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亡国王女のその日暮らし  作者: ルリヲ・ドルバッキー
第一章

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17/17

17. 武闘会の始まり

遂に武闘会が始まった。

町は祭りのように賑わい、異国の人々が行き交う。

あちこちの出店で商人が声を張り上げている。

歓声の上がる闘技場。

どんどん進んでいくトーナメントを殿下の用意してくれた特等席でぼーっと眺める。

「ナイア、はい、あーんしてください」

かぱっと口を開けるとモモコが揚げたパンのようなものを口に投げ込んでくる。

もぐもぐと噛んでいくと素朴な甘さに独特な香り、コクを感じる。

「お、これ美味しい」

「帝国の銘菓らしいですよ。気に入ったなら今度作ってみましょうか?」

「いいね」

「…もしかしてナイアちゃんって普段はそんな感じなの…?」

訝し気な目線が投げかけられる。

「そ、そそそそそんな事あるわけないじゃないですか!マイノ姉さん!」

狼狽えていると一際大きな歓声が上がる。

闘技場、その円形の舞台。

その中央で携えた武骨な剣を誇らしげに掲げる妙齢の男性。

どうやらベテランの銀級ワーカーが金級ワーカーを下すジャイアントキリングを成し遂げたらしい。

ワーカー歴の短い私としては未だに各等級での力量差が分かっていないがこの様子をみた限り中々の偉業のようだ。

「いやー、あの金級ワーカーはまだ昇格したてかな?動きに傲りが見えたね」

「お、メイセム君じゃん!」

「やぁ、同志ナイア。そちらの美しいお嬢さん方は?」

「モモコとマイノ姉さん。モモコはうちの家事全般と私のお世話をしてくれてて、マイノ姉さんは従姉妹」

「初めましてモモコさん、マイノさん。俺は白金級ワーカーのメイセム。ナイアさんとは同好の士として仲良くさせてもらっている」

「モモコと言います。先日はうちのナイアがお世話になったようで」

「初めまして、メイセムさん。マイノです。あの『守り人』にお会いできるとは、光栄です」

「ハッハッハ、よしてくださいよ」

そう言いながらメイセムはまじまじとモモコを眺める。

「うーむ、初めて見るタイプの魔人だな。美しい」

「お褒めいただき光栄です」

「メイセムくーん、あんまり乙女をじろじろ見るもんじゃないぞ」

気まずそうに咳払いを一つする。

「これは失礼した!」


トーナメントも終盤。

熱気は冷めることなく盛り上がり続けている。

「いやー、メイセムくんの解説付きだと分かりやすくていいね。私はそもそもワーカーの歴が浅井から実際に戦わないとイマイチね~」

「ま、経験の賜物かな。白金級の称号を戴いちゃいるけども戦闘力が特別高いタイプじゃないし、俺は怖がりだからね。しっかり観察ができないと生き残っていけないのさ」

「そういうもん?」

「そういうもん。もう明日が怖くて怖くて」

胡散臭い爽やかな笑顔。

あぁ、そういえばもう明日か。

「ふっふっふ、ご指導後ご鞭撻、よろしくお願いしますよ。『守り人』のせーんぱい」

「はぁ…ま、先輩らしく可能な範囲でご指導してやりますかね。『国落とし』の後輩」

歓声が上がる。

先程ジャイアントキリングを成し遂げた銀級ワーカーが肩で息をしながら最後の一太刀。

異様に筋肥大した対戦相手の拳を受け流し懐に潜り込む。

ピタリと首筋に当てられた刃。

諸手を上げ降参の意を示す筋肉ダルマ。

決勝戦、優勝者が決まったようだ。

一際大きな歓声。

番狂わせとなった決勝戦。

初心者ながら見ごたえのある試合だったと素直に思う。

誇らしげな顔で両手を突き上げるその姿は非常に輝かしい。


◇


輝かしい勝者を見つめる観衆の中に、一人の男がいた。

憔悴しきった顔。

正気を失ったかのような虚ろな目。

男の視線は闘技場ではなく、特等席の一角に向けられている。

その視線に気づく者は、誰もいなかった。


二日に一回程度更新予定です。

X始めました。

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