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第21話 お爺様と私の武器

やっと、考えがまとまりそう

たぶん

 王都に戻ってきて、お茶会以外にも始めた事がある。


『本日もお願いしますわ。お爺様。』

『うむ。まずは、前回のおさらいからじゃな。』


 お母様のお父様に当たる、ルッペン侯爵。爵位は色々持っているので、侯爵位自体は未だ、明け渡していないが、実質的には、お母様の兄上に大体の引き継ぎは終わっている為、ある程度の暇があるらしい。

 けれど、お爺様自身、完全な引退をするつもりも無いし、国としても何かあったときに、指揮できる人に減って欲しくないようなので、引き継ぎについては、現在いろいろと調整中らしい。


 それで、お爺様は領地の直属の騎士たちを鍛えてるそうで、まぁ、何が言いたいかと言うと、それなりに好き勝手出来る時間の持ち主なので、私の剣を習いたいというお願いは、簡単に通った。



 習うにあたって、お爺様とお母様も交えて話し合って、稽古のメニューが決められた。今は、あまり見ないがお母様も昔からある程度剣は嗜んでいたので、武闘派になり過ぎないように、令嬢としての限界値を令嬢視点で教えてくれたのは、結構役に立ちそうだ。

 私としても筋肉ガチガチになりたい訳ではなく、プロポーションを更に引き締めつつ、剣舞くらいが舞える程度になりたいと思っている。少しずつで始めて、バストを残しつつ、引き締められたら良いと思っている。

 まぁ、彼の記憶を信じるなら、順調に育つことだろう。


 結果、稽古のメニューは、基礎的な動きが全般で、いくつかの基本の型を覚えて、次のお爺様との稽古の日まで、無理しない程度の鍛錬を日課にし、マスターする。また、お爺様に新しい型を習って鍛錬という、実戦はあまり考慮しない形となった。


 まぁ、私としてもそれぐらいで、ちょうどいいので、助かっている。


 あとは、もう少し基礎練習に慣れたら、護身術のような、身を守る為の方法を教えて貰う事になっている。


 嗜みとして、令嬢が剣術を覚えるのには、丁度良い塩梅だろう。


 そこから先への昇華は、私自身が勝手に行えば良い事なのだ。

 私はお爺様にも誰にも悟られずに、剣舞を華麗に舞い、出来る限りの護衛術を覚えれば良いのだ。


『ふむ、流石は我がルッペン侯爵家の孫じゃな。それほど日数が経っておらんのに、型が良く出来ている。』

『お褒めいただき光栄ですわ。お爺様。』


 それにお年を召していても、現役で騎士たちに指導できるだけの能力を有するお爺様。お母様と同じ、白銀の髪に整えられた白銀の髭に、鍛え抜かれた身体、腕や顔に所々切り傷の痕があっても、それすらも大人の魅力の様に、引き立てている。

 戦場を切り抜けてきただけはある、功績に裏付けされた実力と、教え方の丁寧さ。孫の贔屓目があったとしても、充分に魅力的なお爺様だと思う。

 そんなお爺様に褒められているのだから、私としても嬉しい限りだ。


『リーラがヴィルランク家に嫁ぐ事になった時は、孫には武術を期待できぬと思っておったが、ヒーランは見てくれによらず、武術も才能があるようじゃのう。』


 お爺様の言葉から分かる通り、ヴィルランク家は、宰相として頭脳が優秀な人が多く、伴侶も文官など、頭脳派が多かった。

 お父様も藍色の髪に、更に濃くした髭を携え、資料に向かって、眉間に皺を寄せつつ、思い悩む姿は、お爺様とは、また違った魅力に溢れていた。

 そんなお父様にお母様は惹かれ、結果、武術に優れたものは多くなかったヴィルランク家だが、お父様とお母様は、結ばれた。


 なので、ルッペンの血が混じっても、今までの血の繋がりから、頭脳明晰でも武術には期待されていなかったらしいが、私は両方を持って生まれた様だ。

 私としては、今までの血より、お父様とお母様の血が大事だし、お母様もそれなりに武力一家の血筋なんだから、私は上手く両方取れて良かったと思えるんだが、頭脳は弱めの一家なので口を噤む事にした。

 少し残念だな。


『ヒーランが望むなら、その辺の隊長クラスぐらいまでは、鍛えてやるぞ。』


 その提案は少し困るかな。

『そこまでご期待いただいているのに、答えられず申し訳ありません。けれど、私には嗜む程度の武術で充分ですの。私には次期王妃として、国を守る為の力が必要となりますが、それは先導する為の力であり、自身で戦い抜く力ではありませんわ。』

『それもそうじゃな。少し寂しいが、ヴィルランク家の娘らしい言葉じゃな。』

『ふふ、ありがとうございますわ。お爺様。』


 でも、お爺様、その言葉には、王妃としても、ヴィルランク家の娘としての言葉も乗っていませんの。




 身体への負担を考え抜かれたメニューの為、大きく息を切らす様なことはないが、稽古にひと段落つきそうな時に、私は少しバランスを崩しかけた。

 まだ、調整が必要そうね。

『お爺様、そろそろ休憩にしませんか。』

『ふむ。まだ、少しメニューがきついか?』

『いえ、今のは私の不手際ですわ。これ以上下げては稽古としての意味を成さないでしょう。』

『それもそうか。では、休憩にしよう。』


 私はお爺様に甘える孫娘として、お爺様に手を引いてもらい、エスコートしてもらいながら、休憩用のテーブルへ向かう。


 少しぎこちない気がするわね。あまり、慣れていないのかしら?

 そういえば、お母様のお兄様の子供は、男の子が3人だけだったかしら?

 そのせいかしらね。


 お爺様は、私に何の警戒も示していない。私は繋いだ手とは反対の腕の中に忍ばせた小さなナイフに手を乗せる。

 私の武術の肩書きは、綺麗に舞い、護衛術を身につけた、多少心得がある令嬢。それで良い。

 暗器を忍ばせ、自在に操る為の基礎能力と欺く為の偽称の肩書き。


 この手のナイフを隠しつつ、お爺様に甘える様に、お爺様の腕を引く。ねぇ、と小さく語りかけ、お爺様の耳と共に、低くなった胸筋の一度たりとも傷を受けた事のないはずの、左胸に一寸の狂いもなく突き刺してあげましょう。そうすれば、一生に一度きりの、唯一の傷痕を私がお爺様に送ってあげる。

 一生受けるつもりのなかった位置への攻撃を受けて、お爺様は何を思うだろう。どうするだろうか。自分でそのナイフを引き抜くか、傷をつける工程を最後まで、私にやらせてくれるかしら?

 心臓に受けてしまえば、助かることはないのだ。突き刺さった時点で最後は決まっている。その最終過程は実施後に、お爺様と決めていけば良い。


『お菓子は私が用意しましたの。お爺様用に、材料の割合をいくつか変えてみましたの。お口に合うと良いのですが。』

『うむ。悪くないな。前のものより、食べやすい。この様な事も出来るのじゃな。』


 お爺様の言葉に私は、笑顔を返す。



 暗器は、使い方や忍ばせ方は大分決まってきたかな。忍ばせるには、マリネを含んだ使用人達に着替えさせられてから、私の手で、忍ばせる方法を考えていたから、調整がまだまだ必要そうだけど、何度も試せば近いうちには、どうにかなるはず。


 剣舞はまだまだって、ところかしら。基礎は大分仕上がってきたのだから、焦らずじっくりと、練習していこう。

 ギル様には、いつ頃お話しようかしら。完璧に出来るようになる前に、アドバイスでも貰う為に、話を振っても良いのだけれど。。。


 その時、私はギル様に暗器を突きつけることは出来るだろうか?いや、その時ではなくても、私はギル様に剣を突きつけられるかしら?


 ねぇ、ギル様。私に剣を抜かせてくれないかしら?




 もちろん。頭の中で。。。




ギル様は握らせてくれるかな?

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