第19話 音と貰い物
花粉の季節です。
辛いです。
お薬飲んでるので、すごく酷いわけではないですが、お薬のせいで目がトロンです。
ねむい
海藻研究に区切りがつき、そろそろお父様の王都での仕事的にも、王都へ戻らなければいけない時期となってきていた。
海藻の中でも、とりあえず昆布は、保存方法や販路の検討もつき、売り出す目処は立ってきている。
後は、本格的に販売するために、工場の建設とヴィルランク領内での販売方法や王都でも販売できるように、王都での根回しが必要となってくるだろう。
しかし、それらはまだまだ未成年の私の仕事ではない。
お手伝い出来ても、ヴィルランク領内の工場施設を何処に作るかや市場にどういった方法で乗せるかを考えることに限るだろう。
今回の研究資料や結果に付随して、それらに関する思い付く限りの情報を乗せて渡したら、そこから先は、お父様の仕事だ。
王都では、宰相としての仕事もあるだろうけど、そこは頑張っていただこう。私とマブルでは、どうしてもどうにもならない範囲に入ってしまうのだから。
まぁ、そんな仕事の山積みのお父様なので、王都に着くのは、他の方々より早くなる。
そうなると暇になるのが私達で、またギル様との勉強会が始まることになる。
『お久しぶりですね。ギル様。お変わりはありませんでしたか?』
『あぁ、特にはないかな。』
たわいない会話の後に、勉強会を始めた。
今までの勉強会とは少し代わり、私は疑問や答えを、ギル様を通さずに聞くようにした。
それに対し教師陣は少し驚きながらも答えてくれる。代わりに、私の言葉の中で、気になったことを、ギル様が私に質問してくれるようになった。
私としては、ギル様に合わせなくて済む分、勉強に深みが増すので助かるが、これではギル様の勉強時間が減っていそうで怖いな。
私と教師との会話に、ついてこれていない部分があるように思えたのだ。
私にもギル様にも丁度良いラインを探っていく必要がありそうだ。
そんなことを考えつつ、勉強が進み休憩の時間となった。
私は軽くお茶を飲んで、落ち着いた後、マリネを呼んでオルゴールを渡してもらった。
『ヴィルランク領と海を挟んで隣にあるアルガスから来たオルゴールです。異国の音楽が入っているので、少し聞きなれないかもしれません。』
『へぇ。じゃあ、聞いてみようか。』
私の簡単な説明を聞いて、ギル様は使用人に鳴らすように指示を出した。
流れ出すのは、私が選んだ、低音が心地よくまとまった少し力強い感じの曲だ。
オルゴールにしてもなお、そのように聞こえるのだから、オーケストラで聴けば更に、力強く闘志に燃える曲だと思う。
私自身も結構気に入っているが、体を動かすのが好きなギル様には、こういった曲の方が好みだと思ったんだけど、どうだろう。
本当はオルゴールという媒体で、手軽に自室で聴けるという特徴を考えるなら、もっとゆったりしたり、しんみりする曲調を選んでも良かった気がするのだが、そういった曲はダンスの練習の時に、聴き慣れているし、たまにはこういった曲で鼓舞されたいと思うのだが、ギル様はどうかな?
『……なんか、意外な選曲だね。アルガスには、こんな感じの力強い曲が多いのかな?』
『え?いえ、陽気なものやしっとりとした悲しげなもの、爽やかな朝を感じるものなど、様々なものがありましたよ。』
あれ?もしかして、外した?もっとそれらしいものを選ぶべきだったかな?
『そうなんだ。僕も力強い曲は好きだよ。元気がでるよね。』
『そうですね。もう少し頑張らないといけない時に、やる気になるかと思いましたの。』
今度は少し嬉しそうな微笑みを持ちつつ、返事をくれた。
間違ってはいなかったのかな?
そんな風に感じていたら、ギル様は私の言葉に少し困ったような顔をした。
『ヒーランでも、勉強が嫌になったりもするの?』
『?別に勉強が嫌になったりはしませんよ。けれど、長時間本を読んだり、考え込むのはやはり疲れますからね。そんな時に、ちょっとした後押しが欲しいんです。自分で切り替えるよりは、きっかけがあった方が切り替えやすくないですか?』
『たしかにそうかもしれないね。でも、その状態なら、僕は楽しげな曲で、気分を一度リフレッシュしたいかな。』
『なるほど。そういう考え方もあるんですね。では、もっと明るい曲の方がよかったでしょうか?』
その言葉を聞くと、ギル様的にはもっと陽気な曲とか、爽やかめな曲の方があっていたのだろう。
好みを知らない状態で選んだとしても、知ってしまうと、きちんと聞いてから、買ってくるべきだったかもしれない。
ギル様は私の言葉を聞くと、少し驚いた後、困ったように優しく微笑んだ。
『そんなことないよ。これのおかげでヒーランのことを少しわかった気がするから。』
『私のことをですか?』
『うん。』
私は首を傾げた。
でも、先程の話的にギル様には適していなかったように思えるのだけれど。
けれど、私を立ててくれたのかしら。だとしたら、これ以上言うのは良くないだろう。
『ギル様は普段どう言った音楽を好みますか?』
『そうだね。過去の偉人から探すなら、リークスやヨルゲンの楽曲は陽気な曲が多くて、子供の時は良く弾いてもらってたかな。最近は、お茶の席や夕食の時に、控えめに弾いてくれるゆったりとした、優しい音色の中では、ユーディアの楽曲はゆったりとした中に複雑な旋律が入っていて、聞いていて楽しいと思うよ。でも、ヒーランが言ったような力強い楽曲なら、宮廷音楽の中にある、騎士を鼓舞する楽曲の中でも、行進曲の1番、4番、8番あたりが好きかな。』
思ったより多くの偉人の名前が出てきた。私も貴族として、必要最低限の知識は、持っているので、全員なんとなくは分かるけど、人によって特徴を分けて答えられるとは思わなかった。
たしか、ヨルゲンは色々と有名な曲は多いけど、リークスの代表作はほとんどが陽気な曲だったはず。ユーディアって人の曲は、ゆったりとした曲でも、楽しげな曲調が多いのが特徴だ。
宮廷音楽の1、4、8はどれも明るい曲調だったはず。
となると、やはり陽気で明るめの曲の方が好みなんだろう。
今回は間違えたことになるけど、このままきっかけもなく、知らないままよりも、話題に上げれたのは、良かったのかな。
『次からの参考にさせていただきますね。』
『うん。ありがとう。ところで、領地の方では、どうやって過ごしていたの?オルゴールを見ていただけではないでしょう?』
『ええ、今回は領地の産業について教えていただきました。』
『へぇ。たしか、ヴィルランク領は海に面していたよね。こうやって貿易品が来るくらいだし。』
『そうですね。陸繋ぎの隣国が面している領地はいくつかありますが、陸繋ぎな分文化も近いものがありますからね。少し離れたところからと、貿易ができる分、珍しいものが多くて面白かったですよ。後は、海産物が取れる数少ない領地でもありますね。』
『やっぱりその辺りが、主産業となるのかな?他はしてないの?』
『全くしていないわけではありませんよ。茶葉や染物など、他領にも負けないように、頑張ってはいます。けれど、主産業と考えるなら、絶対数の少ない海産物や貿易品が大きくなりますね。』
『何か得られるものはあったかな?』
『んー、そうですね。得られるというより、新しい特産品の提案をしてきました。』
『提案?』
他領に先取りされたりしないように、情報はあまり公開するものではないが、だいたいの研究は終わり、根回しの段階に入っている。領地の利益が国の利益に直結する王宮でなら、根回しの一環として話してもいいだろう。
『はい。少しずつでは、ありますが、海藻を販売していけたならと思っています。』
『海藻?』
『はい。食用として取れるものを研究して、新しい食材の提案をしたいと思っています。今までと変わった味わいのスープやサラダが今のところ出来てきているので、いずれ定着させれればと思っています。味としての評価は出来たので、今後は少しずつ流通させて、栽培効率やどれだけ受け入れるかを見ていきたいとは、思っています。』
『へぇ、それは面白そうだね。。。それも君が提案したの?』
『偶然からですけどね。植物について勉強している一環で塩害などの、勉強をした時に、塩水に浸かっている海藻に着目しました。』
『なるほどね。』
関心したように頷いてくれる、ギル様に少しの罪悪感を感じた。それっぽい理由付けになるので、塩害などを理由に挙げて、海藻に着目したと言っているが、実際は異世界の記憶から、試す価値があると思っただけだ。
本来は私の受ける評価ではない気がする。
『本当にヒーランは、多方面からの視野を上手く使い分けるよね。』
『今回はたまたまですよ。けれど、お褒めいただき光栄です。』
塩キャラメルクッキーの時は、あまり気にしなかったけど、確実に自分の力ではないものを、理由に褒められるのは、嬉しくない気がする。
そこで、1つ思った。ギル様はこの感覚を毎回感じたのだろうか?
たしかに、あまり良い気はしないかもしれない。
そう思うと、ギル様との勉強では、どのように調整していくべきか、きちんと考える必要がある気がした。
塩キャラメルクッキーは、知識の合算ですが、今回の昆布ダシは完全に、記憶の流用。
多少の違いですけど、少し違うような似たようなもんなきもする。
難しいなぁ。




