めんどくさいのは
放課後、私の家に来たミウミは、心から悲しそうな顔でおばあちゃんの仏壇の前に座っていた。
「最も偉大な「守巫女」アマギ様。
死に目に会えず申し訳ありませんでした。
アタシがしっかりとアマネの事をサポート致しますので、どうか、見守って下さい」
そう呟いて、深々と頭を下げた。
というかほぼ土下座だった。
10〜20秒はそのままで、さすがの私もどうすれば良いか分からなくなった頃、ようやくミウミは頭を上げた。
「さて、行きますか」
「ふぇ?」
仏壇はおばあちゃんの部屋に置いてあり、
ミウミは何の躊躇いもなく押入れを開けて、降神神社の社務所へ向かった。
「私より…慣れてるねぇ」
〜〜〜
「つまりミウミは「降巫女」ってゆう者で、好きなタイミングで「神機」を作れる…と?」
「んまぁ基本月一回だけどね。
それにあまりに強すぎる「神機」を顕現させると、半年も造れなかったりするらしいし」
ミウミと話す私の元に、ウンリュウさんがお茶を運んできた。
思ったら、この社務所。
ずっと同じ和室でしか過ごしてないけど、キッチンとかちゃんとしたのがあるんだろうか?
ご飯とか割とちゃんとしたの出てくるし…。
あとで聞いてみよ。
「巫女の中でも「降巫女」は、能力もさることながら、誕生も不安定な者達で、
数世代に渡って同じ家系に生まれたり、全く関係のない所で、突然変異的に生まれたり、
はたまた、一切「降巫女」が居ない時代もあったりと、不確定要素の塊と言える存在なのでございます」
「そんな大変なのがミウミだなんて、すっごい偶然…」
「本当に偶然だと思われてるなら、本当に残念な頭をお持ちですね、アマネ様は」
まぁたこの巫女装束は、綺麗な笑顔で毒吐いたよ…。
「アタシは小学生の頃にこの力が使える事を知ったの。
その時、アマギ様の式神に「組織」より先に見つけて貰えてね。
中学入るまで式神さんに匿って貰ってたんだけど、それで安全の為にこの島に来たんだけど…まぁそこまで安全じゃなかったってゆうオチよ」
「え?それじゃおばあちゃんがミウミをこの島に呼んでたんだ?」
「そゆこと。
アマギ様が亡くなったって事は、この島から「守巫女」が居なくなるって事だから、アマネはいろいろ聞いてると思ってたんだけどさぁ?
まさか最後の最後まで何も聞いてなかったとは」
苦笑いするミウミに、私も苦笑いで返してしまう。
するとウンリュウさんが言った。
「何も語らなかったのは、アマギ様なりの最善の防衛方法だったのです。
アマネ様に何も語らない事で、アマネ様を組織から遠ざけて、無関係であるように見せていました。
調査の結果、組織は「守巫女」「闘巫女」を知ってはいても、関連性まで気付いていないようでしたから。
狙っているのは、島に封印されている「神機」。
邪魔なのはその担い手の「守巫女」。
その程度にしか見ていないのでございます」
「付け加えるなら「降巫女」は便利。「闘巫女」は出てきたら邪魔。
それくらいな感じかな?
とりあえずアイツらは「神機」にしか目がないって感じでさ?
それにアタシ以外にあと2人「降巫女」がいるみたいで、その2人とも「組織」の手中だから、アタシにも特に興味は無かったみたい」
興味が無いものには関連しない…。
その割に昨日から襲撃が続いてる…。
私に興味がある…?
いや、そんなわけないか。
昨日のアサギって人、死体で発見されたって言ってたし、その報復に来てるだけかな…。
なぁんか、この理不尽な感じ…誰かを思い出す…。
「ナオト…?」
思った言葉がつい口を出てしまい、ミウミがそれに反応する。
「ナオトって、あの「黒王子」のナオト?」
「黒王子」とは、ナオトに対する通称で、
その態度と性格から、いつしか、誰からともなく呼ばれる様になったあだ名の様な物だ。
「あの王子がどうしたのよ?」
「え?いや、なんかね…」
私は、ナオトが家に来た事を話し始めた。
〜〜〜〜〜
「コクシ、話がある」
「んん〜?施設防衛部隊の責任者様が、俺に何か用事ですかぁ〜?」
組織の拠点施設の暗い廊下。
ペスト医師の様な仮面をつけた少年が、若干小馬鹿にする様に振り向いた。
そこには銀のラインが走る真っ黒の仮面を着けた男=レイヴンが立っていた。
「昨日、そして今日、件の「闘巫女」の調査・排除に向かった者が立て続けに死体で発見されている事について、
何か言う事はあるか?」
「特にないけど?」
「そうか…俺は割とおまえが嫌いでな、それで疑っているのかも知れないが、
おまえが殺してるんじゃないのか?」
2人の間に沈黙が漂う。
先に口を開いたのはコクシだった。
「証拠でもあるの?」
「いや、物的証拠はない。
だが、戦闘場所と死体発見現場が離れすぎだと思ってな」
「それだけ?」
「それと、ヤマブキの作り上げた「神機固有波数感知器に引っかからないのは、すぐ思いつく限り、優待されてるおまえくらいだからな」
「なるほどね、状況証拠はありますよ〜的な?」
「まぁ…どうだろうな」
そう言うと、レイヴンの左腰に一振の日本刀のが顕現した。
「一応、気に入らないから斬ってみようかと思う」
言うが早いか、即座に抜刀したレイヴンは、一気にコクシへ駆け寄り迷い無くその刃を振りかぶった。
「スズ」
コクシが呟くと同時に、どこから現れたのか、鈍色に光るペスト医師の仮面を着けた女性が現れ、レイヴンの刃を受け止めた。
スズは素手でその刃を止めているが、血は一切出ていない。
「ちっ…おまえが居ないからコクシを殺れると思ったんだけどなぁ?
それにおまえ…ホントに人間か?
「神機」を素手で止めるとかさぁ?」
その様子を見て、コクシが笑い声を上げた。
「あっははは!
口調がプライベートな感じになってるよぉ?あははは!!」
やれやれと言うように、レイヴンは刀を収めた。
「殺りますか?」
スズはコクシに聞いた。
だが、コクシは笑いながらも首を横に振った。
「いや、今殺ったら後々大変そうだしさ?
それに大事な施設防衛の責任者様ですからねぇ〜?」
その言葉を聞いてレイヴンはため息をつき、頭を掻きむしった。
「はぁ〜あ。
めんどくさいなぁ〜」
レイヴンは踵を返しその場を立ち去った。
その後ろ姿を眺めながら、コクシは心底嫌そうに呟いた。
「めんどくさいのはアンタなんだよ、「黒王子」様よぉ…」




