第6話 規格外の同接と銃刀法違反
リザードマンの頭部が砕け、骨と鱗の破片が飛び散る。
巨体はひくりと痙攣したあと、ぐらりと揺れ、膝から崩れ落ちた。
「……っ……!」
倒れるリザードマンの体を、まるで警戒するようにじっと見つめるアキラ。
だが――
リザードマンの体はふっと光に包まれ、輪郭が崩れて、そのまま粒子となって空間に溶けていった。
「……消えた……? 今度こそ……!」
アキラは、張りつめていた息をようやく吐き出した。
「勝ったぁぁぁああああ!!!」
叫んだ瞬間――アキラの脳内に、光のウィンドウがはじけるように浮かんだ。
ピロンッ!
【レベルアップ:Lv.1 → Lv.8】
「……は? え、八っ!? 一気に……?」
驚くアキラの声を、ドローン越しのコメントが飲み込む。
名無し:【いや盛りすぎwww】
名無し:【初勝利でLv8とか見たことない】
名無し:【バグ報告しとく?】
「いや、俺に言われても……」
アキラは苦笑しつつも、胸の奥が熱くなるのを感じた。
“初めて”勝てた。
“やっと”勝てた。
そう実感した瞬間、またコメントの波が押し寄せる。
名無し:【おい忘れてるぞ】
名無し:【武器!武器結晶から出たアレ!】
名無し:【ソウルイーター拾え!】
「あ、そういえば……あったな!」
アキラは慌てて足元を見る。
そこには、戦闘中に呼び出した 二メートルの大剣『ソウルイーター』 が、鈍い黒光を放ちながら転がっていた。
「……デケェ……。これ、最初から使ってれば良かったんじゃ……俺、なんで素手で殴ったんだ?」
名無し:【ほんとそれw】
名無し:【脳筋プレイ助かる】
名無し:【勢い任せの落下パンチ草】
「うるせぇ! あれは……まあ、勢いで……」
照れ隠しにアキラがぼそぼそ返すと、突然手にしていたソウルイーターが粒子になって溶けて消えた。
「あ、えっ……消えた……!?」
余りの驚きに、自身の両手を交互に見るが、消えてしまった大剣はどこにも見当たらない。
「どどど、どうしたら!? なんで……!?」
あたふたと混乱し、辺りを見回すアキラ。
ベテラン:【落ち着け】
そんな時、赤い文字のコメントが目に入る。
ベテラン:【ダンジョン産の武器は解放すると魂と結合する。実体化するよう念じたら、出てくるはずだ】
「わ、分かった……」
何度も頷き、目をつぶって集中し始めた。
(……ソウルイーター)
コメントで聞いたとおりにアキラは心で念じる。
「来いッッッ!!!」
目を見開いた瞬間。光が凝縮し、巨大な大剣が空中で形を成した。
「……これが、俺の……!」
現れた大剣を掴み、目を輝かせて見るアキラ。
ベテラン:【そうだ。それがお前の専用武器だ】
そんな時だった。コメントの中にアキラのようすに“違和感”を感じるものが現れる。
名無し:【あれ? コメント見えてんのか? 何で??】
名無し:【こいつ、スマホ触ってなくね?】
名無し:【ポケットに入れたままじゃ……】
名無し:【なんでコメント読めるんだ?】
アキラは「あ」と声を漏らした。
自分でも知らず知らずのうちににユニークスキルを使っていたようだ。
「……ああ、それは――」
アキラはポケットを叩きながら言った。
「ユニークスキルを覚えたんだよ。『ハッキング』ってやつ。それで今、スマホを――」
その時。
「……ん? な、なんだこれ……」
視界の端に、ずっと見落としていた数字が飛び込んでくる。
【視聴者数:6000人】
「…………えっ?」
次の瞬間、アキラは素で叫んでいた。
「はぁぁぁああ!?!? 6000人!? 俺のライブ配信を見てるやつがこんなにいるなんて嘘だろ!??」
名無し:【は!? ユニークスキル?】
名無し:【同接6千はすげえな……!】
名無し:【いや、それどころじゃなくね?】
名無し:【初日で6000はマジで快挙】
名無し:【待て! そのユニークスキルについて説明はよ!】
名無し:【ダンジョン界の超新星 爆☆誕】
名無し:【そんなことよりもユニークスキルって何だよ! 説明しろ!】
「え? いや、説明って言ったって、あのリザードマンを倒したらいつの間にか 使えるようになってただけだが……」
ユニークスキルへの予想外の喰いつきに、困惑しながら説明する。
ベテラン:【いいか? ユニークを含め、ダンジョンスキルは外での発動は“銃刀法違反”になる。今すぐ発動を止めて制御するんだ】
「じゅ、銃刀法違反!?」
アキラは慌てて、ユニークスキルを制御しようとした。
だが、『ハッキング』によって流れ込んでくる、脳内のコメントの群れは一向に消えてくれない。
「だ、ダメだ! 解除できない! どうしよう!?」
困った表情でドローンのカメラを見る。
ベテラン:【ユニークスキルはもうお前の体の一部だ。ゆっくりと深呼吸をして、目を閉じるのと同じようなイメージでやるんだ】
アキラは言われた通りに深呼吸し、目をつぶってゆっくりとスキルの解除を試みた。
(同じようなイメージ……目を閉じる、目を閉じる……)
名無し:【おい! ちゃんと説――
脳内に映っていたコメントが突然見えなくなる。
「お、解除出来た……」
拍子抜けしたようすで目を開けるアキラ。
「おっとスキルを使わないと直接見なきゃいけないのか!」
慌てて、スマホを取り出してコメントを確認する。
ベテラン:【解除出来たようだな。よくやったぞ】
コメントの彼の言葉にホッと息をつくアキラ。
「しっかし、なんだな。外では使えないとしても、ダンジョンの中でなら使い放題なんだろ?」
アキラが自身を映しているドローンカメラに目を向けた。
名無し:【ん?】
名無し:【なにする気だ?】
名無し:【こっち見んな】
「よっ!」
そしてまるでアニメのヒーローのようにドローンに手を向けると――
「おおっ! 動いた!」
自動で操作されているはずのドローンが、アキラの手の動きに追従する。
名無し:【マジか……!】
名無し:【スゲー】
「ははっ! すごいな……! これなら、Dライバーとしても十分やっていけるんじゃ無いか!?」
洞窟の奥で、アキラの目がDライバーのそれへ変わっていった。
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メモ
Lv.8
HP:41
MP:7
筋力:29
耐久力:30
敏捷性:30
持久力:28
スキル:直感
ユニークスキル:ハッキング
ダンジョン産の武器は所有者の魂と結びついており、たとえ損傷しても、死に戻りの際には肉体と同じように元の状態へ戻る。
ただし、その代わりに他者へ譲渡することも売却することもできない。
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