第5話 ユニークスキル
「ちょっと待て、前見た時よりだいぶステータスが上がってないか!?」
アキラは驚いた表情で叫ぶ。
名無し:【まさか生身の時のステータスの事言ってんのかこいつ】
ベテラン:【落ち着け。今D-ナビで表示されてるLv.1のステータスは、元々持ってる魔力で一時的に肉体を強化してる状態だ。生身の肉体が強くなったわけじゃない】
「なるほど。まあ、このステータスじゃ下手すりゃアスリート並だもんな……」
アキラは納得したように頷くと、アプリの操作を続けた。
「えっと……あった、これか!」
お目当てのものを見つけて早速操作を始める。
「ん? このHPって何だ? 20ある見たいだけど……」
アキラが不思議そうにつぶやく。
ベテラン:【HPはバリアだな、生身の肉体への攻撃を代わりに受けてくれる。HPが20ならだいたい、金属バットでのフルスイングをギリギリ防げるくらいか】
「マジかよ。俺、一撃で首をはねられたんだが」
名無し:【それだけ力の差があるってことだな】
名無し:【HP全損ってマジか……】
「ならHPなんて、あってもしょうがないな」
アキラは迷うことなく筋力にポイントを集中させた。
「おおっ!!」
それなりに重量を感じていたメイスが、まるで木の枝のように軽く感じる。
「……これなら、いける!」
アキラは唇の端を吊り上げ、リザードマンがいる洞窟の奥へと歩みを進めた。
死に戻り八回目。
「死んだわ……」
名無し:【ハイ。】
名無し:【うん……】
名無し:【敗因は?】
「普段通りの動きが出来なかったな、やっぱり敏捷も必要だわ」
名無し:【でしょうね……】
名無し:【知ってた】
改めてステータスを振りなおす。
「よしっ! これで完ぺきだ! いくぞっ!」
意気揚々とリザードマンのところへ向かっていくアキラ。
名無し:【今回もダメな気がするわ……】
死に戻り九回目
名無し:【今回良さげだったじゃん!】
名無し:【何でダメだったんだよ!】
「飛んできた小石が目に当たってな、怯んだ隙に殺られた……」
名無し:【おお……もう……】
名無し:【だからHPは0にするなとあれほど】
「やっぱHPにも少しは振らないとダメだな」
ステータスの数値を変更してあらためてステータスを確認する。
Lv.1
HP:3
MP:0
筋力:30
耐久力:8
敏捷性:20
持久力:12
スキル:直感
これでもおよそ、成人男性の3倍ほどのパワーがあることになる。
反射神経などに関してもおよそ2倍だ。
「うんうん。これで完ぺきだな!」
アキラは完成したステータスを、見て満足げに頷いた。
名無し:【すげーな、レベル1の数値じゃねえよ】
名無し:【防御は紙だけどな】
「良いんだよ。どうせ当たれば一撃で死ぬんだから」
アキラがコメントに反論する。
「さて、そろそろ行くか……」
アキラがメイスを握りしめて、立ち上がった
名無し:【期待】
名無し:【わくわく】
すでに勝手知ったる洞窟を、迷いもなく進む。
アキラがリザードマンの元へたどり着くと、リザードマンもゆっくりと振り返り、アキラを睨見つけた。
「さあ、今度こそ勝たせて貰うぞ!」
アキラがメイスを構えるようにして笑う。
それが合図になったかのように、お互いが一気に距離を詰めあった。
「よっ!」
リザードマンの斬撃を軽く体を反らすことで避ける。
軽快に避けながら攻撃を当てていくアキラ。
何回も当てていくとリザードマンも弱ってくる。
名無し:【後少しだ!】
名無し:【頑張れー!】
「危なっ!」
刃が頬をかすめる。紙一重で身をひねったアキラの横を、リザードマンの大剣が空を裂いた。
「お返しだッ……喰らえ!」
叫びと同時にメイスを振り下ろす――
が、リザードマンは信じられない動きを見せた。握っていた剣をそのまま投げつけてきたのだ。
「うわっ!? な、投げるのかよ!」
避けるには避けたが、体勢を崩す。足がもつれるその隙に、拳が飛んでくる。
「ぐっ……!」
咄嗟にメイスの柄で受け止めた。衝撃が腕に響く。しかしアキラは気付かない。メイスの柄には、薄いヒビが入っていた。
「おりゃああああっ!」
声を張り上げて殴り返すと、リザードマンの動きが一瞬だけ止まる。
(……いける!)
渾身の一撃を叩き込んだ――
……瞬間、パキン、と乾いた音がした。
「は?」
メイスの柄が、真ん中から折れた。
「マジかよ……」
武器は死に戻りの影響を受けない。つまり、これはもう戻らない。
(……仕方ないか。ここでケチっても死ぬだけだ)
アキラは損切りを決め、ポケットからSR武器結晶をつまみ出した。
「これで……終わらせる!」
結晶をリザードマンめがけて放り投げる。
空中で赤くきらめいたそれを、アキラは折れたメイスの“柄の部分”で思いきり叩きつけた。
ガキィッ!
リザードマンの硬い鱗とメイスの柄に挟まれ、結晶が砕け散る。
途端――爆ぜるような光がほとばしった。
次の瞬間、二メートルの大剣、ソウルイーターが姿を現す。
「……!?」
リザードマンが目を剥いた。その胸へ――アキラは反射で大剣を振り抜いていた。
刃が肩から胸へと深く走り、リザードマンは声にならない悲鳴をあげて崩れ落ちる。
ドローン越しに、視聴者のコメントが弾けた。
名無し:【おおおお!!!】
名無し:【勝った!?】
名無し:【すげぇー!】
「……っぐ!」
勝利の安堵は、一瞬でかき消えた。雷鳴のような轟音が頭に刺さり、視界の端に光が走る。
(な、なんだ……!?)
光の線が、アキラのポケットのスマホと、頭上のドローンのカメラを“繋いで”いた。
触れられる――そんな感覚が確かにあった。
手を伸ばす。光の線が指先に触れた瞬間、アキラはスマホの内部へダイレクトにアクセスしていた。
「これ……すご……!」
ステータス画面に表示される、新たな文字列。
『ユニークスキル:ハッキング』
「……あれ?」
リザードマンを倒したのに、レベルは1のまま。嫌な予感が背筋を走る。
(まさか……)
倒れたはずのリザードマンに目を向けた、その瞬間――。
ドォン!!
衝撃と爆風が足元を吹き飛ばした。
「ぐあっ!?」
リザードマンが跳ね起き、怪物じみた速度で迫ってくる。
拳が迫る。避けられない。
(……頼む!)
アキラはハッキングでステータス画面を開き、耐久に全振りする。
次の瞬間、アキラは壁に叩きつけられた。
「うわああああっ!!」
しかし――。
「……痛くない?」
驚くのはアキラだけではない。リザードマンが、自分の拳を押さえてうめいていた。
「耐久全振りって……すげぇな……!」
再び殴りかかるリザードマン。だが、拳が壁にめり込むだけだった。
「!?!?」
アキラはもう、そこにいない。
「すっご……! こんなに速く動けるのかよ!」
今度は敏捷に全振り。洞窟内を風のように駆ける。
(でも……これじゃ攻撃力が足りない!)
焦る視界に映ったのは、洞窟の天井。
(そうだ!)
アキラは洞窟の天井へ跳び、蹴りつけ、自身を落下させる。
空中でステータスを再操作――敏捷→耐久へ全振り。
「うおおおおおおお!!」
落下と同時に叩きつけた拳が、リザードマンの頭を――粉砕した。
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メモ
戦闘中のコメントはアキラには見えていません。
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