暴だ!」

「うるさい!はぁ~、これだからお前の対応を女性にさせたくないんだ…」

「見た目に反してお堅いねぇ、三男坊は」

「俺だってちょっと気にしているんだから見た目の事を言うのはやめろ…」

ユリウスはドカッと不機嫌そうに柔らかなソファに腰掛ける。

「お前くらいだぞ、端くれとはいえ王族の俺にそんな口を利くのは」

「ふふふ、でもそんな事言ってもちょっと嬉しいのでは~?」

ニヤニヤしながら顔を覗き込んでやる。

「…チッ」

顔をしかめながら中空を見あげしばらく返事が返ってこない。

はい、勝ち。

その素直さに免じてこちらからお話を振って上げようじゃないか。

「さて、今回の依頼だけど、なんで急にドラゴン?」

ユリウスに向かい合う形でソファに再び収まる。

「ん、あぁ、俺の婚約者が物好きなやつでね。急にドラゴンの首をはく製にしたいとかなんとか言い始めてな…」

「えぇ…」

「肉にも興味があるらしい…」

頭抱えちゃった。

「自分で言うのもなんだけどさ、殿下って変な女に縁があるよね~」

「みなまで言うな…。まぁついでだがお前の戦い方も一度見てみたいところだったからな。今回の無茶ぶりはある意味ちょうど良かった」

「戦い方?」

「そうだ。全て明かせとは言わないが、親父や兄貴がな…」

「あー、なるほどねぇ。いい加減国を滅ぼすような危険人物の武力は把握しておけってとこかな…?」

ユリウスは少し居心地悪そうに首を縦に振る。

「まぁ、別に隠すような物でもないし、いいよ」

「そう言って貰えると助かる…。狩りについては、最短で2日後からを予定している」

「問題ないよ」

「あとは一応こちらで騎士団の一個小隊を動員するつもりだがどうだ?お前の腕を信頼はしているが曲がりなりにも俺がドラゴン狩りに出向くんだ。形として戦力を出さないわけにもいかなくてな」

「うーん、それも問題はないけどあんまり近づかれるとやりづらいから殿下の護衛に注力させておいてくれるかな?」

「承知した。あとは何かこちらで準備しておいて欲しいものなどはあるか?」

「それより狩るドラゴンの当てはあるのかな?」

「あぁ、リックの森で目撃情報がいくつか上がっていてな」

「結構近いね。ここから半日くらいか」

「中型程度の火竜種だそうだ」

「群れ?」

「いや、若いオスが一匹だ。手負いだそうでな、群れでのトップ争いに負けたんじゃないかと見立てられている」

「ふーん、それなら大したことはないか」

「大したことないとは言うが一応ドラゴンだからな?」

「まぁまぁ。ほら、私はだれ?」

にっこりと見つめてやる。

「はぁ~、まぁいいか…。油断はするなよ」

呆れたようにユリウスはこちらを見つめてくる。

「モチのロンよ」

「…因みにドラゴンの肉ってのは食えるもんなのか?」

「火竜種は経験がないけど食えなくはない…かな。珍味?うーん、お貴族様の口に合うかといわれると…」

硬くてゴリゴリとした肉の食感が口中に蘇り何とも言えない気分になる。

「うーむ、調理次第か…。まぁその程度の感想という事は一度食べれば彼女も満足してくれるだろう」

「そうであることを願うしかないね。そうしょっちゅう手に入るものでもないから」

紅茶を一気に飲み干しおもむろに席を立つ。

「さて、そろそろお暇するよ。友人とはいえあまり長いこと密室に男女二人でいるものでもないしね」

「おぉ、そうか。見送りは…いらないか。では二日後に、頼んだぞ」

「あいあーい」

久々の大きな稼ぎに少し気分が上がる。

モモコも喜んでくれるだろうし、しばらくはやさしくしてくれそうだ。

稼ぎが入った暁にはアンナちゃんに会いに行こうかな。

きっと許してくれるはず…許してくれるよね?


◇


「アリィ、居るな?」

ナイアの退室後、ユリウスが誰も居ない室内で静かに口にする。

すると、最初に部屋を出て行ったはずのメイドがユリウスの背後にどこからか現れる。

「彼女の周囲は変わりないか」

「数日前に王国の間者と思われる者が入国しました」

「そうか…。思った通り、やはり増えてきたな」

大きくため息を一つつく

「殿下の狙い通りでは?」

「まぁ、な。しかし実際に物事が動いてくるというのはどうしてもプレッシャーなのさ」

「『国落とし』の実力、私は未だに信じられずにいますが…」

「だろうな。俺だって自分の血統式(ちから)が無ければ信じるものか」

立ち上がり、窓から美しい王城の庭園を眺める。

「これから徐々に他国も彼女にちょっかいを出して来るだろう」

「それは殿下の血統式からの予測ですか?」

「いや、確定事項さ。『国落とし』がただの噂ではないと、白金級の称号が証明してしまったからな 」

「白金の称号は伊達ではないと」

「そういう事だ。引き続き、彼女の周囲を探って注意だけしておいてくれ」

「承知しました」

彼女の姿が空間に溶けるように消えていく。

「国を滅ぼすほどの個人戦力、我が公国が今後を生き抜くための生命線だ。他国にどうこうされるわけにはいかん。うまくやらねばな」

ユリウスの覚悟を強く感じさせる声が静まり返る部屋に溶けていった。


二日に一回程度更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。