第26話 マブルから見た二人
前回、かくべきだったかな?と思う、超簡易な時系列書いときます。
ヒーランが、8歳で異世界人の記憶ゲット。そこから2年、知識欲おばけとなり、10歳でギル様と婚約。11歳で、昆布出汁。12歳で、医療計画。14歳でお母様を病で取られる。こんな感じです。そして、16歳が学園入学です
『ヒーラン嬢はますます美しくなったな。』
姉さんの演舞を見た次の日、リンゼンがそんなことを口にした。毎年2回ほど、披露してくれている。ヴィルランク家総出の医療計画で、僕や姉さんが色々していることに影響されて、ギルダントも王都の水路の見直しなど、実際に計画を練り始めたこともあり、回数は少ない。
今年は社交シーズンの終わりに一度しか開かれなかった。お母様のことがあったから。
お母様は、僕にとっても大切な人だった。人によっては、義弟の君より姉さんが辛いのだから、支えてあげなさいと言われることもあった。たしかにそうかもしれないし、そうするべきなのは、良くわかっていた。けれど、僕の想いが軽んじられているようで、複雑だった。お母様は、僕にとって貴族としてのお母様だった。産みの親では、わからない。貴族としての僕を育ててくれたのは、確実にお母様だ。過ごした時間が少なくても、僕にとってのお母様には、変わりはなかった。
話が脱線してしまった。話を戻そう。
姉さんの演舞はいつ見ても飽きが来ない。
本人は練習量や身体への負担を考えて、出来ない動きや身体の成長の影響で感覚が掴みにくい、なんて言ってる。
けれど、流石姉さんだ。自身の容姿や出来る範囲を考えて、毎回違った演舞を見せてくれる。
武で足りない部分を、心理学を応用して、視点誘導を行いながら、騎士の家系の令嬢では考えない、公爵令嬢らしい優雅な舞を披露してくれるのだ。
けれど、リンゼンが言ったのは、そのことではないだろう。もともと大人びた顔立ちだった姉さんから、少しずつだが、幼さが取れ始めている。身体の成長も著しい。
『そうですね。姉さんに向けられる嫌な目が増えました。』
『嫌な目ね。。一緒にいることも多いだろうから、マブルにはわかるのか。だとすると、ギルダントにもわかるだろ?きちんと、守ってやってるか?』
僕の言い回しに苦笑しつつ、リンゼンがギルダントに話を振る。
『ヒールはそう言った相手にも上手く対応するし、自分でなんとかできるよ。それに、彼女の社交の邪魔も出来ないからね。』
ギルダントの言葉は、冷たくも感じるが、言い分としては正しい。姉さんはどんな相手にも上手く対応するし、礼節をわきまえれば、相手を軽んじることもない。
だからこそ、下手に横やりを入れるよりも、姉さんが、助けを必要とした時に、助けてあげる方が良いのだろう。
そう考えると、ギルダントは姉さんのことを良くわかっている。
未来の王妃として大事にしてくれている。
『たしかに。彼女は社交も上手いからな。彼女と話をしていると、話題に事欠かない。本当に彼女はなんでも卒なくこなすよな。』
『あぁ、本当にね。』
リンゼンの言葉にギルダントは、少し寂しげに答えていた。
『そんなことないですよ。リンゼン。』
『え?そうなのか?』
驚いた顔で、リンゼンの顔が僕に向く。ギルダントもだ。
となると、ギルダントはわかっていないんだろうか。
『そうですよ。ねぇ、ギルダント。ギルダントは、姉さんをどう思っていますか?』
『どうって?』
『仲睦まじいと、語られているとおりに、姉さんのことを愛していますか?』
『っ!大切には思っているさ。』
案の定言葉を濁した。照れのような雰囲気も多少はあるが、それ以上に別の理由を感じられた。
『明言は出来ないということですよね。』
『マブルには悪いけど、そうなるね。』
『と、言うことです。』
そう締めくくってリンゼンに視線を向ける。
『たしかに、そこは上手くいっていないのかもしれないけど、貴族としては、二人は仲が良いということになっているし、相性というものもあるんだから仕方のないことではないか?』
『そうかもしれません。だとしても、上手く出来ないこともあるという事実には、変わりません。』
『まぁ、たしかにな。』
『まぁ、上手くいってないのも、謎ですけどね。』
リンゼンが首を傾げて、僕とギルダントを交互にみる。僕はそのまま言葉を続けた。
『ギルダントのお菓子は、今となってはほとんどが、姉さんが考案したものですよね。最近では、茶葉だってそう。婚約者の贈り物だからって言われれば正しいのかもしれませんが、好き好んでそれしか選びませんよね。』
『ヒールは僕のことを良くわかっているからね。』
『大切にされてるんだな。』
『いや、そういうことではないさ。ただの義務感だよ。婚約者だからしてるのさ。彼女は相手が誰であれ、相手が婚約者ならあれだけのことをしてくれるんだよ。』
僕だからじゃない。そんな言葉が聞こえてきそうだった。
でも、その心に見え隠れする気持ちはそれだけじゃないだろう。
そんなことが、当たり前にできる姉さんへの、羨望と憧れだ。
『そんなことはないと思いますが、こうして不安にさせてしまっているのですよね。結局。』
姉さんは色々と出来るが、出来ないこともある。苦手なこともある。
そう思っていたのだが、ギルダントは否定した。
『いや、そんなことはないよ。僕が不安に思うのは、とある思いをヒールに向けているからだ。そして、この感情が一切なかったらって思うと、更に怖くなる。他の人に言われるんだ。彼女といるのは、プレッシャーではありませんかって?一人でなんでも出来る彼女に不安になりませんかって?僕も思うよ。そう思うこともある。でも、それを覆い隠せるだけの魅力が彼女には充分に備わっている。だから、僕の想いが杞憂だったら、こんな気持ちにはなっていないんだ。そのことを一切知らなかったら、僕はもっと素直だったんじゃないかな?』
ギルダントから、初めて姉さんへの飾り気ない評価を聞いた気がした。
混ざりけのないその評価は、ほとんど好意的に捉えて良いのだろう。
唯一の不安さえなくなれば。
けれど、気持ちは重く深くも見える。不安がなくならなければ、その気持ちすらも、いずれ無くなってしまいそうな、儚さだ。
………姉さんの隠し事か。それは姉弟である僕と姉さんにもあるだろう。僕らはそれなりに仲が良いとは思うが、それでも隠し事はある。僕は姉さんには、恋愛相談とかはしないしね。姉さんも僕には言わないこともあるはずだ。
そして、それが夫婦になってもそんなものだろう。どんなに仲睦まじい夫婦だとしても、一切ないなんてことはないだろう。いたとしてもごく僅かで、ある夫婦の方が、多いはずだ。
たぶん、それはギルダントもわかっている。
それでも、そのことだけは、知っておきたいということなのだろう。
だが、言った通り僕にも心あたりがない。姉さんの秘密を僕も一切知らないのだ。もう少し注意深く見るべきだろうか?
隠し事でもなんでもない、姉さんすら気づいていない気持ちになら、僕は気づけたんだがな。
姉さんも、ギルダントのことが好きだ。自覚していないだけで、本当は好きなんだろう。
姉さんと僕は、効率性や国の発展を重点に上げて、国の政策を考えがちだが、ギルダントは国民全体の貴族も平民も全てのバランスを見た上で、国民への最善を考えた代案を考えてくれる。自分と違った発想を持つギルダントを良く思っている。褒め言葉以外を返してくれる人って少ないから。
皇子として、忙しい中でも、他人を軽んじない。優しい心。寛大な器を良く思っている。
パッとは、たくさん出てこないけど、姉さんはギルダントのことを、好意的には確実に見ている。
そしてその気持ちは、自覚すればもっと大きく溢れるはずだ。今は気づけていない。
でも、こうやって考えると疑問に思う。姉さんは別に他人の好意に凄い疎いわけじゃない。
ギルダントからの好意と、自分自信の好意だけに疎いのでは、ないだろうか?
もしかしたら、そこがギルダントの言う隠し事に関係するんだろうか?
今の僕にはわからない。けれど、二人のためだ。今まで以上に、二人を観察していよう。
見落としが何かあったのかもしれない。
気持ちを新たに、日々を生き始めて数ヶ月。
とある夜会で聞いた噂から姉さんの様子が少しおかしい。他の誰もそんなことに気づいてはいないが、最近注意深く観察していた僕だから気づいたのかもしれない。
ディアネル伯爵が、子どもを探しているようだ。
ディアネル伯爵誰やねんと思う人しかいないと思うので、書いときます。ディアネル伯爵は、主人公のお家の名前です。最初のどっかで出たきりなので、わからないですよね。
自分も名前探すのに時間がかかりました。
名前くらいメモっとけよ




