第22話 いろいろお披露目
もうすぐ新学期ですね、彼らはいつ入学出来るんでしょうか
最初の頃は朝着替える際にマリネ達には、どうかしましたか、なんて聞かれる事がたまにあった。マリネにもアリルにも、特に不自然に思われなくなってきた頃には、今年の社交のシーズンも終わりに向かってきていた。
お茶会の際は、お母様やお父様をよく見習って、無難な答えを返せるようにしていたので、特に問題はなかった。
私たちの様に、まだまだ年齢的に子供の子が混ざるため、時間帯としてはお茶会という程だが、催しの題材次第では、お父様やマブルも招待されるし、子供同士のダンスなどもある。お母様の良く行う、お茶会とは少し異なり、子供に社交を覚えさせる為の場と思えるものも増えていた。
ダンスの時間が来ると、ギル様にエスコートされながら、ダンスフロアに降りて、簡単な会話を交えながら、仲睦まじく見えるように、笑いあう。
私は暗器に気づかれないようにしながら、優雅なひと時を演じ続けた。私とギル様は婚約者なので、数曲連続で踊り続けるが、視界の端では、マブルやリンゼンが様々な令嬢と踊っていた。
その後、仲の良さだけを見せていても意味がないので、ギル様と別れて、また社交が始まる。
ギル様は別の令嬢に誘われまだまだ踊らされるようだ。私は少し疲れた雰囲気を出して、飲み物を受け取りつつ、会話に来た人の相手をしていた。
現在の私自身の体力や身長から、ダンスに誘われたりはあまりしない。タイミングが合うとマブルやリンゼンなんかとも踊るので、全く無いわけではないが、私と話したい人は、私への女性としての魅力よりも、知識に魅力を感じているようだ。それぞれの領地や王都についての会話が多くなる。
広大な庭を王都でも造り、自慢ついでに、開かれるお茶会なんかだと、ご家族でお花を見に来てくださいと言った感じの招待が来るので、お父様もやってきたりする。
まぁ、それだけのものを、領地ではなく、王都にも作れる時点で、無下には出来ない相手と良く分かるだろう。
そこの庭園は確かに素晴らしく、彩溢れる花々が、お互いを高め合う様に咲き乱れていて、素直に感動した。
確かにこれなら、自慢したくなるかもしれないな。と思わずにはいられなかった。
そこの奥様は庭が褒められると自分のことの様に、上品ながらも嬉しそうで、愛嬌があった。
けれど、そこの夫さんは、向こうの世界の少年が勉強していた言葉を借りるなら、花より団子。いや、この世界だと花より社交という感じか。
庭に興味がある人は上手いこと奥様に押しやって、社交という情報収集を広範囲で行なっていた。
お父様が無下に出来ないだけの相手なのだろうなと、遠目ながら思ったものだ。
そうやって、お父様やお母様も一緒に参加する時は、多くの使用人が参加する事になり、それぞれがある程度の、補佐をし合える状態になる為、アリルを他の使用人に託して貰って、マリネには休日を作ってあげられる様にしていた。
領地の方では、あまり乗り気には見えていなかったが、最近の見た感じ、休みを少し楽しみにしている様にも見える。
なんだか寂しくも感じるが、良い人が見つかったのかもしれない。いずれ、良い報告が貰えるかもしれない。気長に待って、マリネから教えてくれる日を楽しみにしておこう。
とりあえず、恋人を探してみたらと伝えただけなので、将来の相手として紹介はされないだろうが、こちらで恋人が出来たなら、領地ではその為の休日はいらないと言われるだろう。
その時は、聞ける範囲で色々と聞いてみよう。
令嬢達の恋話も良くあるし、私もギル様との事を語らされるが、参考は多い方が良い。
次戻る時の楽しみの一つだね。
さて、そんな感じで今年の社交シーズンは流れていった訳だが、毎日参加していたわけではない。
マブルと一緒に勉強をしたり、ギル様とも勉強会をする機会がなくなったわけではなかった。
減らなかったわけではないが、それは時間が合わなかったが故なので、仕方がない。
勉強会では、ギル様を立てる事をやめて、思った事や考えた事を、先生に聞いて更に考えを深くしていく様に形が変わっていたが、ギル様はその質問や先生の意見を聞いて、質問したり、また違った角度からの意見をくれたりする。たまに、他の人に優し過ぎて現実的ではない意見もあるが、充分に検討する価値のある意見も飛んでくる。
私が下手に誘導するよりも、ギル様にはギル様らしい意見で、情報の共有を測った方が良かったみたいだ。充分に有意義な勉強会へと、まとまりそうで、方針を変えたのは良かった様に思える。
また、その勉強会の休憩時間に、剣の稽古を始めた話を混ぜる様になると、ギル様はいつもより楽しそうに食いついてくれた。
結果、ヴィルランク家は社交のシーズンが過ぎても多少王都に残る方の家の為、シーズンが過ぎて、数日が経った日に、剣舞の軽いお披露目をすることになった。
今日は、ヒーランが剣舞を見せてくれる事になっている。社交のシーズンも過ぎている為、本当は僕とマブルでも見せてもらう事になっていたが、両親を説得してきた様で、リンゼンもやってきていた。
曰く、マブルよりも頭が良く、僕を勉強面でズタボロに追い込める、令嬢の腕前がどんなものなのか見てみたいらしい。
そこまで、酷い言い方ではなかったが、僕としてはそんな感じだったから仕方ない。
ヒーランが、僕を立てるのをやめて、好き放題に、考えや意見を述べる様になると、一つの事柄にここまで色々な想定を考えて、対策や考えをまとめているのかと、最初は圧倒された。
それでも、立てなくて良いと言ってしまったし、だからといって、教師との会話に参加しない訳にもいかず、僕は今まで以上に、ヒーランとの勉強会までに知識を増やし準備するようにしていた。
けれど、一向に勝てる気がしない。いや、勝てるとは思っていないが、同列もしくは数歩負けても仕方がないとすら思っているのに、それすら届いている気がしない。
だいぶ、精神的に来たが、たまに、僕の意見にヒーランが、面白そうに吟味を始める事がある。
自分の意見でも全く役に立っていない訳ではない事が、わかって少し安心する。
けれど、これが彼女が新しく上手く、僕を揺さぶろうとしているだけなのか、どうなのか。
僕は彼女に疑いを持っている。彼女の心の奥先で本当に見ているものがなんなのか、彼女は何を思って生きているのか、理解しきらなければならないのだ。
未来の王様に自分がなるためにも、将来の国の為にも、一生を添い遂げる相手となる彼女のためにも。
僕は彼女をきちんと理解してあげる必要があるのだ。
その結果、彼女が敵なら排除すれば良いし、そうでなく、ただただ彼女が聖女なら、僕は僕の気持ちに素直になれば良いだけだろう。
たまに思う彼女への好意の様なものは、疑心と共に揺れ、痛みになる事が多くある。
好みを伝え合う事になっているけれど、この好意のようなものが、はっきりと、自分の好みなのか、友愛などの別感情によるものなのか、わからなくなる事が多い為、伝えるべきか迷ってしまっている。
恋愛感情や人としての好意でも、なんであろうと、彼女に対する良い感情は、どうしても彼女への疑心から揺さぶられ、どの答えのものかわからなくなる事が良くあるのだ。
結果として、彼女もまだ、好みに関する話を持ってきていないので、保留とするしかなさそうだ。
そんな事を考えている間に、ヒーランの準備が整ったようだ。
いつもより、少し動きやすそうだが、令嬢らしい、華やかさを失わない服装をしていた。激しく動き過ぎる訳でもないといっても、下がスカートな事には少しだけ気になった。
そして、彼女は舞い始めた。
女性らしい、しなやかな動きに早さよりも美しさを感じさせる動き。
実戦という部分は、あまり考えず早さよりも、動きの丁寧さや軽やかさに、重点が置かれていた。
令嬢であり、騎士を目指しているわけでもないのだから、これだけ綺麗に軽やかに動ければ、充分に素晴らしい出来だろう。
ただ、少し物足りなく思った。まだまだ、簡単なお披露目だとは、聞いていたが、それでも、動きにメリハリがあり、早さに強弱があるが、なんだかまばらだ。
動きの順番というか、前の型の振り付けにつられているのか、もう少し早く動けそうな時に、少し遅かったり、もう少し遅く動くことで、よりメリハリがついて、美しく見えそうなのに、堪えきれていない部分があるように思える。
良かった、彼女にも、完璧に出来ないこともあるようだ。
不覚にも、彼女の不完全さに、初めて好意を感じてしまった。
そんな自分を少し嫌に思いもした。
完璧だからこそ、敵だと困る彼女に対して、唯一抱ける好意は、彼女のダメな部分に対してとなってしまったのかな?




