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第25話 どうしたらいいんだろう

タイトルつけるの難しい

私は後悔していた。お母様が亡くなる前兆は一切なかったわけではない。

半年前くらいから、お母様が出席出来ず、私だけやマブルと2人で出席することが多くなっていた。医療計画を進めるため、家にいる時間事態減ってはいたが、家に居てもお母様と会える回数が減っているのは、よくわかった。


お母様の病気は、結局きちんと伝えられることはなかった。けれど、お父様もお母様も、医療計画を進めているために、私がなんとなく理解していることは、わかっていただろう。


それでも、お母様は私やマブルの前では、毅然とした態度を一度も崩すことはなかった。貴族は何があっても、人前に出るのなら、体裁を崩してはいけないと。身をもって、教えてくれているのだろうと、私達は理解した。


だからこそ、私達もお母様にその手の話題に触れることは、避けていた。

もしも、治る見込みがあるようなことがあったなら、私達にもお聞かせくれたのかもしれないけれど、結局、お母様は私達の手本であり続ける事を選んだ。


なので私達は、その姿を心に宿し続ける事に決めていたのだ。


その結果、私は深く深く後悔する事になったのだ。


なぜ、私はお母様を殺さなかったのだろう。

お母様を助けられないことも、今までの症例から考えた余命なんてとっくに越している事も理解していたはずなのに。

今なら病に伏した事にも容易く出来たのに。


お母様の死を目の当たりにすることで、死んで一生会えなくなるという意味合いを今まで以上に理解した。

死は永遠を持っている。永遠の中で更新されず、結果、薄れていくのだ。人との思い出は、生きていれば更新されることもあるだろうが、死んでしまえば、上書きされることはない。


けれど、私は知っている。殺すという感覚を。永遠をつなぎとめる方法を。


彼の記憶は、夢として、毎日見るわけではない。ふとした、拍子にまた見るのだ。

けれど、そこに条件なんてない。ゲームの世界線と類似した事象に気づくことで、その夜にまた、その夢を見ることもあるが、理由もなく見ることの方が多い。夢の内容は、結局夢や思い出みたいなものだ。彼のほとんどの一生を見る事になるが、記憶して置けることなんて、断片的なもので、覚えておきたい事でも、完璧に記憶しているわけではない。

だからこそ、何度も再上映され、様々な事に気づくことも出来るのだろう。


けれど、その中でいつも色褪せず、頭に鮮明に残り続けるものがある。

彼が人を殺す時の、前後関係と、殺している最中の、手に残るあの感覚だ。


そう。人を殺すという感覚は、薄れることもなく、永遠に残り続けるのだ。


なのに、私はお母様を殺せなかった。殺さなかった。

永遠に残すことが叶わなくなった。

私は知っていたのに、失う事になるのだ。お母様を。時間とともに。


だから、私は後悔している。

殺したかった。殺させて欲しかった。と、後悔しているのだ。


けれど、わかってる。死には永遠が付随する。だからこそ、殺人は罪となりうるのだ。行って良い事ではない。独り占めして良い事ではない。独占しか出来ぬなら、誰も手に入れて良いものでもないのだ。

だから、私は思うだけ。

どんなに後悔しても、自分の感情を否定して、自分の考えを否定して、思うだけなのだ。


でも、私は永遠を知ってしまった。わかったのだ、永遠の重みというものを。


そう思うと悲しくなった。

私はいずれ、ギル様に処刑される可能性があるのだ。しかし、処刑は、殺人という行為は同じなのに、意味合いは全くの正反対だ。

不要な存在を消し去り、人々の心から取り除く事で、平穏が訪れる。

私は、忘れるために殺されるのだ。

そんな悲しいことはないだろう。





私とギル様は、この2年の間、大きな発展というものがなかった。


剣の稽古は今でも辞めていないが、あまり上達を感じない。それもこれも、この2年の間に、私の身体は、ゲームの中の私に近づきつつあった。いずれあのゲーム内の私と同じプロポーションになる事を考えれば、妥当な成長かもしれないが、動きづらいのだ。特に胸部が。動くたびに揺れるので、いっそ動かないように潰してしまいたいが、それは流石に許してもらえなかったので、思うような稽古が出来なかった。

剣舞としての出来は悪くないけれど、ギル様と話すには、成長がなさすぎて、話せることはあまりなかった。


勉強に関しては、自重せずに話す分、内容の密度が日々上がっている気もするが、ギル様もギル様らしい視点で色々と意見をくれるので、有意義な時間となっている。

ただ、学友としての仲は深まっても、婚約者としての仲の発展には、役立っているとは思えない。


異性に好感を持ったところを伝え合うという試みに関しては、最初のうちは、剣の話が出来ると親しみを感じるとか、お菓子などの好みを理解してくれていると嬉しく思うとか、色々と伝えてくれていた。

私も、私とは違った意見を考えてくれるときとか、考えようとしてくれると、楽しいと思うとか、思った事を伝えていた。


最初の頃はあまり気にしていなかったが、ギル様はだんだんと、恥ずかしさを持つようになったのか、明言を避けるようになってきた気がする。

そして私も、私の好意は、異性への限定のものかと言われると、違うような気もしてきた。結局、私には恋愛感情というものを未だに、持てていないのではないかと思っていた。


ギル様にメロメロになってもらうことは、難しいのかもしれないと、最近、本気で思うようになってきた。


学園に入学するまでには、あと3年もない。本当にヒロインは、現れるのだろうか?現れたとき、彼女は誰を選ぶのだろうか?

もしも、ギル様だったら、私はどうしたら良いのだろうか?


私の中で、最善とはとても言えないが、なんとなくの答えは出てきていた。

国やヴィルランク家の為を考えるなら、本当は取られてはいけない。ギル様の愛情を獲得しなければならないことは、わかっている。

でも、そんなこと出来る気がしなくなっていた。


私は私に出来ることをするしかないのだろう。私の有用性と、感情だけで、王妃を選ぶ危険性。その後の、後始末の難易度など。妥協案の方向性を誘導は出来ないか、考えてみよう。




『ギル様。この度の事で、私は思ったことがあるのですわ。』

『…なにかな?』

お母様の死から少しして、私はギル様に伝えることにした。お母様の事を、ぼかして伝えたが、雰囲気からなんとなく伝わったようだ。


『私は、王家に嫁ぐにあたって、ヴィルランク家の跡継ぎも作らなくてはなりません。公爵家なので、王族の血が混ざっても、問題はありませんし、面倒も少ないでしょう。けれど、私に2人以上の子供を作る事が出来るのか、不安に思うようになりました。』

『まぁ、不安に思う気持ちはわかるけど、無理はしなくて良いからね。』

ギル様は、少し気の毒そうな表情を見せた後、優しく笑いかけてくれた。

ギル様らしい笑顔だ。相手のことを気遣っている、優しい笑顔。私もそれに合わせて、笑って返した。


『ですので、側室や王妃に関して、今からでも頭の片隅に入れて置いていただきたいのです。』


ギル様は、驚いたようで、私の目を見ながら固まった。


まだ、結婚もしていないのに、側室なんて、やはりギル様には難しかったかな?優しい人であることは、理解している。本当に好きな人が出来たなら、唯一の王妃にしたいだろうし、婚約者がいるだけの今でも、側室を考えるのは、申し訳ないとか思っていそうだ。

それでも、知識として入れて欲しい事がある。


『世継ぎは、王妃として大切な仕事です。そこを全う出来ないのなら、他がいかに優秀であろうと、王妃としては、失格です。なので、そういった可能性もあるのです。どういった形になるかは、わかりませんが、受け入れる覚悟はあることを伝えておきたかったのです。』


これで、私を王妃としては不適格だと、言うことも出来るようになる。詭弁だとしても、王様の言うことなら、反論は出来ないし、口裏を合わせれば、結婚出来ないだけで、処刑はない。

王妃となっても、側室を取る理由にはなる。

今は、気にしなくても、ギル様は優秀な方だ。必要になれば、今日のことを思い出して、わかってくれるだろう。


『わかった。一応頭に入れて置くよ。そろそろ、勉強の続きを始めようか?まだまだ、討論したい題材はたくさんあるだろ?』


とりあえずと言った感じで、ギル様は頷いてくれた。そして、いつもより断然早く休憩を辞める提案をくれる。

私は休憩をしなくても平気だが、ギル様は大丈夫なのだろうか?


『もうですか?』

『嫌だったかな?』

『いえ、ギル様が良いなら、そうしたいですわ。』


何故、ギル様がやる気になったのかは、わからないが、教師を交えたギル様との討論は、色々と考えなくて良いから、私として結構嬉しい時間なのだ。

その提案に、そのまま甘えさせてもらおう。





ヒーランの考えが、本当に良く分からなくなってきた。側室を取って、側室と仲良くしている間に、国の実権を取りたいのかなとも、思えなくはない言葉だったが、王妃で無くなっても良いというふうにも、聞こえる言葉。

彼女はなにを思ってそう言ったのか、良く分からない。

言葉の裏は、いつも通り、わからなかったが、彼女も大切なお母様を亡くして、混乱しているのかもしれない。

普通なら、こんなとき難しい話は避けるべきなのかもしれないが、彼女が僕といて、一番生き生きとしているのが、勉強をしているときなのだ。

今は好きなことをさせて、面倒なことは、考えさせないであげた方が良いだろう。


彼女との勉強会は、何よりも体力を使うけど、今日のところは頑張るしかないな。


彼女の考えた、お菓子を優雅さを失わないギリギリで、素早く食べて、この後の勉強のための栄養を補給した。



色々と悩みどころです

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