第17話 使用人マリネの悩み
3話ほど酷いミスしてましたね、12.5話があることを忘れて、投稿した数で話数を入れてたので、1話飛んだみたいになっていました
すいません
私の名前はマリネ。ヴィルランク家で両親共に使用人として働かせていただいています。その中でも私は、ヒーランお嬢様専属の使用人として働いています。
小さい頃から両親の背中を見ながら、将来の私の仕事と言われていたので、使用人という仕事に対しての思い入れは特にありませんでしたが、私もそうするんだろうなと、漠然と思いながら、育ってきました。
そんな中で、お嬢様が生まれてきて、使用人として付くようになると、お嬢様はひたすら可愛かったです。
あの頃は幼かったから、ほとんど妹のつもりで面倒を見ていました。使用人としての接し方をお母さんが教えてくれるので、体裁は整えていたけど、姉のように慕って頼ってくれるお嬢様が本当に可愛くて仕方がありませんでした。
うん、私もお父さんとお母さんと同様に、お嬢様なら一生支えていける。大切にしようと思いました。
結果、幼少期のお嬢様は結構甘えん坊だったり、我儘だった記憶があります。そして、言われるままに甘やかした記憶が残っています。
だって、可愛いんだもの。周りもたぶん、同じ感覚に見えたし。私だけのせいじゃないわ。
そんな感じで育てられてきたお嬢様ですが、ある時から、知識欲に駆られるようになり、難しい専門書や資料を読み耽るようになり始めました。
昔と変わらず、本や資料を集めるために、色々とお願いされ、かき集めるようになったので、私も一応目を通しますが、難しすぎて理解するのに凄く時間がかかりました。言いたい事は、理解出来ても、それでこれが何の役に立つのかは想像がつかない事がよくあります。
そうやって、赴くままに知識を蓄えたお嬢様は、王様に注目され、皇子様と対面し、その美貌もあり、すぐに婚約が決まりました。
お嬢様と皇子様はいつも仲良く勉学に励み、教師たちの言葉を良く聞いています。そして、時折教師からの問題や、気になった事について質問をしたりします。
お嬢様は皇子様を立てるように、わからないふりをしつつ、皇子様を誘導します。
誘導といっても、お嬢様の問いかけにサラッと対応し、答えられる皇子様も皇子様で優秀です。
ただ気になる点があるとしたら、気づいたらそういった難しい話しかしていないというところでしょうか。雰囲気だけを見れば、仲睦まじくお話しているのに、内容を聞くと小難しい話の連続なのです。
勉強中の質問や意見交換から始まる会話が、一番多くなるので、仕方がないのかもしれませんが。
けれど、休憩中のお茶をしている時にも、そういったことから話題を持ってくるのは少し思うところがあります。
前に、勉強中に議題に上がり、考え方や法改正がどうされるかを話しあった結果、二人の結論通りになり、当たりましたね。と、休憩中に二人で喜んでいました。結果、また、それに派生した話を楽しそうに話し始めるのは、何かおかしいのではないかと、思ってしまいました。二人はあまり気にしていなさそうですが。
それに、これは余談ですが、その時の法改正が二人の結論通りになったのは、二人の話を聞いた教師が、議題に上げ、二人の案が採用された為です。
文官達の考えと、当たったのではなく、二人の案が採用されたのです。その発想はなかったと、驚かされたと私は聞いています。
こんな会話が多いのに、仲睦まじく見える2人は、それだけ相性が良いということなのかなとは、思いますが。他の会話もして欲しくは思ってしまいます。
皇子様の稽古に出向いたり、皇子様の為にレシピを考えたりと、皇子様の為に奮闘するお嬢様も時折見ることが出来るので、少しずつ勉強以外の会話をする姿も増えていくのかなと思うのが、最近の楽しみです。
お嬢様はそうやって頑張っています。そして、知識欲に駆られるようになってから、絶対に外では、貴族らしくない振る舞いをしなくなりました。
アリルにお嬢様ごっこをしてみせて、からかうようなこと、ヴィルランク家の敷地内でしか絶対に見せなくなりました。それに見られるのも極稀です。
お嬢様は色々なことを我慢しながら、頑張っているはずです。
なので、私も極稀に見せてくれる、困ったお願いでも、答えたいとは思っていました。
そこで、私は手に持っていたものに視線を落としました。
『なにそれ?どうしたの?』
『ひゃあ!………いきなり現れないで下さい、レイリオ。』
『そんないきなりだったか?』
『…いえ、考えごとをしていました。』
首を傾げつつ、平謝りをしてきます。彼の仕事が終わるまで、考えごとに没頭していた私にも非があるのかもしれませんが、後ろから手元を覗き込んできて、いきなり声をかけられれば驚くに決まっています。
まぁ、良いですけど。
『で、どうしたの?』
『お嬢様がお休みをくれたので、どうしようかと悩んでるのよ。』
今日はとある事情で、お嬢様からお休みをもらったので、暇なのです。そして、長めのお休みになりそうなので、どうしたものかと、私の二つ年下で私の従兄弟であるレイリオの所に来ました。
レイリオはヴィルランク領内の屋敷の庭師として、色々と学んでいるそうなので、東屋で待たしてもらっていました。
『アリルって子が今日はついてるのか?紹介されてる時も、ハキハキとしてて、しっかりした子だったな。』
『ええ、そうね。使用人としての力もついてきてるし、人当たりも良いから、優秀な侍女に育ちそうよ。』
『そうか、その結果、お嬢様に頼って貰えなくなって、寂しいのか?』
レイリオがそんなことを言いながら、馬鹿にした様な顔をします。
私は呆れたため息を吐きました。
『そんなんじゃないわ。もっと困ったお願いをされたのよ。昔から可愛らしい顔で、困ったお願いをしてたじゃない。今でもきちんと頼りにしてくれているわ。』
『へー、そうなのか。昔から溺愛していたし、おじさんとおばさんみたいに、一生使用人として、お仕えしたいって言ってたから、その立場を取られて悩んでるのかと思ってた。』
『アリルの教育を私に任せたのもお嬢様だし、必要性もわかってる。そして、今日のこともわかってるのよ。だから、アリルは関係ないわ。』
『じゃあ、どうしたのさ?』
レイリオが肩を竦めました。
私は一度手元にあった、ターコイズのイヤリングに目を落とした後、レイリオに見せるようにしながら、彼に視線を戻しました。
『お嬢様がこれをくれたのよ。お洒落して、良い人見つけなさいって。』
『え?よかったじゃん。何に困ってんだ?』
私は今日あったことを、レイリオに話すことにしました。
『マリネ!今日からしばらく好きに休んでいいわよ。』
『え!?』
どういうことかと、聞いたところ、この前の領地視察で、海藻について調べたくなり、旦那様に相談したところ、許可が下りたので、海藻の手配をして、届いたので今日から、調理場を使って研究するそうだ。
助手には、アリルや料理人がいるので、人数は充分であり、アリルの成長を見る為にも、一人で付かせてみたいとのことだった。
『それに、マリネにはしなきゃいけないことがあるでしょ?』
『しなければいけないことですか?』
『ええ!』
ニコニコと愛らしい笑顔で、お嬢様はお答えくれました。
恋人いないでしょ。と。
まだ、結婚しないにしても、恋人を作ったり、将来の相手について考える時間を作りなさいとの事でした。
私としては、最悪の場合、お母さんがお見合いの相手を連れてきてくれそうなので、それでも良いかなと、思っていましたが、せっかく選べるのだから、もっときちんと考えなさいというのです。
私の場合、お嬢様の側を離れるつもりは無いので、婿をもらい、両親同様に使用人になってもらうのが最良だと考えています。
その場合、ある程度かしこまった会話が出来る人でなければなりません。
私と同じ使用人の方や、貴族を相手にするお店の、次男や三男の方から探さなくてはなりません。
まぁ、仕事の関係上、関わりがあるので、年齢的に丁度いい方は、いくつか心当たりがあります。
お嬢様としては、休みを合わせるのが、難しいだろうから、この研究期間は休みが合うタイミングで好きに休んで良いとの事だそうです。
何もなければ、アリルのフォローや意見を聞きたいので、いて欲しいが、毎日である必要はないので、伝えてくれればそれで良いとの事です。
『なるほどね。お嬢様も優しいじゃん。一生の相手だからな。相手を見て判断するのは大事なことだろ。』
『ええ、そうよね。そうなんだけど。』
『?』
無言で首を傾げるレイリオ。
『まだ、気になるってだけなんだけど、こういう機会がいただけたなら、話してみたいなと思う人はいる事にはいるのよ。』
『へぇ!それなら良かったじゃん。あ、どう誘うかを悩んでるのか?』
私は無言で首を振る。そして、視線を下げつつ口を開いた。
『ヴィルランク家が雇ってる料理人なんだけど、王都にいるのよ、彼。』
『……あ、あー、なるほど。』
私の2つ上で、少し前から新しく雇われた方なので、あまり話す機会が今までありませんでしたが、お嬢様がレシピを考える為に、調理場に足を運ぶ為、話す機会が増えた人です。
お嬢様達が自由に出来るように、よく観察しながら、必要なタイミングでのみフォローをしていました。
お嬢様がいるので他の料理人達も、無下には出来ませんが、仕込みなどもあるので、結局、お嬢様の指名で彼が良く、お手伝いをしてくれていました。
たぶん、お嬢様にも良く映ったのでしょう。
気配りのよく出来る、良い人だなって、漠然と思っていたようです。
今回、お嬢様の話を聞いて、話してみたい人を考えた時に一番に浮かんだのが彼でした。
まだまだ、知らないことも多いので、プライベートで話してみたいと思ったのでした。
『……なんか、空回っちゃったね、お嬢様。』
気まずそうに、口を開くレイリオですが、そんな失礼なこと言ってはいけません。
『丁度良く時間が取れそうなのが、今回だったのよ。一応、まだまだ時間はあるし、今回見つからなかったら、王都でも、時間を作ってくれるって言われたし。』
『なら、断っても良かったんじゃないの?』
『せっかく、お嬢様が私の為に考えてくれたことですし、彼のことも、まだ、気になるというだけなので、伝えづらくて。』
それに、せっかくお嬢様がくれたイヤリング。初めての異性からの感想は彼からもらってみたいなとか少し思う。普段の使用人の格好では絶対に付けない物なので、彼なら気づいて、何か言ってくれそうですし。
『王都で先に時間をくれてて、まだ気になるから、こっちではとりあえず大丈夫とかだったら、断りやすかったんだけどね。』
『……………』
『タイミングがねー。』
『どうしたらいいのかしら?今回。』
『数日休んで、あまり気になる人がいなかったので、王都でまた、時間を下さいとかでいいんじゃない。』
『そうよね。そうするしかないわよね。』
私はあまり納得はいかないが、他にどうしようもないので、溜め息を零してしまいました。
その数日でも、ズル休み見たいで少し嫌じゃないですか。私としてはお嬢様を支えたいのに。
そんな私を見た、レイリオが安心させるように言いました。
『ズル休みとか思ってるの?だとしたら、大丈夫だよ。お嬢様の名誉の為にも、必要なことだ。』
……その考え、いただきます。
別視点から、伝えたいことって、色々あるけど、その部分に触れるのって難しいですね




