あの子を殺させないでください
「先ほどの再生計画ですが…」
私は顔を上げた。
「自分を制御できるとは到底思えません。
――大王が死んだらどうするのですか?」
「貴女が、シリウス様を死なせる結果になったとしても、
貴女に罪を問うことはありません。」
「死なせたくない!!!」
思わず叫ぶ私を、ロベルト様のカラスの濡れ羽のような瞳が見つめる。
「シリウス様が感情を取り戻し、神通力を安定させなければ、
この国は崩壊します。
……今回のあなたへの依頼は、十二支会議の決定です。
そして、シリウス様は、大王の重責を負う聡明な方。
この計画が重大な意味を持つことを、よくご存じです。」
私は、謁見の間に浮かぶシリウスの暗い影……
恐怖に耐えて唇に触れた震える手を思い出した。
――胸が掻きむしられるように苦しい。
「私が、この話を承諾したら……」
「承諾していただければ十分にお礼をします。それに……」
「私が承諾したら!!!」
私はロベルト様を遮った。
そんな話はしていない。
「シリウスは……大王は、
――少しでも幸せになるんですか?」
「幸せ…?」
ロベルト様とステファニー様は一瞬顔を見合わせる。
「正直に申し上げると、分かりません……
この計画は国の安寧を図るためのものですから。
シリウス様も国の安寧を望んでいます。
その意味で、成功すればシリウス様は幸せになるかもしれませんが、
反対に苦しむ可能性も否定できない。」
ステファニー様が静かに後を続ける。
「国が乱れた場合に苦しむのは国民。
……私たち十二支は、シリウス様が幸せになるかどうかを考慮に入れることはできないのです。」
二人の声を聞きながら、私は固く目を閉じた。
――首を傾げて私を見つめる澄んだ瞳
――優しくて冷たい指
私は拳を握りしめ、
泣き出すのを必死に堪えて言った。
「再生計画が終わるまで、
私に、あの子を殺させないでください。」
「猫族」の「野性」が蘇らないよう、
私は、必死に「自分の」「理性」にしがみ付いた。
「理屈は分かったつもりです。
でも、私は、あの子には死んでほしくない。
あの子の命が危なくなったら、
私の首を刎ねてでも、
あの子を助けてください。」
私は、真っ直ぐ前を向いた。
「――それを、約束してください。」
お二人は小さくため息をついた。
「分かりました。お約束しましょう。」
「では、承諾いたします。」
ロベルト様とステファニー様は立ち上がり、
私に深く礼をした。
令嬢もの、現代恋愛なども書いています。【BL】『終局の悪魔』(https://ncode.syosetu.com/n4565ml/)が9月16日完結予定です。感想・リアクション・評価など、ポチッといただけると嬉しいです!




