↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亡国王女のその日暮らし  作者: ルリヲ・ドルバッキー
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/14

11. 水入らず

数分後。

「お、帰ってきた帰ってきた」

いつの間にか指輪には美しい銀装飾が戻ってきていた。

念のため構えていた剣を下ろす。

「ごめんね、迷惑かけて。多分もう大丈夫」

微笑むマイノ姉さんの顔。

ふと、空気が緩む。

「うわー、これ結構良い血灯(ルーンランプ)だったんじゃない?明日にでも弁償するね」

壊れた血灯を手にとり申し訳なさそうな顔をする。

「そんな事より、マイノ姉さん。国を出奔した後何をなさっていたので?」

「う…やっぱり気になる?」

「それはそうでしょう」

「だよねぇ…」

バサバサと枝毛の多い長髪を掻きながら気まずそうに笑う。

「一旦さ、宿屋にでも行こうか。この状態じゃあれだしね」


◇


宿屋に併設された食堂。

ジョッキに入ったしゅわしゅわと発泡する酒をマイノは一気に飲み干す。

随分美味しそうに飲むものだ。

「いやー、改めてほんと悪かったね」

「いいんですよ、もう。それより…」

へなりと眉が八の字に下がる。

「あー、そのだね…。ちょっと後ろ暗い組織に籍を置いてて…」

まぁ想像通りだった。

昔から結構自由奔放な人ではあったけどあまり危ない橋を渡るような事はしない人だと思っていたが。

「最初はワーカーとしてやっててさ。これでも結構名のある方だったんだよ?」

ほら、と見せてくるのは金色をしたタグ。

金級ワーカーの証だ。

「3年前、市場に流れてきた教国の騎士の装備を見つけたんだ。それで、国が滅びた事を知った」

そう言って遠い目をする彼女。

当時はどんな気持ちだったろうか。

噛み締める唇からは悔しさが見てとれるようだった。

「それからはさ、ちょっと危ないとこに入り込んで情報集めて、公国が仕掛けてきたことを知ってめ。いつか火の海にしてやろうと思ってた。思ってたんだけどなぁ…」

「そこで私が公国を滅ぼしてしまった、と」

「そういうこと」

酒のおかわりをオーダーして受けとるなり一気に半分ほどを飲み下す。

「というかナイアちゃんさ、あの噂ってほんとなの?

「あの噂?」

はて、何か変な噂になるような事があっただろうか?

全く思い当たらないが、もし知らぬところで変な噂が流れていたら嫌だなぁ。

「ほら、一人で国を落としたってやつ。二つ名にもなってるみたいだけど流石に誇張だよね

?」

「厳密には二人なので誇張と言えば誇張…?」

ゴトンとジョッキを取り落とす。

酒がテーブルに広がっていく。

…あぁ、勿体無い。

「それ本気で言ってる?」

「もちろんですよ」

腕を組みあーだの、そっかーだの唸り始める。

提示された現実が受け入れきれないのだろう。

まぁ実際とんでもないことをやったのは分かっているので現実を飲み込んでくれるのをゆっくりと酒を呑みながら待つ。

「…よし、分かった。飲み込んだ」

「お疲れさまです」

「因みに二人ってことはモモコちゃんと、って事で合ってる?」

「その通りですよ」

「はぁ~、とんでもないな。異神」

「実際とんでもないですよ。ほとんど役に立たなかった私の血統式。それが一国を相手どれるほど凄まじいものになってしまったわけですから」

まぁ、その分使い勝手は非常によろしくないのだけども。


◇


「モモコ、はい。お夕飯、食堂で作ってもらってきたよ」

「ありがとうございます」

パンにサラダ、魚のスープと少しのお酒。

それらを客室のテーブルに並べていく。

「気を使わせてごめんね?モモコ」

「いえ、もう会えないと思っていた血縁なんですから。少しくらい水入らずで過ごすべきですよ」

不意にモモコが頭を優しく撫でつけてくる。

生暖かい慈愛のようなものを感じる。

「流石にマイノ姉さんの前だと恥ずかしいんだけど…」

「ん?あぁ、こっちの事は気にしないで、どうぞ続けて」

どこから持ってきたのかジョッキの酒を呷りながらこちらを見つめるマイノ姉さん。

人の愛情表現と羞恥を酒の肴にしないでもらいたい。

「そういや聞いてばっかりで申し訳ないんだけどモモコちゃんってどこから物食べるの?口…とかないよね?」

「む、ハレンチですね、マイノさんは」

「ハレンチだったの!?」

「というのは冗談です。ご興味があれば存分に観察してください」

モモコは手を料理や飲み物に滑らせていく。

すると手の触れた部分が綺麗に消えて無くなっていくのだ。

「おや、女将また腕を上げましたね。魚の下処理が完璧で雑味がない」

「おわー、それで摂食するんだ…。すご…」

何が面白いのかその様子を食い入るように見つめている。

「ん、やはりマイノさんはハレンチですか」

「…反論できないかも知れない」

そこは反論して欲しかった。

私の理想のマイノ姉さん像を守るために。

「ふう、御馳走様でした。魚の処理は後ほど女将さんに聞いておきましょう」

マイノ姉さんが、なぜか拍手を送った。

モモコは丁寧にお辞儀を返す。

なにこの…なに?

困惑と共に夜が更けていく。


二日に一回程度更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。