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私にとってのプロローグ

おばあちゃんが亡くなった。


両親は私が小さい頃に事故で他界しており、父の故郷でもあるこの「降神島」でおばあちゃんに育てられた。


おばあちゃん自身も、お医者さんも言ってたから、死期が近いのはわかっていた。


おばあちゃんは頑なに入院せず、最後の最後まで家で過ごした。


~~~


「アマネ、わたしが死んだら山にある神社に行きなさい。」


もう喋るのもつらいはずなのに、おばあちゃんは穏やかな顔で私に話しかけてきた。


「神社?」


「そうだよ。この島の一番強い神社だ。

わたしが死んでしまうと、アマネにとてもつらい思いをさせてしまうし、とても大変な苦労をかけてしまうからね。

その神社に行けば、きっと力になってくれるよ」


「神主さんか誰かいるの?」


「いいや、あの神社の神様に力を授かりなさい」


おばあちゃんは「守巫女(まもりみこ)」とみんなから言われている。

なにを守っているのかは分からないけど、そうやってみんなから慕われていた。

巫女さんらしいところは一回も見たことが無かったけど、神聖な雰囲気はあったし、毎朝仏壇に向かうのとは別で、神棚にお祈りをしていた。


神様に助力を求めなさいと言うのも、そんな「巫女」としての性から来た言葉だろう。


「わかったよ、おばあちゃん。なにかあったらちゃんと行くから、今はゆっくり休んでて」


「そうだね…わたしも少し休むべきなのかも知れないねぇ…」


私はおばあちゃんに布団を掛けなおし微笑んだ。

おばあちゃんもそれに答えるように微笑み、暫くして寝息を立て始めた。


~~~


それからおばあちゃんが目を覚ますことは無かった。


おばあちゃんは葬儀などについて、何もかも準備していた。

まるでその日に亡くなることが分かっていたみたいに。


私はなにもする事が無く、

ただただおばあちゃんの葬儀が滞りなく進んでいくのを眺めるだけ。

ご近所の方や、同級生にもいろいろ声を掛けてもらった。

みんな私を心配してくれていたし、人によっては、おばあちゃんに頼まれてこれからの生活の支援をしてくれると申し出てくれる人もいた。

故に、私はどれだけおばあちゃんに愛され、どれだけ素晴らしい人に囲まれているかを痛感し、

お葬式が終わったときには、止め処なく溢れる涙をとめることができなかった。


~~~~~


「それじゃあアマネちゃん。私たちもそろそろ帰るわね。

心配しないで、なにかあったらみんなの事頼っていいんだからね」


「うん、ありがとうミナセさん」


道向かいの家に住んでいるミナセさんを最後に、私は家に一人となった。


つい数日前までおばあちゃんが寝ていた部屋に、何気なく足を運び、

何もない畳間の真ん中で座り込んでしまう。


沈黙のみが私を包み込む。

まあ夜の9時にもなれば、離島の夜は静かなものだ。


特に何かするわけでもなく、1時間ほど窓から夜空を見ながら呆けていた。


瞬間、ふとおばあちゃんの言葉を思い出し、窓から身を乗り出して、この島唯一の山を見る。


「神社…」


思ってからの私の動きは、まるで私じゃないかのように迅速で、我に帰る頃にはすでに山道の入り口まで来ていた。


「ここから…行けるよね…?」


考えてみれば、どこにあるかも聞いていない。

明日になって近所の人に聞けばいい話なんだろうが、一刻も早くその「神社」に行かなきゃならないような、不思議な使命感に駆られていた。


数秒の思考の後、なるようになると思った私は、意を決して山道を歩き始めた。



~~~~~


どれくらい歩いただろうか?

富士山とか阿蘇山とかそんな規模の山ではないはずだが、もう既に何時間も歩いているような気分になってきた。


「ちょ、ちょっと休憩…」


思えば、登山である。

にも関わらず、あまりにも脆弱な装備である。


着慣れた短パンにTシャツ。

財布、携帯、懐中電灯。

道中で杖代わり兼用心のための棒切れ1本。


「やっぱり明日にしたほうがよかったかな…?」


道端の手ごろな岩に腰掛け、額の汗をぬぐった。


見上げると、やはり離島の、しかも街頭もない山道なだけはある、綺麗な、それこそ満点の星空が頭上いっぱいに広がっていた。


「ふあぁ・・・」


星空の圧倒的な美しさを目の当たりにし、自然と間抜けな声が出てしまった。

不思議と疲れも癒えた様な気がして顔を下ろした。


「・・・ん?灯り?」


顔を下ろした先。

山道からは離れた森の木々の奥に、ぼうっと灯りがついているのが分かった。


「ひ、人魂…!?」


暫くその灯りを見つめたが、灯りは特に動かず静止したまま。

故に何かしらの建物から発しているものだろうと、脳内会議で結論が出た。


「あれが…神社かな…?」


思うが早いか、私は草を掻き分けながら、山道をはずれ、その灯りに向かって直進していた。


~~~


石灯籠が淡い光を漏らして立っている。

山道から見えた灯りはこの石灯籠であり、それは大きな鳥居の前に対となって立っていた。


鳥居からまっすぐ延びる石畳の到達点には、創造よりはこじんまりとした神社が建っていた。


降神(おりがみ)…神社…」


鳥居に書かれた文字を読み、そこが「降神神社」という場所なのだと理解する。


「お待ちしておりました!!」


時間帯に似つかわしくない、明るく元気な少女の声が響きびくっとした。

瞬間、鳥居のしたの空間がぐにゃっと揺れた。

歪むといったほうが良いのか、とにかくぐにゃ~~~っとなったのだ。


すぐに歪みは元に戻ったが、いつの間にか、そこには一人の巫女装束の少女が、ちょこんと立っていた。


「あちしは「巫女の使い」のチノと申します!お待ちしておりました、神護(かみもり)アマネ様!」




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