大神殿で暮らす猫
1か月ほど経った。私は、大神殿で暮らしている。
残り2か月ある大学の休暇中、大神殿でシリウスと過ごすことになったのだ。
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私の一日は、鎮静薬を打つことで始まる。
この鎮静薬は、神殿で密かに研究されてきた、
神鼠への憎悪、食欲を抑制する秘薬だ。
少しずつ服用して体を慣らし、今では大腿部への自己注射に切り替えている。
この薬を服用してから、憎悪と食欲は湧くものの、
シリウスを見るだけで襲い掛かる、ということはなくなった。
さらに、上京後に悩まされてきた体調不良がすっかり治った。
やはり、体調不良は、私が猫族だったことが原因だったのだろう。
最初からこの薬があれば、
大学で、屈辱の日々を送らずに済んでいたかもしれない。
「体にだけは気をつけて。」
愛おしそうに私をディモイゼに送り出した、
そして、それが最期のやり取りとなった、お母様の顔が思い浮かんだ。
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朝の支度。
ここでは、着替えや支度、入浴まで、メイドが手伝う。
最初は恥ずかしさで消え入りそうだったが、最近は少し慣れてきた。
体調も良く、
質の良い食事を与えられ、
身体のケアもしてもらい、
我ながら、健康そうな猫になったと思う。
「具合はいかがですか?」
これはステファニー様。
最初の日、ステファニー様が、
トロス王であるロベルト様と対等にやり取りしている様子が不思議だった。
が、それも当然。
ステファニー様は神亥ハバリー州の現国王だったのだ。
ステファニー様は、6年前のシリウスの帰還以降、
ロベルト様と共にシリウスを補佐するため、ディモイゼにいるという。
補佐としての執務も行う一方で、12人の子供を育てたステファニー様は、
乳母のようにシリウスの世話をしてしまうらしい。
私に対しても、何かと世話を焼いてくださる。
服も、あっという間に何着も用意された。
ドレスを仕立てようとしたステファニー様を全力で阻止し、
なるべく簡素な平民服にとどめてもらったが、それでも上等な服である。
支度が済むと、壮麗な食堂で、
シリウス、ロベルト様、ステファニー様と朝食を囲む。
普段はシリウスは一人で食べるようだが、
再生計画の一環として一緒に食べるのだ。
もちろん、急に私がシリウスに暴言を吐いたり、
襲い掛かろうとしたり、
シリウスが恐怖でフォークを取り落としたりするハプニングが頻発する。
今日もそう……
「シリウス!目の輝きを抑えろ!!!」
「生まれつきです。
ああ、そんなに言われると、手が震えてナイフとフォークが持てません。」
「冗談を言うな!」
「本気ですよ。」
「嘘つけ!!!」
こんな具合だ。
当初は、食堂を引きずり出されたり、
神通力で制圧されたりしたが、
ある程度発散すると落ち着くし、
そもそも、シリウスの恐怖を端緒に感情を取り戻す計画。
基本的には見守られている……




