第40話 エンディング
めっちゃ長くなりました。4000手前ぐらいのところで、分けようか悩みましたが、そのまま描き進めました。
私は騎士達に囲まれながら、ギル様の後をついていった。
ギル様は今後どうするつもりなのかしら?私が考えた通りに動いてくれると良いのだけれど。
でも、少し違和感がある。平然と付いてきてしまったが、私の断罪は私がアリルを階段から落とした事をきっかけに計画が進み、数日の時を持って、たくさんの見物人がいる中で私への断罪が行われるはずなのに。
今から、何処に行くというのだろうか?
それに、アリルをまだ階段から落とす前だったのに。
この世界はゲームの中と起こることは同じだ。人々の思惑は違えど、起こる事柄は似たり寄ったりだ。
だからこそ、アリルを階段から落とし、私を完全に断罪できる状態を作ろうとした。アリルは少しだけ傷を負うが、ほとんど無傷に近い形で生還していたはずだから。
だというのに、来るのが少し早すぎる。あの場面は、何人かの目撃者に見られるだけで終わるはずだったのに。
まぁ、出来るだけのことはしてきたつもりだ。
その結果、ギル様が計画を前倒したのかもしれない。私としても布石は大体打ったのだ。もう十分だろう。
着いた場所は、いつも通りのギル様のお部屋だった。人払いがされて、お茶やお菓子がいくらか並んでいる。ただ一つ違うのが、部屋に入る時、外の警備がいつもより多く見えた。
けれど、それだけだ。私が女性だからって、罪人と疑っている相手と二人きりになる環境を作ってしまっていいのだろうか?今日、私が連れてこられたのはそういう事だと思うのに。
ギル様は、特に挨拶も無いままに、一口お茶に口をつけると、手元に資料を取り出した。
『君のおかげで、順調に資料が集まったよ。』
ギル様は、ため息混じりにそう言った。
『そうですか。』
何のとは、言われなかったが、大体わかる。私を断罪する為の、証拠が集まったのだ。
『前回の話し合いで、結局何も分からなかった。僕は君を理解出来なかった。君を追い詰めることしか出来ないと思ったから、僕はこの資料を集め出した。そして、気づいたよ。君が、証拠を集めやすいように仕向けているんだって。』
私は首を傾げる。
『何故、その様な事を?』
『減刑する為だろう?国家反逆よりも、周りにも迷惑がかからずに、処刑まではされずに済む可能性が高いから。僕も処刑までは、難しいと思っていた。けれど、国の目のつく範囲での、幽閉なら、何とかなると考えた。』
それが、私にとっての2番目に辛い終わりなのだ。
『そうですか。それで?』
ギル様はだいぶ感情が乱されているようだ。まぁ、混乱するのも無理はないか。
『今日、あの場で何をしようとしていた?あんなところから、アリル嬢を突き落とそうとすれば、殺人に近い。今も未遂だが、疑いが大きい。処刑されても文句は言えないぞ!』
ギル様からしたら、減刑を目指すなら、これ以上の汚点はいらない。王族からの幽閉を、どうにかして、領地への追放に変えることを考えるべき場面で、これ以上の汚点を作る行為は、理解出来なかっただろう。
私はニコリと笑った。
『そうですわね。』
『これは、アリル嬢の言葉次第かもしれないけれど、それにしたって意図が何も分からなかった。』
うふふ、それが狙いだもの。
私が今していることは、自己満足でしかない。私の為の行為でしかないので。正しさなんて、何処にもない。
私は王族に幽閉されるくらいなら、殺されたいと、そう思っただけだ。生きていれば、マブルやお父様が会いに来ることは、あるかもしれない。けれど、そうなった時では、私を殺してもらうには、2人のリスクが高すぎる。汚名にしかならないだろう。
その点、今アリルに処刑への道標を作ってもらう事こそが、私が取れる1最高の殺され方なのだ。
アリルが私を殺したところで、アリルにとっても、私が永遠となるかはわからない。私はそう思っていたが、違う可能性もある。それに、先ほどのアリルを見た限りには、確実に残し続けてくれるだろうと、思うことが出来た。
それが、アリルにとっては良い思い出かは、分からないが、私としては、無機質に何もなく、ただ命を奪われるだけというのは、一番嫌な終わりなのだ。ならば、私に死を与えるきっかけをアリルが作り、その中で死んでいくことが出来れば、私にとってはそれが一番最高な展開だろう。
私が幽閉されず、処刑されることがあったなら、それはアリルが私の願いを聞き届け、作ってくれた最後の道となり得るのだ。
これは、私の自己満足だ。事実が何であるかなんて分からない。それでも私は、私の中の最高の終わりを迎える為に、その道を進むことが出来たなら、実際にアリル自身に殺されるわけでなくとも、笑ってこの世を去ることが出来るだろう。その為に今日まで、動いてきたと言えるのだから。
『そうですか。』
私は一言そう返した。ギル様は、何かを悩んでいる。頭を回しているのは、見て取れるが、私から視線ずらすことはなかった。
しばらくして、ギル様はまた、大きめにため息をついた。そして、そのまま口から言葉を紡ぐ。
『なぁ、ヒール。君のおかげで、君を貴族社会から遠ざけることは確実に出来るようになった。アリル嬢からの調書を捻じ曲げてしまえば、最悪処刑される可能性もある。』
それは、困る話だ。そこまでの事はしないと思ったし、そんなことをしたら、アリルが黙っていないだろう。けれどそれは、私にはそれを、処刑が実行それるその日までに、確認をする方法なんてないのだから。
ギル様はそのまま続ける。
『もう、君はこの場からいなくなるのだ。僕に対して貴族として向かい合う理由もない。君が向かう道は、もうほとんど絞られたようなものなんだ。だからこそ、ヒール。君が隠している事は、今になっても話すことは出来ないのだろうか?もう君が何を語ったところで、君の迎える未来なんてほとんど同じなんだ。そんな今でも聞く事は出来ないだろうか?君のそれは、死を選んでまで、隠さなければいけない事なのか?』
今日この場を作ったのは、私に対する最後の確認か。確かに、前回のお茶会では、まだ、私も気持ちが決まっていなかったし、準備も出来ていなかったから、話す事は出来なかった。それに、話したところで、ギル様が選べる選択肢なんて、ほとんど一つに過ぎないと思っていた。私を消すという一点に変わりはなかった。
けれど、今となるなら、無理矢理、ギル様に事実を曲げられるという結果を得る可能性を考えるなら、話してしまっても良いだろう。
ギル様に私が人を殺したいと話してしまえば、ギル様は私を幽閉か処刑しか出来ないはず。けれど、私がこの秘密をギル様に話してしまえば、ギル様にとって、そのどちらかはどちらでも構わなくなるはずだ。
幽閉の場合、守りの強度が少し上がるだけだろう。
私としては死罪の方が嬉しい。
けれど、それはアリルが選んでくれた場合だ。
ここで、話しておけば、ギル様は下手に事実を曲げる事はしないでくれるだろう。
私が処刑される事に決まったとしたら、それはアリルが選んでくれた事である確実性が増すはずだ。
『いいですわよ。お話しても。』
『っ!本当か?』
『ええ。ですが一つだけお願いがあります。』
『………なんだ?』
『私が今から語る事には、私の願いとなる事があります。それを知った時、ギル様がその願いを邪魔しないとだけ、約束して貰えますか?』
『それは………』
『ギル様には関係のない事です。私とアリルにしか関係ない事です。ですが、ギル様が邪魔しようと思えば、出来なくもない事なのです。ですから、ダメでしょうか?』
『………善処はしよう。』
私が今から語る事で、ギル様が困る事は何にもない。何か思うこともないはずだ。ギル様が善処すると言ってくれたのなら、無理にアリルの意見を変えようとはしないでくれるだろう。
この人は、敵対しなければ、誰にだって甘い人なんだから。
私は、一呼吸置くと、口を開いた。
『では、ギル様でも理解が難しい話もあるかもしれませんが、一先ずお聴きください。』
そう前振りをして、私は8歳の時に得た彼の記憶と共に、成長するにつれて抱くようになった、大切な人を殺したい。そして、殺されたい。という気持ちを順を追ってお話しした。
『それがずっと君が抱えていた悩みなの?』
ギル様は、少し頭を抱えていた。
『ええ、そうですわ。』
『そっか、それは誰にも相談出来ないし、1人でずっと大変だったよね。』
『そうですわね。葛藤はずっとありましたもの。殺したって、揉み消せるだろうなとは思いましたし。』
『それを実行しようと思ったことはなかったの?』
『ありませんよ。思う相手は、お父様やお母様、マブルにアリルやマリネなどたくさんいましたし、侍女達なら殺して隠蔽しても隠し通せる自信はありました。それでも、実行は出来ませんでした。貴族として、ルールを作る立場として、そこを逸脱して良い立場ではない事は、理解していましたから。だから、私はずっと思うだけでした。』
『そっか。そーだね。ヒールらしいよ。』
『ですが、先ほども言いましたが、気づきましたの。別に私が殺す事だけが、大切ではないのだと。私が殺される側に回っても良いのだと。私は気づいたのです。ですから、どうかアリルの意思で私を殺す選択をしては貰えないでしょうか。』
私はもう一度念を押して伝える。
『アリルの言葉こそが、私の最後を決める筈です。そこで、彼女の意思を尊重してください。それが、私の最後の望みですわ。』
ギル様は悲しそうに下を向きながら答えてくれた。
『そっか、それが君の最後の懸念点だったんだね。よくわかったよ。下手な事はしないと約束する。』
良かった。気持ちは一応通じたみたいだ。ギル様からしたら、だいぶ意味のわからない話をしていると言うのに、ギル様はその辺りには触れないでくれるのかな。
『ありがとうございます。』
『ねぇ、 僕の話も一つ聞いて欲しい。良いだろうか?』
『何でしょうか?』
ギル様の雰囲気が改まって、真剣味が更に増した気がした。覚悟を決めて、私と視線を合わせた。
『もう一度、僕にチャンスを欲しい。もう一度隣にいさせて欲しい。今度はきちんと向き合うから。もっと、ヒールを理解するから。だから、お願いだ。もう一度、僕と一緒にいて欲しい。』
ギル様は辛そうで悲しそうな雰囲気を持ちながらも、真剣な眼差しで私に訴えかけてきた。
『な、何を言っているのですか?』
『わかってる。僕は今凄く身勝手な事を言ってるとは思ってる。君の秘密を勝手にこじ開けるような真似をして、それでもなお、君を求めようとするなんて、最低だって事もわかってる。わかってるけど、君が正直に話してくれたんだ。僕も最後くらい正直になろうと思ったんだ。遅かっただろうし、君からしたら、僕の自己満足に過ぎないかもしれないけれど。』
『ち、違います。そう言う事ではありません。』
ギル様は首を傾げて、では何だ?とでも言いたげだが、この人は本当に自分が言ってる事をわかっているのだろうか?なんで、そんな事が言えるのか意味がわからない。
『私の話をきちんと聞いていたのですか?理解してくれたのではなかったのですか?』
『ちゃんと聞いていたよ。』
頭が熱い。ボーッとして、頭の回転が鈍りそうだ。それでもつぐまなければいけない。不相応な事を言う、ギル様に理解させる為に。
『私は大切な人ほど、殺したくて仕方がないんです。ずっとずっとそう思って生きてきたんです。。。そんな私と一緒にいたいのですか?』
『あぁ、君が許してくれるなら、僕は君と共にいたい。』
訳がわからない。これはあれか、あれなのか?
『私がギル様を殺したいと思った事がないからでしょうか?』
『違う。そう言う事じゃない。そうじゃないんだ。今後はそう思ってもらえるように努力する。僕は君がずっと好きだった。わかってなかっただけで、好きだったんだ。その事にやっと気づけた。でも、僕は君をこうやって追い詰めてしまった。君が許せないと言うのなら、僕はこれ以上何も言わないし、君が望むようにするよ。でも、僕の言葉には偽りはない事を信じて欲しい。』
わかってる。ギル様が嘘を言っていない事も、本気で私を求めようとしてくれてる事も理解出来た。顔が熱い。動悸が早くなり過ぎて、体の感覚が変に感じる。
ギル様はまるで自分が加害者であるかのように語っているが、そんな事は無い。私はギル様の事は理解しているつもりだ。人を疑う事は苦手だし、交渉もあまり上手くは無い。そう言ったものは、私やマブル、他の家臣達に上手く任せていたはずだ。なのに、私という不審者だけは、ギル様以外に怪しむものは少なかった。思っても、それを口に出せる立場にいるものは、私の立場の関係でほとんどいなかった。ギル様からしたら、苦手な事柄に一人で対処せざるを得なかっただろう。後手後手に回るのなんて仕方がない。
けれど、1番の問題はそれらを全て理解した現在で、出そうとしている答えだ。この人はどんなに甘いのだ。
『わかっているのですか?私を選ぶという事を。私が何を考えて生きてきたのかも。』
『うん。わかってるよ。それでも、僕は君が良いんだ。大人の誰にも負けない知識があって、その知識を余す事なく使う発想力に、美しく手入れされた透き通るような水の髪。全ての人を包み込んで癒してくれそうな優しい微笑みと、磨き抜かれた身体。そして、上に立つものとしての立派な思想を持ってる。僕はずっと君に惹かれてた。いや、惑わされていた。その事に気付いた以上、気持ちに嘘をつくのはやめたんだ。』
頭の暑さが一向に冷めない。消える気配が見えてこない。それでも、思考を止める訳にはいかない。
『私が貴方を殺したいと思ったらどうするのですか?女王となり、民を大切に思うようになったらどうするというのですか?』
『それはわかってる。わかっているし、ヒールの事もわかっているつもりだ。君は今までどうしていたの?』
『どーしていたって?』
『思っていただけだろう?だから大丈夫だよ。僕は君のその言葉を信頼できる。』
ドクンと、大きく脈打つのが感じた。鼓動の大きさも早さも今までの比で無くなった。うるさいし、熱い。
『今はそうかもしれません。ですが、そんなものいつまで保つかなんて私ですらわからないのですよ。』
『だとしてもだ。僕が君の1番になって見せるから、その時は、僕を1番に殺して欲しい。その時に、僕も君を止めてあげるから。そうなれる為に準備をしよう。長い長い時間かもしれないけど、二人で進めていこう。僕らがいつでもいなくなれるように。君がいつでも願いを叶えられるように。僕はどんな君でも受け入れるよ。僕を見てくれるなら。』
思考を回しているはずなのに、頭の中で一つの文が支配する。他を考えるなと、馬鹿にでもなったように、他がうまく見えなくなってくる。私は狡い人間だ。酷く愚かで、馬鹿なようだ。ギル様の思っているような人じゃない。
ずっとずっと、わかっていた。気づかないようにしていたんだ。ゲームという似たり寄ったりのあの世界に翻弄されて、ギル様の本質からずっと目を背けてきた。叶わない夢ならば、見ないに越した事は無い。分からないなら、触れなければ良い。ずっとそう思っていた。いや、思っていたのかなんて、わからないけど、無意識下の中で、何処か鍵をかけていたような気がする。ギル様は私に無い発想をする人だ。たくさんの人の思惑の中で、翻弄されたり利用されたりするはずなのに、相手を恨んだりもしないし、たくさんの人に話しかけられるのに、誰一人無下になんてしない。面倒だとわかっていても、相手に触れてその本質を見る努力をする。それを当たり前にできる人なんだ。私なら、利を感じられなければ、簡単にあしらってしまう事があるのに、ギル様は全てを引き入れようとする。だからこそ、私の本質にも触れようとしたのかもしれない。
金髪の髪を揺らし、不安に思いながらも、強い意志を持った碧の目が私を見ていた。
何もわかっていなかったのは、私なのだ。ゲームという、不確定要素に翻弄され続けていた。ゲームの世界の彼が、私を見なくとも、目の前にいる彼はずっと私の事を見てくれていたのだ。
ある時から、勝手に諦めるような真似をして、心の中の何処でも、見かける事がなかったのに、無いようにしていたのに。
こんなにも強い目で求められ、言葉をかけられてしまったら、私の頭の中で霞がかかり見えることのなかった文字が私の頭を支配した。
『私は今、貴方を殺したくてたまりませんわ。ギル様!』
口をついて出た。他の言葉の思考が回らない。支配された文字を出さないと、動く気がしなかった。
『え、それは?』
『私だって、ずっとずっと惹かれていました。でも同時に諦めていました。ギル様を求める人はたくさんいると。先ほど話したゲームのように、それ以外にもたくさんの人が。そんな人が、私を選ぶはずないと、ずっと逃げていました。この本質を理解してもらえるはずがないと思っていました。』
だというのに、その事を話した上で、一緒にいたいなど、そんな言葉をかけられて、振り向かない訳にはいかないではないか。結果を知るまで、見もしなかったのに。
あぁ、やはり私は狡い。
それでも、やはり。
『私は貴方を殺したくてたまりません。』
ギル様は、言葉を聞いて、少し固まった後、だんだんと顔を赤らめた。
そして、突然立ち上がったかと思うと、私の方へと近づいてきた。
ギル様の右手が私の方に触れたかと思うと、何となく視線が下がってしまう。それを追うように、ギル様の手が下へ向かい、私の顎に触れたかと思うと、上を向かされた。
嫌でも、ギル様と目が合う。私はそのまま何も出来ないのかしないのか、わからないが、とにかく動きが止まってしまった。
ギル様は、笑みを浮かべると口を開いた。
『ヒール。僕も大好きだよ。』
頭がまた熱くなる。今まで以上に、熱が回ったのが自分でもよくわかった。
ギル様にも伝わったようだ。
『ヒール、なんだか熱っぽいね。大丈夫?』
片膝をついて、目線を下げてくれた。
『だ、大丈夫ですわ。それより、そんなところに座らずお席にお戻り下さい。』
熱いのを冷ましたいなら、対処法のんて一つだ。ギル様が離れて欲しい。
『でも、その前にね。』
ギル様が私の手を取った。
『これからは、僕が君を守るし、君の事を受け入れるよ。だから今後も、隣に居させてね。』
そう言って、ギル様が私の手に唇を落とした。
この時、私の中で色々とタガが外れたようだ。
私は薄っすらと笑うとギル様に抱きついた。
『もう、どうなっても知りませんよ。』
『うん、大丈夫だよ。今、覚悟を決めた所だからね。』
優しく返してくれるギル様に私も囁き返す。
『ねぇ、ギル様。ギル様は知っていましたか?私は剣の稽古と共に、始めた事がありますの。』
『?なんだろう?ん?』
ギル様の首筋に、隠し持っていた小刀を当てる。
『暗器を持ち歩くようになったのです。いつでもこうやって殺せるように。大切な人と抱擁した時に、いつでも殺してあげられるように。』
ギル様の顔が見えるように、少し体を反りながら、笑って見せる。
ギル様も、何一つ動揺する事もなく、私に笑ってくれた。
『驚いた。こんな事も出来るんだね。』
そう言ったと思ったら、素早く私の手首を掴んで、小刀を無力化する。そのままの勢いで立ち上がったかと思うと、ダンスを踊るように、少し移動して、ソファに向かって押し倒された。
手首は掴まれたままだが、小刀は私に覆い被さったギル様の方を向いている。
『僕も、今日は色々と抑えようと思っていたんだけど。難しいかもしれない。』
ギル様の顔が近づいてきた。軽くだが、口と口で触れ合った。私の小刀がギル様に突き刺せる位置で視線にも入っているはずなのに、ギル様はそんなもの気にせずに私の顔から視線をずらさない。
『ギル様?』
『ねぇ、ヒール。僕の愛情も受け取ってもらえないかな?』
『ん!』
一瞬だが、私も知らない声が出た。心臓が煩いし、顔も熱い。思考が目まぐるしいことになっているが、これ以上はいけない。ダメだと頭の中で警笛が聞こえる。
『ギル様、これ以上はいけませんわ。私たちは、まだ学生ですのよ。』
『そんなことは言っても、もう今更じゃない?』
ギル様の目が私の小刀に向けられる。
いや、そうかもしれないが、だとしてもそれとこれとは違う問題のはずだ。
私は思考を放棄したい欲望を抑えて、なんとか回す。
『ギル様。私は一度でも、規則を破ってしまえば、何をするかわかりませんわ。それでも良いのですの?』
『……………それは、ダメだね。』
ギル様は一瞬の間の後に、私から体を離した。
私も安堵とともに、小さなもやもやを抱えつつも、起き上がった。
『ねぇ、ヒール。卒業したら、出来るだけ早く結婚しようね。』
ギル様は甘く微笑んでいる。それがなんか恥ずかしい。
『でしたら、学生のうちに、色々と進めなければいけませんね。』
『うん。そうだね。』
皇子であるギル様の結婚だ。色々と考える事が多く面倒も多い。したいと伝えた後では、かかる時間がどんなものかわからない。準備は早いに越したことはないだろう。
あ、そうだ。これも聞きたかった。
『ねぇ、ギル様。結婚したら、私がお茶を淹れても良いですか。』
『それは、僕としては嬉しいけど。良いのかな?』
『ええ。その方が嬉しいですわ。ギル様は、知りませんか?医療計画と共に進めた茶葉の調合ですが、毒というものは少量では効果の薄いものもあります。淹れてしまえば味では分からなくも出来ますし、食べ合わせ次第で毒になるものもあるのです。ギル様の中に少しずつ毒を蓄積させ、私の愛情が溜まりきった時、ギル様の命を取る事も出来たりするのですよ。』
ギル様は、私の目的がわかったようで、嬉しそうに笑った。
『それは楽しみだね。お願いするよ。』
その言葉には、一切の曇りなんてなかった。
ああ、私はなんて恵まれているのだろう。
一応これが、最終回のつもりではいます。
いますが、来週エピローグみたいなおまけ話を書くつもりでいるので、そっちがちゃんとした最終回かもしれません。
とりあえず、ここまで読んでいただきほんとうにありがとうございました。
あげる時間とかもめちゃくちゃなのに、毎週一定数の訪問をいただけてそれが凄く励みになりました。ありがとうございます。
あれ?エピローグはおまけに入らんか?
そうだよね。回収してあげないと可愛そうな人たちいるもんね。
この二人はそのへん理解した上でイチャラブして欲しいですね。はい。
って事なので、出来れば来週もよろしくしてもらえると嬉しさがやばいです。
とりあえず、ありがとうでしたー!




