第33話 学園主催のお茶会イベント
こんな時間ですいません
学園では、社交の練習と評していくつかのイベントがある。学園はいくつかのクラスに別れたり、二年制の為別学年が存在するので、それらの人とも関わりを持ちやすいようにする為の大型イベントが多く存在するのだ。
今日はその社交イベントが、私達一年生としては、初めて行われる。
学園にある花畑の1つである北の庭園を大きく利用してのお茶会だ。草木は綺麗に整えられていて、道に迷うことはないが、ある程度花や草により、スペースがくぎられている。座って談笑出来るスペースがいくつか点在していたり、中央では立食パーティーのように、会話が出来るのだ。また、服装もパーティー仕様という事で、制服ではなく、ドレスを着る事になっている。
これはゲーム内にも存在したイベントである事は覚えているし、内容もわかっている。
確か、イベントの始まりとしては、会話した事のある攻略対象達以外に、知り合いのほとんどいない主人公は、誰かと話したいと思ったが、みんないろんな人達に囲まれているので、人が減るのを待とうと、適当に花畑を見て回り始める。
入り組んだ花と草木で出来た道に見惚れながら歩いていると、談笑スペースに出てしまい、引き返そうとするが、席を勧められる。
友達できるかなとか、ここに居ていいのかな?とワクワクしていると、遠回しに嫌味を言われた挙句に、手が滑ったと、紅茶をかけられるのだ。
そこでやっと、歓迎されていなかった事に気付いた、主人公は適当に取り繕って、席を後にする。
一度自室に戻り、身嗜みを整え直すのだ。本当は、あまり戻る気は無かったが、自室に居ても担当の侍女の人に心配されるので、仕方なく自室を出た彼女にここで選択肢が訪れたはず。
行き先が選択肢として出て、それにより出会える人が変わったはず。ここの選択肢は、今までに他の人に会った事がある場所がほとんどだったはず。マブルなら図書館で、ギル様なら東庭園、リンゼン様は運動場付近となっていて、レクター様が保健室だ。マーダント様だけは、普段と違うところにいるのだが、それは教師として当たり前のことだろう。
というより、生徒3人は自由過ぎんだろ。何で北の庭園での社交中に、別の場所で会えるんだよという、言葉をぶん投げてやりたい。
まぁ、実際、気持ちも分からなくはないんだけれども。
このお茶会は、最初のイベントであり、他学年と他クラスとの関わりが、初めて持てるものとなっているため、割と長い時間を割り当てられている。
その為、全く休憩なく社交を続けるのは疲れるのだろう。けれどその為に、座れる場所が点在していて、休憩も出来るようにしているのだろう。
なのに、庭園を抜け出すとは。
マブルは、なんだかんだ、悪知恵が働くのよね。社交に疲れたら、やりそうな気はする。今日、本当にやってたら、注意してやろう。リンゼン様は、ずっと喋るだけっていうのは、得意ではないのだろう。なんとなく想像がつく。軽く身体を動かす為に、抜け出しそうね。
ただ、ギル様はあまり想像がつかなかった。なんだかんだ、ギル様はそう言うことはしない人だと思っていた。決められたことは全うするというか。なんて言うべきかわからないけれど、迂闊に一人になるべきではないと思う。
まぁ、そんな感じに、また2人で出会う事の出来るイベントとなっていた筈だ。その中での会話としては、社交開始時の服装への言及で、会話から攻略対象は、なんとなく話を察するはずだ。この辺は、選択肢で色々と会話が違った気はするけど、主人公の方は、その事は気にせずに、服を見て貰えた事を嬉しく思いつつ、今着ている服が、その時よりも簡素なものになってしまった事を残念に思ってるという事だった。
流れとしてはこんな感じで、ある程度の会話が終わると、社交に戻り、中央の広場で大人しくしてその日は終わったはずだ。
この事から言えるのは、多分だが今回私に出番はない。出番はないし、アリルを助ける事も出来ないだろう。アリルに中央広場を出るな、というのも変だし、引き留める為に、アリルと広場で長いこと社交をするわけにもいかない。
何もかも気にしないで、スペースを1つ押さえて、アリルとお話でもしていたいとすら、思うけど、そんなことすれば、噂がどうなるかわからないし、本当に事故で、アリルのドレスが汚れた時、それこそ面倒な事にしかならない。
今日の私は成り行きに任せるしかないのだ。
しかし、アリルを助けられないからといって、何も出来ない訳じゃない。起きる事が分かっていながら、何も出来ない事は口惜しいが、それでも何も出来ない訳ではないのだ。
アリルに対し、非道を働いた者達を知ることができるのだ。私は絶対に貴方達を許してなんてあげないからね。私が力を持っている間に、ねじ伏せてあげるから、せいぜい今日という日だけを楽しむといいわ。
これらのことは確定事項として、私の中で存在しているけれど、私としての大事な事がもう一つある。それは今日という日は、一度しかないということだ。
今までのアリルの全キャラとの、イベント回収率は100パーセントだ。しかし、それはゲームでは、一月に2度のイベントだが、現実は365日あるからこそ、起きた事だった。しかし、今日のイベントはゲームでも現実でも1日しか訪れない。
そうなれば、確実に対象は1人となるはず。その1人こそ、アリルの相手となる可能性は高いだろう。まぁ、絶対とは全く言う事が出来ないのだが、十分に可能性はある。私の今後の、動きの為にも、この情報は掴んでおきたいのだ。
そんな気持ちで始まった、今日のイベントは、当たり前のように、私は忙しかった。他クラスはある程度交流はあったが、先輩方とはあまり交流を持つ機会が今までなかった。
私としても、交流をしたいという気持ちはあったが、ギル様の婚約者というのは大変である。捌いても捌いても、人の波が減らなかった。学生同士という事で、普段近づき難い人達も多く来る上に、簡単な挨拶だけではなく、1人に取られる時間も多くなっていた。
アリルの事は、いつも通り情報として持ってきてもらうしかないだろう。
私はその日、時間の限り社交を続けていた。途中、スペースの方にも移動したが、大半を中央で過ごすこととなったのだ。
だいぶ疲れたが、色々な話も聞けたので、有意義な時間に出来たとは思う。
もう寝てしまいたいという気持ちもあるが、アリルに関しての話だけでも、その日のうちにまとめて持って来てくれたので、私はその内容に目を通した。
内容の長さから、イベントはやはり起きたのだろうと思い、中間を飛ばして、最後の方に先に目がいった。今日のイベントの対象者がこれで分かると思ったからだ。
しかし、これは残念なことに全員だった。長いお茶会であると話した通り、アリルは割と暇をしていたのだろう。最初に会ったのはリンゼン様だったみたいで、会話も行われたようだ。その後、中央に戻ると、どう思っていようとディアネル家の令嬢ということもあり、話しかけられて会話をしたりもしていたみたいだが、それでも時間が余ったようだ。流石のアリルも同じ事になるのは嫌だったようで、適当に学内を回り始めた結果、他の対象者達とも出会う事になったみたいだ。
よって、今回もイベントは全員分回収された事になる。私の行動の指針にはあまりならなそうだ。
少し残念に思いつつ、憂さ晴らしの相手は誰だろうなんて考えつつ、アリルに酷いことをした奴らは誰かしらと、目線を移動させた。
そして、私は愕然とした。
なぜなら、私の行動は全く上手くいっていなかった事を思い知らされたからだ。
私は前回のお茶会で他の令嬢達に釘を刺したつもりでいた。
けれど、アリルは貴族として学園にいるのだから、それ相応の対応をするべきであることと、ギル様にも考えがあり、私自身も家柄を考えると、近づき難い事を伝えたに過ぎないのだ。
アリルを守り過ぎるわけにもいかないし、ギル様の婚約者である私が、私の派閥の娘達に言える言葉は限られてくる。そう思って選んだ言葉だったが、彼女達を刺激したに過ぎなかったのかもしれない。
いや、言わなくても、結果は同じだった可能性だってある。結局は、私が私である限り、私の行動に意味なんてものはないのかもしれない。
そう思うのも仕方のないはずだ。なぜなら、お茶会の主催者はエレブ様だったのだから。そして実行したのは、エレブ様同様に私を慕ってくれている娘だ。
私を陥れる為ともかんがえられるが、彼女達から、私への悪意を感じたことはない。そういう人の悪意を読み取る力は、マブルにも伝えていて、ギル様の近くにいる上で、最も重要な力だと思っている。だから、そこに疑いなんて持っていない。
持っていないからこそ、この結果には、愕然としたのだ。
彼女達が、私に不利益となる事をするとは思えない。
文章からも、アリルを注意した事と、アリルにお茶がかかったのも事故だと書いてある。
もし、私が何も知らなかったとするのなら、この情報を見たときに、事故だとしても、アリルになんて事してくれたんだって、軽く怒りつつも、アリルに怪我がないなら、次はないからな。と、頭に名前を刻むだけで終わった事だったのかもしれないが、今回のことは、そんな楽観視できる事に思えなかった。
前回無意識に、私がゲームの中の私と同じ行動を取ったという事実と、今回起きた事を別視点から考え直してみる。
ゲーム内の私と現実の私の行動自体は同じだったが、思っていたことは違ったはずだ。私は彼女を鼓舞したくて、堂々とした姿を見せていた。ゲームの中の私は、ただ公爵令嬢としての、存在感を見せる為に、あんな姿を見せていたのだ。
そして今回の彼女達の行動は、私を思ってのことで、純粋な注意と不慮の事故の可能性が高い。しかし、ゲームでは、悪意ある言葉の暴力と明らかにわざと起こした事故だった。
けれど、どちらをとっても、何も知らない人から見た情景はほとんど変わらないものとなるのだろう。
伝記や歴史も簡単に捻じ曲げられる。勝者が好きに作り変えた事実だと、私は思っている。
解釈を歪められてしまえば、簡単に結果は捻じ曲がるのだ。そこにいた人の思いなんて関係ない。結果を伝える場に立てた者の語ることこそが、真実となって大きく広がるのだ。
そういう考えを持つ私には、エレブ様達を責める事なんて出来なかった。事実が何処にあるのか、全ての視点から見て検討した結果、悪意がそこにあった場合以外、責めるなんて出来ないのだ。
そして、そこに悪意はないのだと、私は既に思っている。
私はこの感情をぶつける先を、完全に見失ったのだ。
展開に色々と悩んでます。
最後まで辿り着けるか、怖いです




