大晦日、首都で倒れた少女
大学がある首都ディモイゼは、
とにかく空気が合わない。
上京してから、
心身共にひどく不安定になっている。
ツヴェルフェト王国の大王がいる大神殿などは、
見るだけで吐き気がするほどだ。
「首都ディモイゼそのものに原因がある。」
思わず、そう考えてしまう。
でも、そんなことあるわけがない。
うまくいかない人生を恨んで、ディモイゼに八つ当たりしてはだめだ…………
しかし、母が世を去った頃から、
不調は明確になった。
――憎悪のような感情に取りつかれて、目まいがする。
――常に空腹で吐き気がする。
――金輪が嵌められたように、頭がギチギチと痛む。
――うなじは焼けつくように痛くて、痒い。
冬の長期休暇に入る頃には、
私は頻繁に大学を休むようになっていた。
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大晦日の夕暮れ……
ツヴェルフェト大学には人影もない。
私は、高い塔の屋根によじ登り、
ドーマーに頭をもたせかけて、街の光を遠く眺めていた。
高くて、狭くて、誰もいないこの場所は、
多少なりとも私を落ち着かせてくれる。
ふと空を振り仰ぐと、鼠色の雲が空に広がり、
ゆるゆると雪が舞い降りてくる。
随分冷えてきた。
あと数時間で訪れる新年に向け、街並みに光が満ちていく。
私はブルリと身震いすると、
屋根をするする走り、ポプラの大樹を伝って地面に降りた。
食堂は閉鎖され、寮の自室には食料もない。
やむを得ず街に向かうが、
案の定、妙な憎悪の感情が沸き起こり、激しい目まいが襲ってくる。
それでも、笑いさざめく人混みを縫って何とか食料を調達した。
――しかし、もう限界だった。
大きな橋の中央で、とうとう歩くこともできなくなった。
呼吸が苦しい、
動悸が激しい、
声が出ない、
うなじが痛い、
光と音楽に満ちた街で、
ぼろ雑巾のような私に気づく人はいない。
急に目の前に止まった馬車と、背の高い人影の映像を最後に、
――私は意識を失った。




