突然の訪問者
朝目覚める。
自分の部屋。
自分のベッド。
「あれ…?」
確か、降神神社の社務所で寝かせてもらって…。
まさか…。
「夢だったの…?
そ、そぉ〜だよね!あんな事普通無いよね!
いやぁ、巫女とか炎とかホント、リアルな夢だったわぁ〜」
左手首のリングに目が止まった。
「え…」
人差し指を立ててみる。
ポッ!っとゆう可愛げな音を出しながら、ライター程度の火が指から出ている。
いや、出す事ができる。
「夢じゃ…ないのか」
「何が夢だと思ったんですか?」
「うわぁ!!」
部屋の中に佇む、綺麗な巫女装束の女性…式神のウンリュウさんは、相変わらずの微笑みフェイスをこちらに向けていた。
「ど、どうしてここに…?!」
〜〜〜
おばあちゃんの部屋…だった部屋。
その奥にある襖をウンリュウさんは開いた。
「ど、どうなってんのコレ…?」
襖の奥には布団…ではなく、昨日私が寝かせてもらった社務所の一室に繋がっていた。
「もともと繋がっておりましたよ」
「え?!」
「左を空けると襖として機能し、右を空けると社務所に繋がるのでございます」
「いつから…」
「アマギ様が施したものです」
いよいよおばあちゃんが普通じゃない事を実感しています。
今更だけどさ…。
ピンポーンと、不意に家のチャイムが鳴った。
「あ、誰か来た」
急いで玄関を出ると、クラスメイトの黒鮮ナオトだった。
「やぁ!カミモリ!」
正直言ってこの男はニガテだ。
葬式には来ていなかったけど…なんで今?
「なにか?」
扉は全開せず、歓迎ムードなど一切無い事を示す。
「いやぁね?カミモリん家のばあさんが亡くなったって聞いたからさ?
線香あげに来てやったんだよ」
ほら出た。
何故か上から目線な態度。
ホントにムカつく。
「だからさぁ…入れてくれない?」
「こっちもまだいろいろ作業残ってて忙しいの。
今日は帰ってちょうだい」
扉を閉めようとした瞬間。
ガッ!
「え?」
ナオトが扉の間に足を挟んで、阻止してきた。
「何のつもり!?」
「そっちこそ、線香あげに来ただけなのに帰れって?しかも脚まで挟んでさぁ?
何のつもり?」
力任せに無理矢理玄関を開けられ、尻もちをついてしまう。
何かがオカシイ。
なんでコイツは今になって来たの?
そもそも私はコイツが嫌いで避けてる。
どこに住んでるかも知らないから手紙も出してない。
まぁ近所の人からそれは聞いたとして…。
それ以前に、
なんなのコイツのこの雰囲気。
殺気…ってやつ?
「なぁ?カミモリ。
おまえ、俺の事を相当毛嫌いしてるよなぁ〜?」
ウンリュウさんとは全く違う物が根底にある笑顔。
尻もちをついたまま、無意識に後ずさってしまう。
「なぁんで逃げるのかなぁ?」
「来るならそろそろと思っていましたが、些か早過ぎではありませんか?」
玄関から伸びる廊下。
その中心にウンリュウさんが立っていた。
「ちっ…ばあさんの式神がなんでこんなトコに居るんだよ」
ナオトが…式神を知ってる…!?
すぐさま体勢を立て直し、ナオトに左手を向けた。
「あんた…何者なの…!」
「はぁ〜あ。
めんどくさいなぁ〜」
荒々しくナオトは頭を掻きむしった。
「別に今は何もしないよ。
ただ、俺ら組織の邪魔をするなら、相応の対処をするよっていう忠告に来ただけ」
数秒の沈黙。
「ま、忠告はしたからね。
あとカミモリ。
「神機」はお前が思ってる以上に危険な代物って事は覚えとけよ」
そう言い残し、ナオトはその場から立ち去った。
やっぱり…「神機」を知ってた…。
〜〜〜
「ウンリュウさん。組織ってなんなの?
おばあちゃんの手紙にも書いてたけど…」
おばあちゃんの部屋の襖の向こう…降神神社の社務所で、私はウンリュウさんに質問した。
「はい。
正式名称は、調べた限り
神機管理統括委員会「神殺」
と言って、
世界中に存在する「神機」を収集している組織です」
「「神機」を収集って…集めると何かあるの?」
「集めたからといって、何かが起こる事はありません。
ですが、単純にそれだけの「神機」を利用すれば、国を滅ぼすどころか、世界を滅ぼす事も容易いというのは確実でございます」
「え…世界征服しようとか言ってんの?このご時世に?
今時マンガでも無いよ」
「さすがに世界征服は無いと思われますし、実際そんな動きは確認出来ていません。
ただ、「神機」の顕現頻度が高いこの島に、組織の拠点が有るのは確実でございます」
「てかさ、そもそも「神機」って…どんだけ有るの?」
「未知数でございます」
微笑み顏が即答する。
「未知数…わかってないの?」
「はい。
そもそも「神機」は、世界に漂う不可視のエネルギーが結晶化した物と言われています。
その中でも強力な7つの「神機」が封印されているこの島は、特に「神機」が生まれやすい環境なのでございます」
「生まれやすいって、ポンッて現れるってこと?」
「はい。ポンッて現れます」
変わらない微笑みに対して、どう反応すべきか困る。
「現状、存在が確認されている「神機」は、封印されているもの、壊れて消えたもの、全てを合わせても53個です。
まだ確認出来ていない物があると想定しても、世界で存在している「神機」は、100にも満たないかと思われます。
その内30程は組織の手の内にあり…
まぁ、30も「神機」が揃えば、既にそれなりの国は滅せるレベルかと思いますが」
相変わらず微笑みながら怖いこと言うわ…。
しばらく考えたあと、もう1つの質問をウンリュウさんに聞いた。
「それじゃさっきの…黒鮮ナオトはその組織の一員って事?」
「確証はありませんでしたが、カマをかけてみたら、あっさり引っかかって下さいましたね」
いつもの微笑み。
それが怖い。
「ウンリュウさんだけは、なんか敵にしたく無いです…」
「そうでごさいますか」




