第27話 主人公
GWで余裕持って書けるかなとか、思っていたら、GW前半に予定が重なり放題で、2日も遅れてしまった。後半に書き溜めか、話数を速度アップ出来るかなぁ。
私はこの頃、アーガイル領の流行り病について調べていた。医療計画から約3年半。ヴィルランク領の医療技術は、早くも国一番となっていた。アーガイル家とは、領地としては近くないが、古くから仲の良い領地だった。そのため相談をされ、受ける事に決めたのだ。
アーガイル領の流行り病については、大体の目処が立ち始めていた。大きな原因は水質汚染によるものと、結論づけられそうなので、後は、アーガイル家で整備をしてもらう他ないだろう。
『これで良しと。』
『終わりましたか?お嬢様。』
アリルが淹れてくれたお茶と交換に、報告書を回収してくれる。
『ええ。それで、最後よ。。。うふふ、今日も美味しいわね。』
『ありがとうございます。お嬢様。』
最近は、アリルもお茶を淹れてくれることが増えてきた。私も研究の為、自分で淹れることもあるが、二人には勝てる気がしない。
『今日は、マリネは休みだったかしら?』
『はい。レインさんと、お出かけだそうです。』
『うんうん。順調そうで何よりだわ。』
マリネは今、うちの専属料理人である、レインとお付き合いしている。私の我儘を順調に叶えつつ、幸せそうで何よりだ。
自然と頰が綻んだ。こうやって、アリルやマリネと話している時が、一番気を紛らわせることが出来る。
私が本当にダメになったとき、アリル。貴女は私を受け入れてくれるかしら?二人の時間を確かめるように、急所からは少しずらし、少しずつ、刃を進めるの。その時、貴女は私と目線を合わせて、どんな表情を取ってくれるのかしら?
『本当に羨ましいです。お二人とも。マリネさんもお嬢様も相手がいて、仲良しですし、私もいつか好きな人と結ばれる日が来るでしょうか?』
『アリルなら選り取りみどりよ。女性らしい可愛らしさに明るい性格、料理は絶品で家事はなんでも出来る。相手なんて、探そうと思えばすぐに見つかるわよ。』
『そんな、褒めすぎですよ、お嬢様。』
そうやって、頰を赤らめて照れる仕草も可愛いらしい。
『けれど、問題もあるわよ。』
『え?なんですか?』
頰を染めながら笑っていたところから、一転。少し緊張しつつ続きを促してくる。
『そんな非の打ち所のない、アリルに見合う相手が簡単に見つかるか、っていう問題があるじゃない。』
『なんですか、それぇ?私は、素敵な人だったらそれだけで充分ですよ。』
『ダメよ。貴女に見合う男性じゃなければ、私が許さないわ。貴女にもちゃんと融通は利かせてあげるから、妥協なんてしたらダメよ。一生のことだもの。』
『わかりましたわ、お嬢様。ありがとうございます。』
アリルが嬉しそうに小さく笑った。
さて、英気も養えたところで私はとある資料に目を通した。
資料にはとある噂について書かれている。ディアネル伯爵が娘を探しているというものだ。
アーガイル領とディアネル領は、陸繋ぎの領地だ。私はたまたま、この噂を拾うことが出来た。
私の唯一の主人公への手掛かりとなる、ディアネル家の噂。私は情報を掻き集めた。
とうとう来てしまったという気持ちで、心が辛くなってきた。
この世界はやはり、彼の記憶の中の、ゲームの世界と酷似している。主人公の設定では、平民として暮らしていた彼女はある日、父親と名のるディアネル伯爵に引き取られることになる。
そこから自身の母親を愛していたが、分家の中でもほとんど末端の彼女を表立って愛することが出来なかったと、伝えられる。
そもそも分家とは、爵位を多く持つ家柄なら、分けて持つことで、勢力を広げる為のものだ。けれど、子の数と爵位の数は世代が変わるほど、どんどんと合わなくなっていく。
けれど、爵位があれば同様に領地を持つものも多い。領地運営をスムーズに行う為の、平民との橋渡しとして機能するものが増えていく。
そんな状態で世代が進むと、分家ではあるが、貴族の血が薄まってくる者達も増えていく。
よって、分家の末端はほとんど平民だが、多少貴族と接触を持ちやすい者達のことを指すことになるだろう。
よって、ディアネル伯爵は、たまたま使用人として働きに来ていた母親を好きになり、関係を持ったということだ。
ここまでは割とよくある話。分家のものと関係を持って、子供がいる人はそれなりにいるだろう。決められた結婚でも、仲の良い夫婦もあるが、冷え切っていて、両方が別に愛人を持つ夫婦のタイプも多い。
けれど、その場合子供を本家で育てるような事はなく、分家で育てられる。仕事を斡旋したりと、多少の援助はあるかもしれないが、本家の者として、引き取られることはほぼほぼないだろう。
だから、子供が出来ても黙認される事の方が多かった。
しかし、ディアネル夫人は違った。伯爵からの愛を受けた彼女に酷く嫉妬したのだ。そこから、軽い嫌がらせが彼女にされるようになった。
伯爵はその事に怒ったが、夫人が嫉妬した理由を知って何も言えなくなってしまった。
夫人は伯爵の事がずっと好きだったのだ。けれど、仕事に追われ、自分を見てくれない彼の気を引く為に、男を作るようになった。
けれど、それは寂しさを紛らわせる為ではなかった。男を作って、時間を過ごしているように見せかけているだけだった。
それっぽい雰囲気の空間で、伯爵を支える為の仕事を手伝わせているだけに過ぎなかった。
はっきり口に出して、求める事が出来ず、すれ違ったが、このまま一生得ることが出来なくなってしまうならと、やっとの思いで告げる事が出来たことだった。
結果、伯爵は夫人に何も言う事が出来なくなってしまった。けれど、生まれてしまったものは仕方なく、なかった事には出来ない。
主人公の母親への感情は、忘れる事にしたが、援助は最大限に付けるつもりでいた。夫人も自分の行いのせいでもある事を自覚していたので、受け入れてはいた。
けれど、母親は彼らの下から姿を消した。伯爵への思いと決別する為と、今の2人の前に、自分達がいるわけにはいかないと。その言葉を残して。
その事を知り、伯爵は探そうとしていたが、周りの人達に止められた。母親がそうするように頼んでいたから。
それから先は生存報告が分家に届けられていた。伯爵はとりあえずそれで折り合いをつける事にするしかなかったようだ。
そこから先、10年以上夫人と共にいる事で、夫人を大切にするようになっていった。だからこそ、伯爵も夫人も仲介を挟みつつも母親を支援することは、忘れなかった。
しかし、そこから問題が生まれたのは、母親の方だった。
今のこの国で、女性一人で子供を育てるのは、難しいと思う。だからこそ、援助がされていたはずだと言うのに。
慎ましく暮らせば生きていけるほどの、お金ではあったが、あるのとないのでは、大きく違っただろう。
だが、彼女への援助金は、彼女の下まで届いてはいなかった。
仲介を買って出ていた男が彼女に渡していなかったのだ。母親はその事を伝えることも、会いに行くことも叶わなかったから、諦める他なかった。
数少ない宝石は売り払い、働きながら、なんとか子供を育て生きていたらしい。
けれど、無理が祟り、母親は亡くなってしまった。それでも、彼女の死がディアネル家に伝えられることもなかった。
そして最近、夫人が彼女と話がしたいと言い始めたようだ。身を引いてくれて、ありがとうと。そして、大変な思いをさせてごめんなさいと。
彼女が結婚したとか、そんな話を聞いてもいなかったことと、お互い若くも無くなってきた今だから、伝えたいことがたくさんあると。
彼女にとって、それが迷惑なら諦めようとも思ったが、何も伝えないままではいけないと、考えたみたいだ。
そして、申し出は断られた。断られたが、彼女としても簡単には諦められなかった。彼女なら、私達の事を考えて、断る可能性もある。今更、そんな事迷惑でしかないと思われているなら、諦めもつくが、理由がどこにあるかわからなかった。
なので、探りを入れる為に、今の彼女に関する情報を、改めて集め直した。
そこでわかったのが、今まで彼女へ送った援助金が届いていないことや、彼女に関する情報すら怪しいということ。
そして、彼女が亡くなっているという事実だった。
夫人がそれを知った時、何を思ったのかは知らないが、娘だけでも不自由なく幸せに暮らして欲しいと思うようになったらしい。
そこで現在、娘を探しているとのことだった。
今の所、見つかったという噂はない。
私としては、今までの噂を聞いたとしても、主人公には悪いがこのまま見つからないで欲しいという気持ちでいっぱいだった。
このまま主人公が現れることがなかったら、私があれこれ考える必要がなくなると言うのに。
。。。こんな時、ギル様なら、それでも相手のことを考えるんだろうな。自分の幸せを奪うものかもしれなくても、きっちりと敵対しない限りは、相手の心に寄り添って、みんなが幸せになれるように、頭を悩ませてくれるのだろう。
ギル様と比べると自分が惨めになる。私はいつも、自分のことだけで手一杯なのに。
私は、、、奪うことしか出来ないのに。大切な人でさえ、命を奪うことでしか、そう思うことでしか、愛情を表現出来ないというのに。
『ふぅ、、、』
『どうかしましたか?』
『いいえ、なんでもないわ。』
落ち込んでいても仕方ない。結局、顔も名前もわからない私には、ディアネル伯爵よりも先に主人公を見つけて、遠ざけることも、仲良くなることも出来ない。
ディアネル伯爵は、名前や顔の雰囲気がわかる人がいるみたいだし、母親の特徴はよくわかっているはずだ。雰囲気がそれらしい人を探し、話をすれば検討をつけることが出来るのだろう。
見つかるまでは、時間の問題かもしれない。
貴族としての嗜みを教えるとなると、そろそろ見つけてしまいたくは、あるだろう。
噂を耳にして、大急ぎで調べさせてしまったが、得るものなんて何もなかったようだ。
『そんなことより、アリル。貴女も座りなさい。最近のことや、マリネについて教えてくださいな。』
『わかりましたわ。お嬢様。最近は、忙しくて全く時間を取れませんでしたもんね。。何から、お話しましょう。』
『任せるわ。』
その日は、そのまま夕食の時間まで、アリルと話に花を咲かせ続けた。
それから3ヶ月の月日が経った。
アーガイル家の流行り病については、沈静しつつあるようだ。少し前に御礼状やらなんやらと、色々届いていた。
また、この頃、マブルと話すのが少し怖い。義弟は本当に私を理解していない。わかってない。私はギル様のことなんて、なんとも思っていないんだから。彼を殺したいと思ったことなんて、一度もないのだ。だから、私はギル様を好きになったことが一度もないと、断言出来る。これだけは明確で嘘偽りない真実なのだから。
後は、医療計画が順調に進み、実績も出来たことで、調整が必要だった点に関してもまとまり始めた。
結果として、時間に余裕が生まれ始めていた。日々進歩する医学書や薬学関連の報告に目を通したりもするが、マリネのお話を聞いたり、アリルの手料理に舌鼓を打ったり、マブルにいろいろ追求されたりと、やすらぐ時間を取れるようになっていた。
学園への入学が近づくにつれて、焦りがだんだんと無くなって来ていた。
定期的にディアネル家について調べていたが、未だ見つかったという噂は入って来なかったからだ。このまま、見つからなければ良い。今みたいに、ゆったりと有意義な時間を過ごしたいと考えていた。
けれどこの時間は、まやかしに過ぎなかったようだ。
とある夜会で、ディアネル伯爵が私に近づいてきた。平凡な挨拶に平凡な話題。ディアネル家は、同じ貿易都市でもあるため、あまり仲良くはしていない。
だから、その日も簡単な話題で話が終わると思っていた。
『ヒーラン嬢。少し話が変わるのだが、良いだろうか?』
『?私は構いませんが、そのように改まって、どうかなさいましたか?』
『ああ。君の連れている使用人の一人に、アリルという名の者がおるだろう?その者と話がしたいのだが、構わないだろうか?』
私は直ぐには返事が出来なかった。出来なかったが、直ぐに理解した。理解した上で、肯定の言葉が口から抜け出ていた。
何故、私は失念していたのだろう。アリルが拾い子であったことを。主人公である可能性があったことを。
せめて入学するまでは、アリルを連れたりしなければ、ディアネル家の者に、気づかずにも済んでいた可能性もあったのに。
よりにもよって、アリルだなんてこと、あるのだろうか。
私にはわからない。何もかもわからない。けれど、誰にも伝えることの出来ない事だけは知っている。
だが、そんなことを知っていたって、この場で否定の言葉を出す理由には一切ならなかった。
『別に構いませんけれど、、、そうですね。日にちを改めた方がいいかしら?』
私は不思議そうに肯定するほか、何も出来なかった。
ゲーム内ヒロイン名は、アリル・ディアネルちゃんです。ヒーランが知ることは出来ない、公式名ってやつですね。なんか、こうしてみると語呂悪いですね。考えた人だれだよ




