第41話 エピローグ 3人の反応と私達のこと。
とりあえず、これで終わりです。
あの後、我に返った私達は、アリル達に会いに行った。
マブルやお父様は私のために、色々と動いてくれていたようだ。まぁ、ヴィルランク家としては、謂れがないのだから当たり前だが、それだけではなかったらしい。
私とギル様の関係にはお父様や王様も疑問に思ってはいたようだ。そして、このまま関係が壊れてしまうようなら、上手いこと私を隠して、二人の関係を終わらせようとしてくれていたらしい。
私のことはお父様はもちろんだが、王様からも高く評価されていたようだ。王妃として国を支えてくれるのが一番だとは思っていたけど、貴族界から消えたとしても、貴族のしがらみもなく、ヴィルランク領で自由に暮らしたとしたら、勝手に面白い事を始めて、マブルがつなげば、国の為にはなるだろうと考えてくれたらしい。
私なら、何処に行っても上手くやるだろうし、それがヴィルランク領であるなら、私も受け入れてくれると考えたようだ。
まぁ、そういう感じの思惑に見守られて、ギル様は動いていたようだ。その為、周りに悟られない為にも、秘密裏に進んでいた。よって、イレギュラーな接触を、私のせいでしてしまったアリルは私達の話し合いが終わるまで、マブル達と軟禁されていた。
そこに会いに行ってみたところ、アリルに凄い勢いで泣かれた。私の返したネックレスを握りしめたまま、もうアリルの顔がぐちゃぐちゃで、男性陣には見せられないほどに。とりあえず、周りから隠すように抱きとめてあやし続けたので、アリルが一先ずの落ち着きを見せる頃には、私とアリルは一度退場せざるを得ない状態になった。
その後、私が戻った時には、2人には一応の報告は済まされていた。マブルもリンゼン様も何処かホッとした雰囲気を感じた。
あーあ、そんな顔を私達の為にされてしまえば、2人にも刃を向けたくなるけど、そんなことしたら、ギル様に怒られるかな?というか、怒ってくれるだろうか??
勝手に、笑みが溢れてしまう。
そんなことを思っている間に、ほとんど時間を空けずに、アリルも帰ってきた。
急いで戻って来たのがわかる雰囲気を感じたが、そうさせてしまったのは、私のせいだろう。
嬉しいんだか、申し訳ないんだか、複雑なところだ。
まぁ、この3人の顔が今からする私の話でどう変わるのかは、少し怖くも思うが。それでも、穏やかな表情で私を見てくれているギル様を見れば、勇気も湧いてくる。
今、貴方の胸にナイフを突き立ててから、説明を始められれば話も円滑に進むとは思うけど。それ以上にギル様を見つめてしまいそうだから、ここは抑えなければダメだろう。
そして、私は3人にも同様に、言葉を紡いだ。私の秘密に関しての。私の愛情表現を。彼の記憶をそっと添えて。人を殺したくてたまらないと、語ったのだ。
その後、私達の問題が解決してしまえば、進むのはアリルの物語だ。結果だけを取り出してしまえば、アリルは自力でリンゼン様を捕まえた。リンゼン様ルートに落ち着き、無事射止められたようだ。リンゼン様の家系は代々男性陣は頭が足りないため、頭の良い女性でないと、結婚相手と認められず、そしてその壁の高さは非常に大きい。だというのに、リンゼン様のお母様にもすっかり認められているようだ。リンゼン様とそのお母様を味方につけたアリルは、今では完全に貴族社会に溶け込んでいる。
あの日の話の後、アリルは今まで以上に努力を重ねたらしい。そして、私の元を度々訪れていた。それらしい理由や必要性を周りにアピールして、私と接触が出来る道を模索したらしい。
私は面倒な噂を立てられるならと、行動を制限したというのに、アリルは捻じ曲げて考える人間の方が不自然で、正当性のある会談であると、周りを誘導し、私に近づく機会を作るようになったのだ。
もともと頭は良いと思っていたが、思っていた以上だ。敵は敵だが、第三者は第三者でしかないと思っていた、私としては新しくも思えた。私は色んな事を考えて発信しても、何がしたいとか志しがあるわけじゃない。色んな人の考えを集約して、提案するだけだ。だからこそ、第三者を味方につけるのが上手いアリルのやり方は普通に感心した。
関心したのだが、ここまでの力をつけるようになったのは、私が原因らしい。全ての話を聞いた後、アリルは私を凄く怒った。
なんで、言ってくれなかったのか
と。
そして、それが私の本気の願いなら、私は笑顔で受け入れられたと、もっと早くに知っていたなら、私の命くらい差し出した。それで、私の心に永遠に残り続けてくれるなら、それだけで私は報われたと。そう怒ってくれた。
けれど、私が勝手に死ぬのは許してくれないらしい。死にたいなんて、消えたいなんて勝手に言うなと、本気で怒られてしまった。
そしてその結果、アリルは私と距離を置くのを辞めたらしい。二度とそんなこと言い出さないようにと、私は監視されているみたいだ。
それが功を制したようで、リンゼン様のお母様にも認められるほどの頭を持つようになったらしい。
マブルに関しては、少し引いているようにも見えた。多分それが通常の反応で、ほとんどの人がこの反応だろうなと思えるのに、それでもやはり寂しくは思ってしまう。
別に変に距離を置くような事も、会話の頻度が減ったなんて事もないけれど、私に対しての小さな違和感は拭えなそうだ。
たまに、こんな私を受け入れたギル様を見て、なんとも言えない表情をした後に、私を見て、生暖かい目が送られてくることがある。
なんというか、私にもギル様にも言いたい事はあるようだが、お互いがお互いを受け入れあってるなら、もういいかって感じに見える。
不名誉な目を向けるなと言いたくもあるが、一切の自覚がない訳ではないので、口を紡ぐしかないだろう。
そんなマブルも相手が正確に決まったようだ。今まで数人を転々としてるように思えたが、ここ最近は1人の娘といることが多い。今度、正式に紹介してもらう予定だ。
その時に、
『仲良くならなくて良いですからね。』
なんて、酷いことを言われた。
『何言ってるの?義姉として、優しく迎えてあげるわ。それにちょっとぐらい思うくらい良いじゃない。貴方が選んだ娘なんだから。』
なんて返したら、溜め息をつきながらも、
『それ以上は、ダメですからね。』
と、駄目押しされた。なので、私は小刀を片手に持ち、マブルに近づく。
『じゃあ、貴方には?』
なんて、聞いてみたら、少し震えつつ。
『ギルダントに言いつけます。』
と言われてしまった。
まったく。昔の可愛げは何処に行ってしまったんだか。悲しい話である。
最後にリンゼン様。リンゼン様には、俺にも思った事はあるのか聞かれた。なので、一応あると答えておいた。
そんな、リンゼン様はそうか。と頷くと、私と視線を合わせて、言ったのだ。
俺を殺したくなったとしても、俺はそれを受け入れられない。俺を殺したいなら、俺を倒せと。それが本気なら、俺も真剣に答えると。
そして、今後はアリルにも同じだと。アリルが受け入れていても、俺は納得出来ない。女性に手を挙げるつもりはないから、反撃はしないが、全力で守る。アリルを殺したかったら、俺から全力で奪ってみせろ。
なんて、言われてしまった。
それはほとんど拒絶の言葉だ。私の考えや気持ちについては触れていない。私という人間を否定する事はなかったが、答えることは出来ないと語られてしまった。そして、守るとまで。この国で一番と言っても良い剣豪に、言われてしまえば、私なんかでは確実に勝ち目なんてない。
それに私の殺し方は、最後の時間を大切にするために、時間をかけて行うものだ。いっしゅんで殺してしまう、暗殺なんかも出来ない。そうなれば、私がリンゼン様と真っ向勝負して、再起不能にするなんて無茶な話だろう。
リンゼン様からは、そんな言葉を貰ってしまった。
3人ともそれぞれの反応ではあったが、一応に言えるのは、私の事を完全に受け入れてもらえる事はやはり出来なかったという事だ。
殺される事を受け入れてくれたアリルも、私を殺してはくれない。私からの死も、私の為であり、アリルの気持ちは乗ってない。
マブルは、変わらないように過ごしているが、私を肯定する事はなかった。私という人間を持て余しているように思う。
リンゼン様は、私の考えに何か言う事もなかったが、だからこそ自身の信念を曲げる気もないのだろう。彼の力は大切なものを守る為だ。
だからこそ、一層思う。ギル様は私という人間を完全に受け入れてくれた。私の向ける小刀を見て、甘く笑ってくれる。私が淹れたお茶は、どんなものでも美味しく飲み干してくれる。
私の向ける愛情がどんな形に彩られても、ギル様は当たり前のように受け入れてくれるのだ。私はそんな人と巡り会えたのだ。
こんなに優しくて暖かい人と隣に入れる。私はそれだけで幸せだ。
結局、私の人生というものは、なんだったのかわからない。彼の記憶を私が手に入れた理由も、その中に含まれていた私達がモデルのゲームという存在も。
結局のところ何一つとして、わからなかった。
マブルやギル様とも話したが答えは見つからなかった。
私は自分に訪れる可能性のある中でもっとも最悪のものに対し、1番の恐怖を感じてしまったが、結局のところ、アリルはリンゼン様を選んだことで、私の苦労は一切の意味がなかった。
そして、それは結局のところ、あのゲームとこの世界は全くの別物であると言い切ることが出来なくなってしまった。
アリルがリンゼン様を選んだから、私とギル様はそのまま結ばれる事が出来たのだとも言えるだろう。
そう思ってしまうと、運命に踊らされたようにも感じてムカつくが、そうだとしても、ギル様と出会え結ばれた事には感謝しかないのだろう。
いくら考えたとしても、これ以上は不毛な事だ。なおかつ、私の知っている物語は、学園までだ。これ以上先の未来については一切の情報はない。
考えたところで無駄だろう。
それよりも。。。
私はギル様に目を向けた。
『ねぇ、ギル様。食べ物には食べ合わせが悪い事で、出来上がる毒性というものがありますのよ。』
『へぇ。そうなんだ。』
そう言って、私の淹れたお茶を一口飲んだ。
『今日の茶葉を飲んだ後、ここにある三種のうち一つを食べると毒性を持ちますのよ。けれど、先に別の一種を食べておけば、その毒が生まれる事はありませんわ。』
『なるほどね。』
私の言葉に顔色一つ変えず、甘い目で私の話に相槌を打ってくれる。
『それで、どれから頂きますか?』
『うーん、そうだなぁ。ヒールのオススメは?』
『。。。こちらですわね。』
『じゃあ、これにしようかな。』
そう言って、ギル様は、私の勧めた通りのお菓子を手に取りパクッと食べた。
『うん。美味しい。』
私は心臓の高鳴りが抑えられない。紅潮した頭が熱い。あぁ、運命とかわからない無駄なものが、全てどうでも良くなるように、微笑む顔が止まらない。
『ねぇ、ギル様。ご褒美ですわ。』
私は、別のお菓子を一つ取り、ギル様に食べさせてあげた。
『美味しいですか?』
私は今、幸せだ。幸せというものを、やっと知れたのだ。
ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。色々と思う事はあるかも知れませんし、人によっては、話の展開が読めたかも知れませんし、納得がいかない人もいるかもしれません。
そうだとしたら、長々と付き合わせてしまってすいませんという気にもなりますが、少しでも、数話でも楽しめた話があったら幸いです。
そして、この最終話まで来ていただけて、本当にありがとうございました。
色々と思う事とか、書いてて思ってたことについては、活動報告の報告の方にでも、思い出した順にテキトーに今から書いていくつもりなので、興味がある人は見てあげてください。
それらが、終わったら軽い設定くらいは乗せたいかなと思います。どうしても、本編に書けなかった、下書き程度ですけど。
終わったら、おまけ話みたいなのを書きたいとは思っていましたが、あまり思いつかないので、書くかはよくわからないです。気が向いたり、創作意欲が復活したらですかね。興味あるかわからないけど。
とりあえず、そんな感じです。41話と点5話の二つを入れて、43話を週一ペースというノロノロ更新かつ、時間も不定という、読み手ガン無視の更新に、長らく付き合っていただき本当にありがとうございました。
なんだかった、辛くも感じたり大変でしたが、すごく楽しくも思いました。
また、会う事があったら、優しくしていただけると嬉しいです。
では、また会う時まで。ありがとうでした。




