16. ミーツ・プラチナム
ちょっと待て、メイセム=デイ?
例の白金級ワーカーがなんでこんなところに?
「あ、そうだ君!そこの君だよ!」
不意に肩を叩かれる。
「…あ、私?」
振り返ればメイセムがなにやら言いたげな表情で立っている。
「そうそう。あんまり女の子があんな殺気立つもんじゃないぜ?」
「は、はぁ…」
なんだこいつ…。
「かわいい顔が台無しだ」
スパン!
手が出た。
平手がメイセムの頬に刺さる。
別に嫌な気分になったとかそういう事ではなく。
なんだろう、キラッと星が飛びそうなほどの爽やかな笑顔に腹が立った。
自分でもびっくり。
「あ、のぉ~すいません。まさか手が出るとは自分でも思っていなくて…」
無茶苦茶言ってるのは分かるがそうとしか言えないのだ。
いや、ほんとうに申し訳ないとは思っている。
「グフゥ、気にしないで、良い平手だったよ…」
口の端から血を垂らしながらも尚胡散臭い笑顔を崩さない。
「流石、『国落とし』のナイアちゃんだ」
「…何故私の名前を?」
「おや、自分の知名度を認識していないのかい?一国を一人で滅ぼし、史上最短での白金級昇格。偉業だらけの新人ワーカー、知らない方がモグリってもんさ」
そんなに私は有名人だったのか。
全く意識していなかった。
もう少し外にも気を向けておくべきだろうか。
「ま、ということで仲良くしてくれよ。君には分かるんだろう?竜型魔人の良さが」
差し出された手をガッシリと握り返す。
「あぁ、分かるとも!」
今、理解した。
目を見れば分かる。
メイセムは信頼できる男だ。
竜型魔人の良さが分かる奴に悪い奴はいないのだ。
◇
「やはりだなぁ、美しい鱗と筋肉!これに尽きる!」
ドン!とメイセムがグラスを勢いよくテーブルに下ろす。
「しかしだメイセム君!このアンナちゃんのマズルを見なよ!短めだがシュッとしていて…非常にえっちじゃあないかい!?」
バシンと再びアンナちゃんに頭をはたかれる。
脊髄に響くね!
「分かる、分かるぞ!こう…顔をだな、咥えられたいよな…」
「あぁ~、分かる。…アンナちゃん!咥えてよ私の顔を!」
「今はお店だしぃ、また今度ねぇ?」
「聞いたかメイセム君!これが常連の力だよ!」
「くそぉ!羨ましいぃ!…この国に移籍しようかな」
その晩、私は代えがたい友を新たに得るに至った。
変態達の夜はまだまだ続いていく。
二日に一回程度更新予定です。




